座りっぱなしのオフィスワーカーにおすすめ:一日30分足らずのエクササイズで健康を維持しよう
毎日デスクワークで座りっぱなしという生活があまり健康に良くないことは一般的に知られている。とはいえ、仕事のためにはそうした姿勢をとらざるをえないという事情もあるだろう。では、長時間座って過ごすことの健康への悪影響を少しでも抑えるには、どんな運動がおすすめだろうか。
現代人は古代人にくらべると体を動かさなくなったが、走り回るだけが健康維持の方法ではない。じつは、毎日わずか20分から25分間の運動をするだけで、健康に大きな効果をもたらすことが明らかになったのだ。
この事実を指摘した論文は、イギリスの医学雑誌『ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディシン(British Journal of Sports Medicine)』に掲載された。毎日30分弱の運動をすれば、座りがちの生活によって高まる健康リスクを相殺することができるのだ。
「毎日欠かさず行う少しばかりの運動の効果はあなどれない。1日何時間椅子に座っていようと、ほんの少し運動すれば、活動量が少ない生活を送ることによる死亡リスクを低減することができるのだ」と、この論文は主張している。
先進国に暮らす人々の座位時間についてのこれまでの研究によると、欧米諸国の人々は1日の50パーセントから70パーセントを座って過ごしているという。考えてみれば、これは相当な時間である。
今回の研究はこのテーマについて、まったく新しい観点を持ち込んだ。座っている時間を減らさずとも、いくらかの時間を適度な運動にあてれば、健康リスクが低減されることを示したのだ。
医学系情報サイト「News-Medical.net」によると、運動と健康維持の関係について考察する従来の研究のほとんどは、「集計データ」に依拠する傾向があった。しかし、これでは大づかみのアプローチになるのは避けられないという。そこで研究者たちは、実験協力者たちに活動量計を装着してもらい、一人一人の個別データを蓄積していったのだ。
今回の論文で分析されているデータは次のとおり。ノルウェー・トロムソ研究(The Tromsø Study)の2015年〜2016年のデータ、「スウェーデン・ヘルシー・エイジング・イニシアティヴ」の2012年〜2019年のデータ、ノルウェーの身体活動量調査(2008年〜2009年)、米国全国健康・栄養調査(2003年〜2006年)。
これらのデータには、50歳以上の人々のデータが1万2,000人分より多く含まれている。研究者たちはこの広範なデータベースをもとに、今回の結論を引き出すことができたのだ。
データによると、調査対象者のほぼ半数にあたる5,943人が、1日およそ10.5時間を座位で過ごしており、半数以上の6,042人が10.5時間以上を座位で過ごしていた。彼らの体は長い時間、あまり動かずにいたのである。
研究者たちはこの座位時間データを死亡データと照らし合わせた。その結果、5年間のうちに807人が亡くなり、そのうち357人が座位時間10.5時間のメンバーで、448人が座位時間10.5時間以上のグループに属していることを明らかになった。
研究者たちはまた、毎日12時間以上座っている人は、座位時間が8時間の人に比べ、死亡リスクが38パーセント上昇することを発見した。ただし、これは適度な運動を毎日22分間未満しか行っていないグループ間での比較である。
1日に22分間以上運動すれば、死亡リスクを下げることができる。医学系情報サイト「News-Medical.net」が指摘するように、座位時間と健康リスクの関係は、その人が適度な運動をどれくらいしているかによって大きく左右されるのだ。
同サイトはつづけて、10分間の運動をするだけでも、座位時間が10.5時間の人々の死亡リスクが15パーセント減ることがわかったと解説している。座位時間が1日10.5時間以上の人の場合は、10分間の運動で死亡リスクが35パーセント減少したという。
もっとも、この研究はあくまで観察に基づいて行われたものであり、仮説を立ててそれに沿った実験を組み立てるようなものではない。したがって、自分の生活に当てはめるさいには多少のさじ加減が必要だ。とはいえ、毎日の少しの運動が大きな違いを生むということは、大筋において正しいだろう。
「積極的に体を動かすことは、個々人の健康にとってかなり大きな利益をもたらす可能性が高い。適度な運動を少し行うことは、長い座位時間にともなう健康リスクを改善するための有効な戦略になるだろう」と、本論文は結んでいる。