ウクライナ侵攻の影響でロシアから流出するIT技術者たち

IT企業および従業員の流出
ハイテク分野で何が?
投資家や起業家も出国
IT分野で人材不足に
懸念すべき数字
高級管理職もロシアを去る
すばやく脱出
事業縮小・停止
ロシアでの事業を停止したDell社
ロシアから撤退する各国の企業
Meta社
Google
孤立するロシア
”ロシアのGoogle”、Yandex
当局によるインターネットの管理強化
Yandex騒動の影響
大手IT企業が国の管理下に
デジタル市場
従業員の出国
進む国営化
Yandexの元CEO
Yandexの新たな体制
ロシア指導部の選択
戦時体制に変わるロシア経済
消耗戦への備え
さらに多くの意見
ロシアはIT技術者不足に陥る?
先行きは不透明
IT企業および従業員の流出

ウクライナ侵攻を続けるロシアは今、米国や英国、欧州連合(EU)が発動した経済制裁による影響に加え、ハイテク分野での危機に見舞われている。

 

 

ハイテク分野で何が?

ウクライナ侵攻が始まってからというもの、ロシアのIT技術者たちは続々と海外に出国してしまっているのだ。

 

投資家や起業家も出国

さらに、ビリオネア投資家のユーリ・ミルナー(写真)やオンライン銀行の設立者として知られるオレグ・ティンコフなど、事業を守るためロシア国籍を手放す決断を下す投資家や起業家も少なくない。

 

IT分野で人材不足に

『MIT Technology Review』誌は、2022年におよそ10万人のIT技術者がロシアを去ったというロシア当局発表のデータを引用している。

懸念すべき数字

10万人という数字は、ロシアのIT業界で働く技術者の10%に相当する。

 

高級管理職もロシアを去る

さらに、高級管理職の間でも、ロシアを離れるケースが目立つようになってきた。たとえば、”ロシアのGoogle”と呼ばれる大手インターネット企業、Yandexのコマーシャル・ディレクターだったウラジーミル・ベルーギンが一例だ。

 

すばやく脱出

『MIT Technology Review』誌 によれば、ベルーギンはウクライナ侵攻の開始からわずか 7 日後に出国したというが、会社や自身をとりまく状況が一変することを察知したからに他ならない。

 

事業縮小・停止

さらに、大手ハイテク企業を含む1,000社あまりの企業が、ロシアにおける事業を縮小または停止する事態となっている。

 

ロシアでの事業を停止したDell社

ウェブサイト「Olhar Digital」によれば、多国籍コンピューター企業Dellは2022年8月にロシアでの事業を停止。同国内のオフィスを閉鎖したほか、製品販売も中止しているという。

ロシアから撤退する各国の企業

さらに、ロシアから撤退する決断を下したハイテク大手企業としてはノキアやエリクソンを挙げることができる。ただし、ロイター通信によれば、ノキアの広報担当者は「法的な閉鎖手続きが完了するまでは、当面ロシアに残ることとなる」と述べている。

Meta社

また、FacebookやInstagramを抱えるIT業界の巨人、Meta社はロシア国営メディアへのアクセスを制限したほか、そのようなサイトへのリンクを共有しようとするユーザーには警告を表示する措置をとっている。

Google

CNNブラジルによれば、Googleはすでにロシア国営メディアの広告を排除しているほか、子会社のYouTubeもロシア国営メディアが同プラットフォームを通じて収益化することを禁じたという。

孤立するロシア

外国企業のこのような決定を受け、海外からの資金提供や研究協力を受けることができなくなったロシアはハイテク分野でますます孤立を深めている。

 

”ロシアのGoogle”、Yandex

検索エンジンの運営をはじめ、インターネット関連事業で大きな成功を収めているロシア発のIT企業、Yandex。しかし、同社はすでにロシア版Facebookで国営企業の「フコンタクテ」に買収されている。

 

当局によるインターネットの管理強化

つまり、ウクライナ侵攻のあおりを受け、ロシアでは当局によるインターネットの管理体制が強まっており、国民はそれ以外のネットワークに接続することが難しくなっているというわけだ。

Yandex騒動の影響

ところで、Yandexにおける混乱がロシアのIT業界にこれほどまでの大打撃を与えているのは何故だろう?

大手IT企業が国の管理下に

Yandexはオランダでの事業登録をはじめ国際的な事業展開を行っており、 米国初の大手企業としのぎを削る中で世界有数の先端企業であるという評価を獲得していた。

 

デジタル市場

『MIT Technology Review』誌によれば、Yandexはロシアの検索エンジン市場においてGoogle以上のシェアを占めているほか、オンラインニュースをはじめとするデジタル分野でもトップを独占していたという。

 

従業員の出国

しかし、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻すると、Yandexの従業員たちは出国を開始。

進む国営化

開戦から数週間でYandex上に流れる情報の70%は国営メディアが独占するようになり、ロシアはウクライナの「非ナチ化」に取り組んでいると宣伝するようになってしまった。

 

Yandexの元CEO

YandexのCEOだったティグラン・フダヴェルディアン(写真)はEUによる制裁措置を受けて辞任、NASDAQ証券取引所での上場も中止されることとなった。

Yandexの新たな体制

『MIT Technology Review』誌は、Yandexの今後について分割される見込みだと報じている。それによれば、ロシア国内の主要事業はプーチン大統領の友人で財務大臣を務めたこともある経済学者、アレクセイ・クドリン(写真)が率いる一方、残りの事業については旧本拠地のオランダに本社を構えることになっているという。

ロシア指導部の選択

ウクライナ侵攻の勃発でロシアのハイテク業界は大きな方向転換を余儀なくされているが、ロシア当局は人的資源の喪失や経済制裁の影響など意に介さない様子だ。

 

戦時体制に変わるロシア経済

マドリードに本部を置くIEビジネススクールのマキシム・ミロノフ教授は2022年9月、ドイチェ・ヴェレ放送によるインタビューの中で「ロシア経済が半年前より低迷したとしても、プーチン政権に戦争への資金投入をやめさせることはできない」とコメント。

消耗戦への備え

キール世界経済研究所(IfW)のロルフ・J・ラングハマー元副所長はドイチェ・ヴェレ放送に対し、「国際通貨基金(IMF)は2021年に、ロシアが2014年のドンバス戦争およびクリミア併合以来、資金を蓄えて消耗戦に備えてきたことを指摘している」とコメント。

 

さらに多くの意見

英国レディング大学で経済学を教えるアレクサンダー・ミハイロフ准教授いわく:「西側諸国では10%のインフレですら国民が不安を口にし、政治家に対応を求めます。しかし、ロシア社会でそのようなことは起きません。したがって、プーチン大統領は国民による反発を気にすることなく生活水準を20~30%引き下げることができるわけです」

ロシアはIT技術者不足に陥る?

『MIT Technology Review』誌によれば、開戦前の2021年末にガートナーが報告書を発表、ロシアにおけるIT技術者不足は2025年にさらに50%深刻化すると推計していた。

先行きは不透明

国民の団結を図る一方で、熟練の技術者や若い才能の流出を阻止しようと躍起になるロシア。その試みは一体どの程度成功するのだろうか?

 

 

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