「プーチンのために死ぬのはご免だ」:ロシア軍の兵力増強で招集を受ける国民の声
ロシアが2022年2月にウクライナに全面侵攻を開始して以来、ウクライナでは激しい戦闘が続いている。当初の目論見が外れて戦争が長期化するに伴い、プーチン政権は2022年9月に予備役の動員を発表、2024年9月にも18万人規模の兵力増強を発表している。
2022年9月21日、ウラジーミル・プーチン大統領は半年を超えたウクライナ侵攻をめぐり兵力増強を目的とした「部分的動員」を発表した。これに対し国内各地で抗議が起こり、ロシアの人権団体「OVD-Info」によればわずか1日で1,300人以上が逮捕された。
CNNは人権団体「OVD-Info」の報道を取り上げ、ロシアやサンクトペテルブルクといった主要都市を始め、38を超える都市で抗議活動が行われたことを伝えてた。
OVD-Infoによれば、モスクワでは 500人以上が逮捕され、サンクトペテルブルクでも同じような数の人々が連行されたという。
「ニューヨーク・タイムズ」紙によれば、モスクワの目抜き通りの一つであるアルバート通りで抗議デモが行われ、参加した市民が拘束された。
一方、CNNによれば、サンクトペテルブルクの聖イサアク大聖堂前で「動員禁止」を唱える抗議デモが行われ、ロシア政府はこれを制止したとされる。
抗議デモに介入した警察官に対し、「お前のために死ぬのも、プーチンのために死ぬのもご免だ」と叫んだノボシビルスク出身の男性は、その場で連行されたと「ニューヨーク・タイムズ」紙が伝えている。
英「ガーディアン」紙は、ロシアでは無許可の集会は違法行為とされ、それを格好の口実として地方自治体が市民デモを解散させていると指摘。
さらに、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2022年2月以来、戦争に抗議した約16,500人の市民が当局に拘束されたというOVD-Infoの情報を「ニューヨーク・タイムズ」紙が伝えている。
写真: 2022年3月、ロシアのクレムリン前で拘束される抗議者。
ロシアでは3月以降、戦争に関する「虚偽報道」や「ロシア軍の信用を傷つける」情報を流布することも犯罪行為とみなされている。
さらに「ニューヨーク・タイムズ」紙によれば、ロシア検察当局は抗議者に対し、最大15年の懲役を科すことができるというのだ。
それだけでない。OVD-Info の広報担当者はCNNに対し、抗議者の一部はモスクワの少なくとも4つの警察署に連行され、直接ロシア軍に送られていると明かした。
ロシア政府による「部分的動員」の目的は、士気の下がっているロシア軍に約30万人の予備兵を送り込み戦力増強を図ることにある、とBBCは伝えている。
同時に、ロシア占領下にある地域ではロシア編入について賛否を問う国民投票が行われ、90%を超える賛成多数で編入が決まった。国際社会の多くは、こうした国民投票の合法性に疑問を投げかけている。
CNNの報道によれば、こうした法令は予備役だけに適用されるわけではなくすべての「ロシア連邦国民」が対象であり、動員を通じて一般市民をロシア軍の兵役に駆り出すものだという。
ロシア政府は迅速に反応し、内務省が「少数の人々による抗議行動はすでに中止された」という声明を出したことを、英『ガーディアン』紙が報じている。
しかし各国の報道機関は、プーチン大統領による部分的な動員の発表を受けて多くのロシア国民が国外に脱出する様子を伝えている。
プーチン大統領は2023年12月にも兵力を段階的に増やす大統領令に署名し、17万人を増員。今年9月には、ロシア軍の総兵力を18万人増員し、総兵力を150万人にすると発表した。人々の願う戦争の終結はいまだ見えてこない。
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