ウクライナ軍、米国供与の歩兵戦闘車で遠距離からの攻撃に成功か
バイデン政権がウクライナに対し、アメリカらか供与された兵器をウクライナ国内だけではなく、ロシア領内への攻撃に使用することも許可した。
これまでも、ウクライナ軍はアメリカから供与された兵器を大いに活用している。奮戦の様子は動画に収められており、戦闘における装備の重要性が伝わってくる。
ウクライナ軍はこれまでも戦闘の様子を収めた動画をいくつもオンラインで公開してきた。今回、アメリカから供与されたM2ブラッドレー歩兵戦闘車がロシアの戦車T-80を破壊する動画が新たにアップロードされた。
画像:Facebook @ UALandForces
動画を撮影したのは第47独立機械化旅団のドローンで、戦車を破壊したM2ブラッドレーも同旅団の所属だった。動画には夜間攻撃の一部始終が写っている。
動画にはそれぞれの車両の位置関係を把握しやすいように編集が加えられており、M2ブラッドレーがミサイルを発射する瞬間もはっきりと捉えられている。
画像:Facebook @ UALandForces
『フォーブス』誌のデヴィッド・アックス記者によるとT-80戦車はおよそ1.5km離れた距離にあり、M2ブラッドレーはアウディイウカ北西のノボポクロウシケ村近郊に位置していたという。
画像:Facebook @ UALandForces
アックス記者によると、M2ブラッドレーが発射したのはTOW(トウ)と呼ばれる有線誘導式の対戦車ミサイルで、「43トンある3人乗りの戦車」であるT-80に風穴を開けたという。動画では、T-80の車体左側で爆発が起きたあと炎上している様子が確認できる。
画像:Wiki Commons By Anknown, US DoD Photo, Public Domain
ウクライナ国防省は公式X(旧ツイッター)アカウントで動画を投稿した際にM2ブラッドレーを「戦車キラー」と呼び、「ブラッドレー歩兵戦闘車がロシアのT-80戦車をTOW対戦車ミサイルで破壊」とも述べた。
実際、M2ブラッドレーは今回の戦争において最も有効に活用されている兵器のひとつだ。『キーウ・ポスト』紙の取材に答えたあるウクライナ軍高官は今回の動画について「ブラッドレーが現代戦において非常に有効であるということの新たな証左だ」と語っている。
『ニューズウィーク』誌によると、ウクライナに供与されたブラッドレーは非常に強力な25mm砲を備えており、榴弾も徹甲弾も発射可能なのだという。ただし、今回ロシアの戦車を破壊したのはミサイルであり、ブラッドレーの25mm砲が使われたわけではない。
アックス記者はこうも述べている:「これは戦車の撃破としては、ロシアによるウクライナ全面侵攻開始以来もっとも長距離で行われたものだ。とはいえ、ブラッドレーを強く支持してきた人々にとっては驚きではないだろう。同車は1980年代から米軍の戦闘車両として中心的な役割を担っており、象徴的な存在ですらあるからだ」
画像:Facebook @ UALandForces
アックス記者はさらに、10人乗りのM2ブラッドレーは今回の戦争で利用されている戦闘車両のなかでも最良の兵器かもしれないと指摘。これまでウクライナの第47独立機械化旅団では同車30両からなる大隊を3個運用しているとも述べた。
アックス記者は同車についてこう解説している:「M2ブラッドレーは一般的な戦車よりも数十トン軽い。それは主に装甲の薄さによるものだ。ロシアの戦車と近接戦闘になった場合、M2ブラッドレーは長くは持ちこたえられない」
アックス記者はさらにこう続ける:「長距離戦闘においては、ブラッドレーの精確な照準とTOWミサイルに分がある。特に夜間にはブラッドレーの優れた赤外線光学システムのおかげで、ブラッドレーの乗員は敵戦車よりも速く相手を視認できる」
第47独立機械化旅団が自身のテレグラムチャンネルに動画を投稿した際にも述べていることだが、今回TOWミサイルでT-80戦車を破壊した動画においても、M2ブラッドレーの強みである長射程と夜間視界の良さが十全に発揮されている。
画像:Facebook @ UALandForces
『ニューズウィーク』誌も『キーウ・ポスト』紙も、動画のT-80戦車が確実に破壊されたかどうか独自に確認することはできなかった。だが、『キーウ・ポスト』紙も指摘するように、投稿された動画の最後には交戦の結果破壊されたとおぼしき戦車の写真が載せられている。
画像:Facebook @ UALandForces
米国務省の発表によると、アメリカはこれまでウクライナに200両以上のM2ブラッドレーを供与している。オランダのOSINT組織「Oryx」は、5月11日までの時点でそのうち79両が視覚資料から破壊が確認されたとしている。