ウクライナの背後を狙い、トンネル戦術に出たロシア軍
ロシア国防省が今年6月に行った報告では、ロシア軍はドネツク州の集落ピヴニチネ郊外にある陣地を占領したとされている。その際、ある興味深い戦術がとられていた。それが第一次大戦のころを思わせるトンネルだ。
ロシア軍はウクライナが設けた防衛線を迂回し、背後から攻撃を加えるため、トンネルを掘っていたことがロシア国防省のレポートから明らかになった。
同省の報告によると、ある分遣隊がドネツ川の運河沿いに3km以上にわたるトンネルを掘ったのだという。
そしてロシア軍はそのトンネルを使って「長距離射撃設備や地下シェルターを備え、防御を固めた陣地の背後に侵入」したとされる。『ニューズウィーク』誌が翻訳して伝えている。
このトンネルがあったおかげでロシア軍は弾薬や武器、食糧などを攻撃部隊に供給することができ、結果的に陣地の占領にも成功することとなった。
ロシア国防省はテレグラム上でこう述べている:「奇襲戦術を用いることで分遣隊の兵らは攻撃に成功、敵は降伏するか陣地を放棄して逃亡するかせざるを得ず、陣地を完全に占領した」
ロシア国営タス通信によると、ロシア軍に占領された陣地はキーロフ村にあったもので、攻撃してきた部隊は中部戦闘群のベテランで構成されていたという。
ロシア軍は今回のようなトンネル戦術を2023年10月から採るようになっている。最初はアウディイウカでウクライナの陣地を迂回するために利用された。
ウクライナ軍第110独立機械化旅団の広報担当アントン・コツコンは『ニューズウィーク』誌上でこうコメントしている:「ロシアの戦術について言うと、今回の戦争はしばしば第一次世界大戦と比較されています」
コツコンはこう続ける:「ロシア軍はアウディイウカの前線でトンネル戦術を採り始めました。我々の陣地のすぐ近くまでトンネルを掘っています」
コツコンによると、トンネルはウクライナの監視ドローンの眼を免れるために利用されているという。そうすることでロシアの分遣隊が「我々の陣地付近に突然現れる」のだ。だが、状況を打開しようと必死なロシア軍が採用した変わった戦術はトンネルだけではない。
コツコンはこうも述べている:「防衛にあたる将校からの報告では、ロシア軍はロボット車両を遠隔操作して弾薬の補給に利用しているようです」
コツコンはこう続ける:「利用されている車両は特殊なもので、かなり大きく積載量も多いのです」
前線では航空ドローンが猛威を振るっていることを考えると、ロボット車両を遠隔操作して弾薬補給に活用するというのは理にかなっている。とはいえ、この戦術がキーロフ村の陣地を奪取する際にも利用されたかは定かではない。
アウディイウカは2024年2月17日にロシアの手に落ちた。ロイター通信によると、これは2023年のバフムト占領以来初といえるロシア側の大きな戦果だという。
『ニューズウィーク』誌のイザベル・ファン・ブルヘンによると、ロシア軍はその後「ウクライナ東部での大きな戦果」を狙って攻勢に出ており、具体的な目標はドネツク州やルハンシク州だという。