中国のスパイとして起訴されていた容疑者がイギリスで不審死
香港の情報機関に情報を流出させたとして訴追されていたイギリス人、マシュー・トリケット(37)が5月21日、ロンドン郊外の公園で不審死しているのを発見された。BBCが報じている。
地元当局の発表ではトリケットの死因は「不明」とされており、現在も捜査が続けられている。
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トリケットの死体が発見されたのはロンドン西郊バークシャーのメイデンヘッドだ。AP通信によると、スパイ容疑をかけられていたトリケットは自ら命を絶とうとしたこともあったという。
トリケットが不審死を遂げる一週間前には、検察官のカシフ・マリルクがトリケット自身の安全を確保するために拘置することを申請していた。
英紙『ガーディアン』によると、トリケットはイギリス在住の香港民主活動家を監視したりつけ回したりしていたとして訴追されていた3人のうちのひとりだという。
その3名の容疑者は裁判開始に先だって数日間の保釈が認められていた。だが、この3名は一体どのような人物で、香港当局とはどのようなつながりがあるのだろうか。
『ガーディアン』紙によるとトリケットはイギリス海兵隊の元コマンドで、内務省の入国管理局職員として働きながら民間の警備コンサルタント事業も行っていたという。
残りの2名の身元も明らかにされている。1人は香港経済貿易代表部駐ロンドン事務所で働くビル・ユンだ。
もう1人はイギリスと中国の二重国籍を持ち、イギリス最大の空港であるヒースロー空港で国境警備に就いていたピーター・ワイだ。
CNNによると、これら3名には2023年12月20日から2024年5月2日にかけて、情報収集や監視、欺瞞行為などを行って外国の諜報機関を支援した容疑がかけられているという。
また、BBCによると、この3名は5月1日に他人の住居に不法侵入したという罪も問われているという。
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在英中国大使や香港の李家超行政長官は、イギリス検察局によるこの逮捕を非難している。
香港紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』は今回の逮捕劇を、香港をめぐって英国と中国の外交関係が悪化してきていることが表出したものだと伝えている。
英国政府はこれまでも、香港当局(および中国政府)による国外の民主派活動家への干渉を非難してきている。
2021年にはボリス・ジョンソン首相(当時)が大規模なキャンペーンを展開し、香港市民がイギリスで新生活を送ることができるよう大量のビザを発給している。
中国と西側諸国の政治的対立は日々深まってきており、今回のスパイ問題もその緊張を悪化させるかもしれないとして注視されている。