米国がウクライナに供与した「M2ブラッドレー歩兵戦闘車」、敵の装甲車両を撃破
現代の技術革新にともない、各地で起こっている紛争の様子が瞬時に伝えられるようになった。とりわけ2年半前に開始されたロシアによるウクライナ侵攻では、戦線から次々に届くリアルルな映像によって戦いの実態が明かされている。
最近では、ウクライナ軍の第47独立機械化旅団が公開した映像によって、米国が同国に供与したM2ブラッドレー歩兵戦闘車の威力が一目瞭然になった。
画像:Telegram @brygada4
M2ブラッドレー歩兵戦闘車を操る第47独立機械化旅団は、味方の偵察部隊が上空から発見したロシア軍の装甲兵員輸送車「BTR-82A」2両を立ちどころに撃破。
画像:Wiki Commons By Vitaly V. Kuzmin、CC BY-SA 4.0
軍事情報サイト「Army Technology」によれば、ロシア軍のBTR-82Aは8輪の装甲兵員輸送車であり、2009年にお目見え、2012年に実戦配備されたとされる。また、運用には3人の乗員が必用で、最大7人の戦闘員を運ぶことができるという。
画像:Wiki Commons By Vitaly V. Kuzmin、CC BY-SA 4.0
BTR-82Aはさらに、徹甲弾を発射することができる30ミリメートル機関砲と7.62ミリメートルPK機関銃を備えるほか、多層構造のケブラー繊維を用いた装甲によって爆発に耐える仕組みとなっている。
画像:Wiki Commons By Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0
しかし、ウクライナの軍事情報サイト「Militarnyi」によれば、M2ブラッドレーに乗り込んだウクライナ兵たちは絶好の砲撃ポイントを確保。ロシア軍のBTR-82Aが射程に入るのを待ち伏せして砲撃を行ったという。
画像:Telegram @brygada4
ロシア軍のBTR-82Aは樹林帯に沿って進み、開けた野原に足を踏み入れたが、ここには以前の戦闘で残されたと思しき砲弾の跡が辺り一面に残されていた。
画像:Telegram @brygada4
「Militarnyi」いわく:「ロシア兵たちはドローン対策の『鳥かご』に覆われた装甲車に乗っていたため、ウクライナ軍の砲手はまず、敵の歩兵がいる箇所めがけて砲撃を行った」
画像:Telegram @brygada4
その後、ウクライナ軍の砲手はBTR-82Aを狙い撃ちし始めた。うち1両はたちまち炎上したが、これはM2ブラッドレー歩兵戦闘車の機関砲「M242 ブッシュマスター」の砲弾が命中し、弾薬に引火したためだと見られる。
画像:Telegram @brygada4
映像には数人のロシア兵がダメージを受けたBTR-82Aから逃げ出す様子が映っている。なお、ロシア軍のBTR-82Aは2両とも立ち往生し、その後、撃破された模様だ。
画像:Telegram @brygada4
第47独立機械化旅団はTelegramアカウントを通じて、「この旅団に所属する第2機械化大隊のブラッドレーは、上空からの偵察によって発見された、歩兵を満載して進む2台のBTR-82を立ち往生させ、その性能をまたしても見せつけた」というコメントを発表。
画像:Telegram @brygada4
一方、軍事情報サイト「Defence Blog」のディラン・マリャソフ氏は、今回の戦闘によって「ロシアの軍事力に対するウクライナの防衛力を強化する上で、西側諸国の先進的な装備が重要な役割を果たしていること」が浮き彫りになったとした。
米国務省の発表によれば、米国は2024年5月24日までにM2ブラッドレー歩兵戦闘車300両あまりをウクライナに供与したという。また、『フォーブス』誌いわく、これらはすべて第47独立機械化旅団に配備されているとのこと。
『フォーブス』誌のデイヴィッド・アックス記者はさらに、「ウクライナでは耐久性の低い車両によって何千人もの犠牲者が出る中で、ブラッドレーとその乗員や兵士はきわめて生存率が高いことが実証されている」と述べ、M2ブラッドレー歩兵戦闘車こそが「この戦争でもっとも有効な装甲車両かもしれない」と指摘している。
ただし、オープンソースインテリジェンス大手「Oryx」の発表によれば、ウクライナ軍はこれまでにM2ブラッドレーを82両損失したとされる。しかも、この数字は検証可能な映像や画像をもとに算出されたものであり、実際の損害はもっと多いと考えられる。
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とはいえ、前出のマリャソフ氏は「頑丈な装甲と強力な武装で知られるブラッドレー戦闘車両はその有用性を発揮してきた。高度な照準システムと機動性によって、この車両は戦場における貴重な装備となっている」と評価している。