ウクライナの空挺部隊、クルスク州の激戦で敵のT-90M戦車を鹵獲

ロシア軍の戦車を大量に鹵獲したウクライナ軍
少なくとも7両を鹵獲
第80独立空中強襲旅団
状態のよくない車両も
SNS上に投稿された動画
鹵獲されたT-90Mはほぼ無傷
T-90Mはどのようにして鹵獲されたのか?
敵陣地の掃討中に鹵獲
戦車はウクライナ軍の手に
バッテリーを交換してT-90Mを持ち帰ったウクライナ軍
ウクライナ戦車兵の間では不評
多数のT-90Mを失っているロシア軍
増え続ける損失
T-90M以外の戦車も……
「Oryx」によるデータ
開戦以来、両軍の損失を検証し続けてきた「Oryx」
「Oryx」の分析手法
実際の損失は「Oryx」のデータより多い
T-90Mの損失107両は些細なこと?
プーチン大統領のコメント
「敵に一切チャンスは残されていない」
防御力も高いはずだが……
さまざまな武器によって破壊可能
T-90Mが初めて撃破されたのは開戦直後
ロシア軍の最新鋭戦車はT-14「アルマータ」だが……
性能確認を終えて引き上げ
実戦における最新鋭はT-90M
2017年に配備スタート
ロシア軍の戦車を大量に鹵獲したウクライナ軍
8月6日、ウクライナ軍は突如、ロシア領のクルスク州に逆侵攻を仕掛け、迅速に戦果を挙げて世界を驚かせた。とりわけ注目すべきはウクライナ軍が鹵獲したロシア軍戦車の数だろう。
少なくとも7両を鹵獲

ウクライナの軍事ニュースサイト「Militarnyi」によれば、ウクライナの空挺部隊はクルスクへの逆侵攻を開始して以来、敵の戦車を少なくとも7両鹵獲したが、そのうちのいくつかはロシア軍が誇る最新鋭の戦車だったようだ。

画像:Telegram @ua_dshv

第80独立空中強襲旅団

この戦果を挙げたのはウクライナの第80独立空中強襲旅団だ。「Militarnyi」いわく、同旅団はT-90M戦車1台、T-80BVM戦車4台、T-72戦車2台を鹵獲。これらの戦車は今後、同旅団がロシア軍との戦闘に利用するとのこと。

画像:Telegram @ua_dshv

状態のよくない車両も

旅団は「T-72は状態が悪く、明らかに長期間使用された形跡があります。しかし、我々は修理を試みています」とコメント。一部の戦車は通信システムに故障があるほか、大規模な修理が必要となる車両もあるそうだ。

画像:Telegram @ua_dshv

SNS上に投稿された動画

「Militarnyi」によれば、今年8月下旬に、第80独立空中強襲旅団がクルスク州で鹵獲したT-90M戦車の動画や写真がSNS上に投稿されたとのこと。

画像:X @vykhor_group_ua

鹵獲されたT-90Mはほぼ無傷

今回鹵獲されたT-90Mは砲塔に軽微な損傷があるのみでほぼ無傷だが、鹵獲に至った経緯については明かされていない。また、クルスク州でウクライナ軍がT-90M戦車を鹵獲したのは今回が初めてではない。

画像:TikTok @dukakolyan

T-90Mはどのようにして鹵獲されたのか?

同旅団は逆侵攻の開始直後に、敵陣地後方における作戦の中で、別のT-90Mを鹵獲していたのだ。その様子は同旅団がSNS上に公開した動画を通じて知ることができる。

 

敵陣地の掃討中に鹵獲

第80空中強襲旅団がFacebook上で公開した動画はT-90Mを鹵獲した兵士に対するインタビュー形式のもので、この兵士の所属する部隊はクルスク州で敵陣地の掃討を行っていたという。

画像:Facebook @80brigade

 

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戦車はウクライナ軍の手に

「Militarnyi」によれば、このウクライナ兵は鹵獲時の状況について、ロシア軍の戦車兵がT-90Mのエンジンを掛けて逃走しようとしたが、うまくいかなかったと語っているそうだ。ウクライナ軍がこれを鹵獲したときも、戦車のバッテリーは上がったままで、始動しなかったという。

画像:Facebook @80brigade

バッテリーを交換してT-90Mを持ち帰ったウクライナ軍

ウクライナ軍はT-90Mのバッテリーを交換し、何度も始動を試みた結果、最終的にはエンジンが掛かり、戦利品を味方の陣地まで持ち帰ることができたという。この戦車には「ピロシキ」という愛称が付けられたそうだが、これに乗り込むこととなったウクライナ兵はあまり満足していないようだ。

画像:Facebook @80brigade

ウクライナ戦車兵の間では不評

あるウクライナ軍司令官はこの戦車について、「まったく、このガラクタは運転しにくいし、砲塔もちゃんと回転しないんだ。レバーなんかGAZ-66シシガ(ソ連時代の軍用トラック)みたいだし、座りづらい。ウチの乗員は不満を漏らしているよ」とコメント。

画像:Facebook @80brigade

多数のT-90Mを失っているロシア軍

プーチン大統領はT-90Mについて世界最高の戦車だと自画自賛したことがあるが、ロシア軍はウクライナ侵攻を続ける中で、すでに多数のT-90Mを失ってきた。

画像:Facebook @80brigade

 

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増え続ける損失

実際、今年7月には、オープンソースインテリジェンス大手「Oryx」がロシア軍の失ったT-90Mの数は100両を突破したと発表。それ以降もロシア軍はこのタイプの戦車を相次いで失っている。

 

T-90M以外の戦車も……

ちなみに、このニュースが伝えられた当時、ウクライナ軍参謀本部はロシア軍が失った戦車の数について、計8,227両だと推定していた。

「Oryx」によるデータ

一方、「Oryx」が9月1日に発表したデータによれば、ロシア軍が失った戦車の数は合計で3,345両。その内訳は撃破2,292両、損傷156両、放棄368両、鹵獲529両となっている。

 

開戦以来、両軍の損失を検証し続けてきた「Oryx」

「Oryx」はウクライナ侵攻が勃発して以来、ロシア軍およびウクライナ軍が失った装備の数量を分析し続けており、その発表には一定の信頼性があると見られている。

「Oryx」の分析手法

「Oryx」は画像や映像から立証された損失のみをデータに反映させ、その状況に応じて撃破・損傷・放棄・鹵獲に分類しているとのこと。

 

実際の損失は「Oryx」のデータより多い

「Oryx」はロシア軍が失ったT-90M戦車について107両と発表したが、画像や映像から確認できないものも含めれば、実際の損失がこの数字を上回っているのは間違いないとした。

 

 

T-90Mの損失107両は些細なこと?

さて、ロシア軍が少なくとも3,345両もの戦車を失ったことを考えれば、T-90Mの損失107両というのは些細なことのように思えるかもしれない。しかし、T-90Mはロシア軍が現在、運用している戦車の中で最新鋭のモデルなのだ。

プーチン大統領のコメント

ロシア国営タス通信によれば、プーチン大統領はT-90Mを「世界最高の戦車」と呼んで自画自賛したという。

画像:Wiki Commons By Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0

「敵に一切チャンスは残されていない」

プーチン大統領はさらに、「この戦車が陣地に接近すれば、どのような敵にも一切チャンスは残されていない。遠方から精度の高い砲撃ができるためだ」と述べ、T-90Mの性能の高さを賞賛。

 

防御力も高いはずだが……

同大統領はまた、T-90Mの防御力の高さを強調したが、これについては話半分に聞いておくのがよさそうだ。確かにロシア戦車としては頑丈なのかもしれないが、戦場ではいとも簡単に撃破されてしまっているのだ。

さまざまな武器によって破壊可能

実際、戦闘から届けられた映像によって、T-90Mは地雷や対戦車ミサイル、ドローン、さらにはM2「ブラッドレー」歩兵戦闘車などを用いれば、たやすく破壊できることが判明している。

画像:X @DefenceU

T-90Mが初めて撃破されたのは開戦直後

ニュースメディア「ビジネスインサイダー」によれば、T-90M戦車の損失が初めて確認されたのは開戦直後のことで、ウクライナ人ジャーナリストが撃破されたT-90Mの写真をオンライン上に投稿したことで発覚したという。

画像:X @IAPonomarenko
ロシア軍の最新鋭戦車はT-14「アルマータ」だが……

ただし、ロシア軍はT-90Mよりも新型で高性能の戦車、T-14「アルマータ」を保有していることを忘れてはいけない。とはいえ、T-14はごく少数が戦闘に投入されたのみで、それらもすぐに撤退してしまった。

性能確認を終えて引き上げ

『ニューズウィーク』誌はロシア情報筋の話として、T-14は性能を確認するために短期間戦場に投入されたが、目的を達するとすぐに引き上げられたと伝えている。

実戦における最新鋭はT-90M

一方、T-90Mは開戦以来、実際に戦闘に使用され続けている戦車としては最新鋭だ。ただし、この戦車が完全無欠でないことはウクライナ軍との戦闘の中で明らかになりつつある。

画像:Wiki Commons  By Mike1979 Russia, Own Work, CC BY-SA 4.0

 

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2017年に配備スタート

『ナショナル・インタレスト』誌によれば、ロシア軍は2017年にT-90Mの配備をスタート。同戦車は「ロシアの防衛産業が生み出した装甲技術としては最高峰」だったという。

画像:Wiki Commons  By Mike1979 Russia, Own Work, CC BY-SA 4.0

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