ウクライナのドローン攻撃が成功:ロシア軍は重火炎放射システムを失う
ウクライナ保安庁はこのたび、一人称視点(FPV)ドローンを使用してロシア軍が誇る重火炎放射システムを撃破したと発表。その様子を捉えた映像も公開した。
写真はロシア軍の多連装ロケットランチャー「TOS-1A」
ウクライナ保安庁のドローンオペレータは夜間戦闘の最中に、ロシア軍がウクライナ領内で運用する兵器の中でも屈指の威力をもつ「TOS-1A ソルンツェピョク」を発見し、これを攻撃。標的となったTOS-1Aは大爆発を起こし、炎に包まれた。
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軍事情報サイト「Militarnyi」によれば、ウクライナ保安庁はTelegramチャンネルを通じて、「盛大な花火が打ちあがり、乗員は兵器とともに木っ端みじんになった」とコメントしたそうだ。
画像:Telegram @SBUkr
公開された映像はドローンに搭載された赤外線カメラが捉えたもので、はじめはゆっくりとTOS-1Aに接近し、その後、標的に向かって突入する様子を一人称視点から窺がうことができる。
画像:Telegram @SBUkr
また、この攻撃の一部始終はさらに上空を飛行する別のドローンがカメラに収めており、攻撃ドローンがロシア軍のTOS-1Aのそばで自爆し、標的を巻き込んだ大爆発を引き起してこれを破壊する様子を捉えていた。
画像:Telegram @SBUkr
ウクライナ保安庁が公開した動画には、後日、同じ地点を日中に撮影したと思われる映像が含まれており、焼け焦げたTOS-1Aが残されているのがわかる。
画像:Telegram @SBUkr
ただし、今回のドローン攻撃を取材した『ニューズウィーク』誌は、映像の真偽について独自に検証することはできなかったとしている。とはいえ、標的となったロシア軍のTOS-1Aは使用不能になったとみて間違いないだろう。ところで、このTOS-1Aとは一体、どのような兵器なのだろうか?
画像:Telegram @SBUkr
ロシア軍が運用する重火炎放射システム「TOS-1A ソルンツェピョク」はサーモバリック爆薬を発射するための多連装ロケットランチャーだ。
画像:Wiki Commons By Kirill Borisenko, Own Work, CC BY-SA 4.0
TOS-1Aは歩兵部隊や戦車部隊を支援するために設計された兵器で、物陰などに潜む敵をサーモバリック弾頭によって一掃することができるため、これと対峙する部隊にとっては大きな脅威となる。
画像:Wiki Commons By Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0
『ニューズウィーク』誌によれば、TOS-1Aをはじめとするサーモバリック兵器は「2度の起爆により、従来の兵器よりも破壊力のある爆発を引き起こす」という。この種の爆薬は急激な圧力変化によって敵兵を殺傷することから、「真空爆弾」とも呼ばれている。
TOS-1Aは建物や塹壕といったターゲットに対して用いられることが多い。これは壁などで爆風が遮られてしまう場合でも、サーモバリック弾頭なら、建物内部の酸素を消費して敵にダメージを与えることができるためだ。
『ザ・ヒル』紙のエレン・ミッチェル記者いわく、TOS-1Aは戦車の上に設置されたランチャーからサーモバリック弾頭を発射するが、これが周囲の酸素を消費して「従来の爆弾よりも長続きする爆風」を引き起こすとのこと。
画像:Wiki Commons By Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0
また、英国防省もTOS-1Aに関する動画の中で、ロシア軍のサーモバリック兵器は旧ソ連時代のエンジニアが開発したものであり、歩兵に対して壊滅的な被害をもたらし得るとしている。
画像:Wiki Commons By Vitaly V. Kuzmin、CC BY-SA 4.0
2022年3月に『ザ・ヒル』紙が伝えた英国防省の動画によれば、この兵器は「インフラを破壊するほか、爆発に巻き込まれた人の内臓に著しいダメージや火傷を引き起し、死に至らしめる」とのこと。
画像:Wiki Commons By Vitaly V. Kuzmin、CC BY-SA 4.0
一方、『ニューズウィーク』誌によれば、ロシア国防省は自国製のTOS-1Aについて、「(敵に)パニックを引き起こす圧倒的な兵器」だと自画自賛しているらしい。そのため、ウクライナ軍は戦場でこの兵器を発見するたびに破壊してきた。
画像:Wiki Commons By Vitaly V. Kuzmin、CC BY-SA 4.0
オランダのオープンソースインテリジェンス大手「Oryx」によれば、ウクライナ軍はこれまでにロシア軍のTOS-1Aを少なくとも28両破壊したとされる。同社は映像や動画から、ロシア・ウクライナ両軍が被った損害を検証していることで知られる。
画像:Wiki Commons By Main Directorate of the State Emergency Service of Ukraine, CC BY 4.0