ウクライナ軍のシルスキー新総司令官、戦略の転換を表明
ロシア軍が物量に物を言わせて戦場で優位に立つ中、ウクライナ侵攻は新たな局面を迎えている。これに対し、最近就任したウクライナ軍の新総司令官は、ロシア軍のリソース消耗に焦点を当てる構えだ。
2月8日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はロシアとの戦いにおける新たなスタートを切る必要があるとして、ヴァレリー・ザルジニー前総司令官をはじめとする軍高官を解任した。
写真:Telegram @V_Zelenskiy_official
ザルジニー前総司令官の後任となったのはオレクサンドル・シルスキー上級大将だ。CNN放送によれば、同氏は2019年からウクライナ陸軍の司令官を務めてきたという。
就任早々に戦略転換を打ち出したシルスキー総司令官。2月9日にTelegram投稿を行い、新たな方針によって戦況を盛り返すと説明したのだ。
AP通信によれば、シルスキー総司令官は「新たな任務について議論中」だとし、「戦闘任務の遂行と訓練強化や部隊の立て直しのバランス」を強調したという。
同総司令官はまた、指導部が取り組むべき課題として、部隊におけるローテーションの速やかな改善や現代的なハイテク技術のさらなる活用を挙げている。
シルスキー総司令官が掲げたもう1つの方針は「無人システムや現代的な電子戦兵器の活用など、技術面での革新によって成果を拡大すること」だが、その詳細については明かされていない。
第2ドイツテレビによるインタビューの中で、シルスキー総司令官は作戦の軸足を防衛に移し、ロシア軍の人的資源や装備に損失を強いることを目指すと説明。
ウクライナのニュースサイト「RBCウクライナ」によれば、シルスキー総司令官は「わが軍は攻撃中心の作戦から防衛主体の作戦へと移行しました」と述べているそうだ。
同総司令官はさらに、「わが軍の作戦目標はドローンや電子戦システムにおける技術的優位を活かし、要塞や防衛線を維持しつつ敵を疲弊させ、最大限の損失を与えることです」とコメント。
また、侵略を続けるロシア軍との戦闘においても、ウクライナ兵の命を度外視することはできないと説明。そこで、テクノロジーの開発と戦場における応用がカギになるとした。
シルスキー総司令官によれば、ロボットの利用はすでに成果を挙げているようだ:遠隔操作モジュールによって兵員の命を救うことができています。戦争は新たな段階を迎えました」
しかし、前線の戦況はウクライナ不利に傾きつつある。シルスキー総司令官も、クピャンスクをはじめとする地域ではウクライナ軍陣地が毎日のよう攻撃を受け、状況が悪化し続けていることを認めている。
『ウクライナ・プラウダ』紙はシルスキー総司令官の「敵はこの攻撃作戦を2023年10月3日に開始し、4ヵ月間にわたって積極的な攻勢を続けています」というコメントを引用。ただし、この状況はウクライナ軍にとって悪いことばかりでもないようだ。
というのも、ロシア軍はクピャンスク方面での攻勢により、人員と装備の両面で甚大な被害を出しているためだ。シルスキー総司令官いわく:「最新の報告によれば、敵の損失、とりわけ戦死者数はわが軍の7~8倍に上っています」
この戦争は近い将来、終結するだろうかという問いに対し、シルスキー総司令官は「すべては支援のレベルとわが軍の効率的な作戦行動にかかっています」と回答。同盟国からの支援が滞っている現状に懸念を示した。