ウクライナに供与されるF-16戦闘機は数が足りない?(ゼレンスキー大統領)
ウクライナはまもなく、同盟国からF-16戦闘機の供与を受けることになっている。しかし、ゼレンスキー大統領は7月15日に、F-16に関する懸念を表明した。
ゼレンスキー大統領はF-16戦闘機の性能を評価しているが、今年到着することになっている同機の数はロシア空軍を阻止する上で心もとないと述べたのだ。
『ニューズウィーク』誌によれば、ゼレンスキー大統領は記者会見の中で、「ウクライナへF-16を供与するというのは戦略的な判断だったが、その数が戦略的でない」と発言。
『ニューズウィーク』誌のイザベル・ファン・ブリューヘン記者によれば、ウクライナ向けF-16戦闘機の移送はすでに始まっているという。
また、米国のアントニー・ブリンケン国務長官も、ウクライナ防衛に貢献すべくF-16戦闘機が「今夏、ウクライナ上空を飛行する」と7月初旬にコメントしていた。
ブリンケン国務長官の発言は事実だろう。しかし、ゼレンスキー大統領はウクライナに供与されるF-16戦闘機は数が足りないため、領土防衛におけるゲームチェンジャーにはならないと見ているようだ。
同大統領は「供与される戦闘機の数については、現時点では明かせません。しかし、数が十分ではないかもしれません」としつつも、ウクライナの防衛力強化につながることは認めている。
ただし、同大統領はさらに、「これら戦闘機はロシアの航空隊と対等に戦えるほどの数になるでしょうか? 私には十分だとは思えません」と付け加えた。
ゼレンスキー大統領は記者団に対し、F-16戦闘機の追加供与を望んでいると説明したが、その要望が容易に実現することはなさそうだ。
デンマーク、ノルウェー、オランダ、ベルギーの5ヵ国は共同でF-16戦闘機60機あまりをウクライナに供与することで合意していたが、情報筋によれば、その目途は立っていないというのだ。
ニュースサイト「ブルームバーグ」が7月12日に伝えたところによれば、ウクライナにF-16戦闘機を供与する計画には、遅延やスペアパーツにまつわる懸念、言語の壁といった様々なハードルが付きまとっているそうだ。
また、供与計画を主導する関係者は、ウクライナにはおそらく、F-16を配備するために必要な滑走路用のスペースがない上、既存の滑走路は空爆に対する備えが不十分だとして懸念を表明。
このように、ウクライナに対するF-16供与はさまざまな問題を抱えており、「ブルームバーグ」いわく、ウクライナ軍が今夏、運用できるのはせいぜい飛行隊1つ分(15~24機)だろうとのこと。
同サイトはさらに、別の関係者からの情報として、ウクライナ軍が夏の終わりまでに受けとることができるF-16は20機に留まるとの見通しを伝えた。これはウクライナ指導部が希望していた300機よりはるかに少ない。
ウクライナに移送されたF-16戦闘機がロシア空軍相手にどのようなパフォーマンスを見せるのか、現時点では未知数だ。しかし、一部の専門家たちは、F-16によって戦況が好転することはないだろうと見ている。
たとえば、新アメリカ安全保障センターのジム・タウンゼント上級研究員は「奇跡を期待すべきではありません」と述べている。いずれにせよ、近いうちにF-16戦闘機がウクライナで活動を始め、その効果も明らかになるはずだ。