レバノンの首都ベイルートで被害が拡大:ヒズボラを標的にするイスラエルの攻撃が激化
イスラエルはレバノンに対し、同国内で活動するシーア派イスラム主義組織ヒズボラを標的として激しい空爆を続けている。レバノンでは死者や難民が続出する事態となっている。
しかも、レバノンにおける軍事衝突は大規模な地域紛争に発展するおそれがあるため、各国は当事者に自制を呼びかけている。
写真はレバノンの首都ベイルートにある公園で暖を取る子供。
そもそも、事の発端はガザ地区のイスラム主義勢力ハマスが昨年10月に仕掛けた奇襲攻撃だった。しかし、イスラエルはすでにハマスに大打撃を与え、北側の宿敵ヒズボラに照準を移しつつあるようだ。これに対し、各国の指導者たちはレバノンが戦場となることで、世界中を巻き込んだ大混乱を引き起こすのではないかと警戒感を強めている。
The Daily Digest をフォローして世界のニュースをいつも手元に
イスラエルによる攻撃はヒズボラ指導者のポケベルとトランシーバーを爆破するという、スパイ映画のような作戦で幕を開けた。その後、レバノン南部に対する空爆が始まり、死者や難民が続出。レバノン当局は民間人や子供を含む600人あまりが死亡したと発表している。
イスラエルはヒズボラによるロケット弾攻撃に対抗するため、9月24日にレバノン領を空爆し始め、事態は一気にエスカレート。数千人ものレバノン市民が避難を余儀なくされたほか、専門家たちはイスラエルが地上侵攻に乗り出すのではないかと警告を発している。写真は首都ベイルートに逃れてきた人々。
イスラエルがレバノンとの国境地帯に兵力を集結させたことは複数のメディアによって確認されており、地上侵攻の準備ではないかと見られている。ただし、BBC放送はイスラエル軍高官の話として、当面は空爆のみで地上侵攻はなされないという方針を伝えた。
一方、欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル上級代表はこの紛争が「全面戦争」に発展するおそれがあると指摘。『タイムズ・オブ・イスラエル』紙は「破滅的な結果」を懸念する米高官のコメントを伝えた。
写真はイスラエルが2014年に行った攻撃によって被害を受けた建物(ベイルート)
イスラエルの宿敵、ヒズボラの後ろ盾は地域大国のイランだ。イランはすでに核兵器製造能力を持っている可能性があり、同国が紛争に介入すれば、事態はさらにエスカレートするだろう。
写真はイランの最高指導者ハメネイ師。
イスラエルとヒズボラの衝突が中東全域を巻き込んだ戦争に発展すれば、欧州や米国などでもテロ攻撃が発生する可能性もある。
いずれにせよ、ガザ地区を巡るイスラエルの対応はロシアによるウクライナ侵攻と相まって、軍事力がモノを言う世界の幕開けのようにも見える。一方、国連は内部で分断が進み、事態を収束させることができそうにない。
また、これまで「世界の警察官」だった米国は大統領選のさなかにあり、バイデン政権はすでに求心力を失っている。
その上、トランプ前大統領が返り咲きを果たせば、国際情勢はさらに混乱するかもしれない。同氏はウクライナ支援に消極的な一方で、中東問題ではネタニヤフ政権の推し進める戦争を全面支持しているのだ。
相次ぐ内戦や紛争で疲弊したレバノン社会は、またしても大きな危機に見舞われることになってしまった。写真はイスラエルが2006年に行った空爆の様子(ベイルート)
多くの専門家たちはイスラエルによる空爆でレバノンの民間人に多大な被害がおよべば、中期的にはむしろ反イスラエル闘争が激化してしまうと見ている。終わりの見えない中東紛争を、世界は固唾をのんで見守っている。
The Daily Digest をフォローして世界のニュースをいつも手元に