ドローンが捕らえたウクライナ最前線の壮絶な攻防
ドローンあるいは無人攻撃機の登場は、戦場の常識を根底から変えてしまっただけでなく、戦闘の様子をこれまでは見ることのできなかった視点から見ることを可能にした。今回撮影された動画も、ドローンなくしては捉えられなかった映像である。
最近、ウクライナ軍の戦車2両がロシア軍の防御線を越え、ロシア軍の占領するノヴォオレクシーウカの村に突入していく姿を、一機のドローンが上空から捉えた。ウクライナ軍の戦車は、その村で防御配置についていたロシアの軍勢に打撃を与えたのち、無事その場を離れることに成功した。
今回ドローンが捉えたのは、ウクライナ軍の戦車とロシア軍の歩兵隊の激しい攻防の様子である。ウクライナ国防軍の「Hostri Kartuzy」部隊がテレグラム上で公開した。
写真:Telegram @gostrikartuzy
同部隊によると、ウクライナ軍の戦車2両はロシア軍によって占領されているノヴォオレクシーウカの村に突入し、敵陣に向けて近距離から砲弾を浴びせ始めた。家屋であれ何であれ、砲手が狙えるものはすべて攻撃対象とされたという。
写真:Telegram @gostrikartuzy
ウクライナの軍事ニュースサイト『Militarnyi』は次のように伝えている。すなわち、戦車2両は数軒の家屋に砲弾を命中させると、煙幕弾を発射して村から退却を図ったのだが、ロシアのFPVドローン(一人称視点の映像を用いた遠隔操縦によって動くドローン)による執拗な反撃に遭ったという。
写真:Telegram @gostrikartuzy
『Militarnyi』によれば、ロシア軍ののFPVドローンは後方支持に回っていた方のウクライナ軍戦車を狙ったという。しかし、戦車隊員がすかさず煙幕を張ったことでドローンは攻撃目標を見失い、空中で待機するしかなかった。
写真:Telegram @gostrikartuzy /Edited By The Daily Digest
「Hostri Kartuzy」部隊の解説によると、ウクライナ軍の戦車隊員はこれまでの豊かな経験を活かして優位を築いたという。具体的には、電子戦システムを利用してドローンの戦車攻撃を封じたのだ。
写真:Telegram @gostrikartuzy
その隙に戦車は2発目の煙幕弾を発射、これで十分な遮蔽効果が得られ、戦車2両はロシア軍ドローンから致命的な一撃をお見舞いされる前にその場所を離れることができた。
写真:Telegram @gostrikartuzy /Edited By The Daily Digest
この一連の戦闘がどこで繰り広げられたかについては、その映像を公開した「Hosti Katuzy」部隊の投稿では触れられなかったが、オープン・ソース・インテリジェンスの手法によりテレグラムを調査するグループ「WarArchive」が突き止めた。同グループはジオロケーション、つまり発信元のIPアドレスなどを頼りにデバイスの地理的位置を特定し、戦場はノヴォオレクシーウカの村であるとしたのである。
写真:Telegram @gostrikartuzy
『ニューズウィーク』誌によると、ノヴォオレクシーウカはロシア軍が前進を続けているエリアにあたるという。ノヴォオレクシーウカの近くにはクラホヴェの街があり、クラホヴェの街からさらに64キロメートル進んだところにウクライナ東部の主要都市ポクロウシクがある。
ポクロウシクはウクライナ東部における重要な兵站拠点であり、ここを陥落させるべくロシア軍は何ヶ月にもわたり作戦を展開している。もしポクロウシクがロシア軍の手に落ちたとしたら、その影響はどのくらいの大きさになるだろう?
ポーランドに拠点を置く軍事コンサル企業「ロチャン・ミリタリー・コンサルタンシー」の取締役であるコンラッド・ムジカ氏は、ロシアがポクロウシクを攻略しても戦況は全体として大きく変わらないと見ている。「もし事態が深刻になるとしたら、それはウクライナ軍に人的資源の不足であったり、弾薬の不足であったり、指揮系統のミスであったり、その他さまざまな問題がより複合的に発生する場合に限られる」とのことだ。『キーウ・インディペンデント』紙が報じている。
The Daily Digest をフォローして世界のニュースをいつも手元に