ウクライナがロシア産天然ガスのパイプラインを停止:各国への影響は

ロシアからの天然ガスパイプラインが停止
歴史的決断
ロシアからの天然ガスが停止
ロシアによる脅迫に利用されてきた
停止は予想されていた
影響を受ける国は
安全保障の観点から停止に
ロシアは市場を失う
エネルギーのロシア依存からの脱却を進めてきた欧州
最大のダメージを受けるのはロシア
約50億ドルの収入を失う
ウクライナへの影響は小さい
オーストリア
スロヴァキア
モルドバ
厳しい冬に直面
ロシアからの天然ガスパイプラインが停止

ロシアは産出した天然ガスを、ウクライナを経由してヨーロッパに運んでいるが、このパイプラインが停止した。ウクライナのゼレンスキー大統領はこれを「ロシア最大の失点」と誇っている。

歴史的決断

パイプラインが停止したのはウクライナ側がロシアと結んでいた期間5年の契約を更新しなかったためで、ソビエト時代から続く慣習を中断する、歴史的な決断となった。背景には、ウクライナへの侵攻を続けるロシアの戦費獲得を阻害する狙いがある。

ロシアからの天然ガスが停止

ゼレンスキー大統領はSNSへの投稿でこう述べている:「プーチン大統領がロシアで権力を手にして以来、25年以上もの期間にわたって、ウクライナを経由してヨーロッパに送られる天然ガスの量は1,300億立方メートルを下ったことはなかった。だが今日、その数字はゼロとなった」

ロシアによる脅迫に利用されてきた

CNNによると、ゼレンスキー大統領はテレグラムに次のように投稿したという:「(ロシアは)エネルギーを武器化し、(ウクライナの)同盟国に対してあざ笑うような脅迫を行ってきた」

停止は予想されていた

これまでの契約は2020年に締結されたもので、新年と共にその期間が満了した。3年にも及ぼうとするロシアによる全面侵攻を受けて、ウクライナ側が契約更新を拒否することは早くから予想されていた。

影響を受ける国は

ウクライナが契約更新を拒否する決断が可能となった背景には、ヨーロッパ側によるロシア依存からの脱却が進んだこともある。そのため、今回のパイプライン停止によって直接的に大きな影響を受けるのはオーストリアとスロヴァキア、モルドバの3国に限られる。

安全保障の観点から停止に

ウクライナのエネルギー省は今回の決定の理由を「自国の安全保障の観点から」だとしている。

ロシアは市場を失う

ウクライナのゲルマン・ガルシェンコ・エネルギー相はアルジャジーラの取材にこう答えている:「ロシア産の天然ガスの輸送を停止しました。これは歴史的出来事です。ロシアは市場を失いつつあります。経済的損失を被ることでしょう。ヨーロッパはすでに、ロシア産のガスから脱却するという決断を行っています」

エネルギーのロシア依存からの脱却を進めてきた欧州

かつて、ロシアはヨーロッパで消費される天然ガスの最大35%を産出していた。ウクライナへの全面侵攻以降、欧州はこの数字を8%まで低下させてきた。

最大のダメージを受けるのはロシア

今回の決定によって経済的損失を被るのはロシアだけでなくウクライナも同様だが、ウクライナ側は、ロシアのほうがより大きなダメージを受けると主張している。

約50億ドルの収入を失う

ロイター通信の試算によると、ウクライナ経由での天然ガス輸送によって、ロシアは年額約50億ドルを稼いでいたという。

ウクライナへの影響は小さい

ウクライナGTSオペレーター社の最高経営責任者を務めていたこともあるセルゲイ・マコゴン氏によると、ウクライナ側はこの輸送から約8億ドルを得ていたが、その大半は「輸送システムの維持に使われていた」という。ウクライナメディアが報じている。

オーストリア

オーストリアは自国で消費する天然ガスのほぼすべてをロシアに依存していたが、こういった事態に備えて供給元の変更を準備してあった。

スロヴァキア

いっぽうスロヴァキアでは、ウクライナがパイプラインを停止したことで輸送コストや追加調達費用がかさみ、数億ドル規模の損失がでると発表している。

モルドバ

もっとも深刻な影響を受けることになるのはモルドバだ。マイア・サンドゥ大統領は親欧州的な立場から、ロシアのガスプロム社が代替輸送ルートを確保しなかったことを非難しているという。アルジャジーラが報じている。

厳しい冬に直面

サンドゥ大統領はまた、暖房用にロシア産の天然ガスが使えず、モルドバ国民は「厳しい」冬に直面しているとも述べている。この時期、同国の気温は氷点下にまで下がる。

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