ウクライナ侵攻で自滅?:袋小路にはまったロシア経済
ロシアがウクライナ侵攻に乗り出して約22ヵ月、プーチン政権は戦場の内外でさまざまな問題に直面している。
ロシア軍は戦場で多大な損害を出し続け、一部地域から撤退を余儀なくされるなど威信を落とす一方、プーチン政権も大規模なクーデター未遂に直面し、国際的な影響力を低下させつつある。
しかし、こういった問題もロシア経済がはまり込んだ袋小路に比べれば大したことはない。ロシアは今、西側諸国の課した制裁措置によって経済的なリスクに直面しているのだ。
経済専門サイト「ビジネスインサイダー」によれば、ロシア通貨ルーブルは今年8月に最近16ヵ月で最低となる安値をつけ、いまだ低迷を続けているという。このような状況の中、ロシア市民たちは節約を余儀なくされている。
ロシアの市場調査会社「Romir」が公開した調査結果によれば、回答者の19%が食料品や日用品への出費を抑え、節約を図っていると答えたとのこと。
また、ビジネスインサイダーは「Romir」のシニアディレクターを務めるクセニア・パイザンスカヤ氏の言葉として、「現在の経済状況と物価上昇を前に、ロシア人たちは節約に努めている」と伝えている。
ロシア経済は今、お世辞にも好調とは言えない状況だ。『エルサレム・ポスト』のアレクセイ・ベイヤー記者も、プーチン政権が直面する数々の問題は経済に波及しかねないと指摘している。
たとえば、ロシアの石油・ガス産業はヨーロッパ市場から事実上締め出されているほか、西側諸国から製品を輸入する場合も困難がともない、コストがかさむようになっている。
さらに、昨今のロシアでは労働力不足が深刻化。このような要因が重なることでインフレが加速、ルーブルは対ドルで記録的な安値となっているのだ。
しかも、ロシア政府は軍事費に巨額の予算をつぎ込んでいるため、経済問題はウクライナ侵攻にも大きな影響をおよぼす可能性がある。
ロイター通信は今年8月4日、ロシア政府文書における国防予算が去年に比べて倍増し、1050億ドルに達したと伝えた。
これにより、クレムリンの軍事費は公的支出全体の3分の1に達したと見られており、ロシア経済の活性化に一定の効果をもたらすという側面もある。
けれども、ロシア独立系新聞『ノーヴァヤ・ガゼータ』によれば、軍事費だけに頼ってロシア経済を無傷のまま長期間維持するのは難しいとのこと。
ジャーナリストのセルゲイ・テプリャコフ氏は、ロシアの国防予算について国家予算全体の45%まで増加する見込みだと指摘。その他の構造的な変化も相まって、ロシア経済は「市場経済から戦時経済体制へと」転換しつつあるのだ。
テプリャコフ氏によれば、車両やコンピューター、その他のハードウェアといった軍事関連の製造部門では25~35%という大きな成長率が見られるが、非軍事部門では産業規模が委縮。その一例としては製薬部門が挙げられるという。
ロシア経済の行方はいまだ定かではないが、最悪の事態はまだ訪れていない可能性が高い。政策金利を12%に引き上げ、先の見えないウクライナ侵攻にのめり込む中、プーチン政権を取り巻く経済状況はますます悪化する見通しだ。