ウクライナ、ロシア軍の地対空ミサイル「トール」破壊に成功

ロシア軍の地対空ミサイルが破壊される
FPVドローンを用いた作戦
詳細は不明
続々と撃破されるSAM
ドローンオペレーターにとっては格好の標的
ウクライナ軍によるSAM撃破の例
興味深い映像
ウクライナ軍が運用する「スイッチブレード 600」
最初に供与されたのは「スイッチブレード 300」
ウクライナ向けドローンを発注
戦車や装甲車も破壊可能
威力を発揮する「スイッチブレード 600」
NATO側の呼称は「SA-15 ガンレット」
ドローンによる作戦の経緯
なんとか間に合った座標のやり取り
2台の「スイッチブレード」が攻撃
炎上するSAM「トール」
標的は撃破されたのか?
1980年代に開発された兵器
「トール」シリーズの性能
ウクライナのドローンへの脅威
ロシア軍の地対空ミサイルが破壊される

ウクライナ軍の第42独立機械化旅団に所属する兵士らが、FPVドローンを利用してロシア軍に攻撃を加えた。その結果、ロシアが誇る地対空ミサイルシステム(SAM)「トール」が破壊される様子を捉えた映像が、ウクライナの活動家セルヒー・ステルネンコ氏がSNSアプリ「Telegram」を通じて公開されている。

FPVドローンを用いた作戦

ステルネンコ氏が投稿した22秒間の動画には、ウクライナ軍の運用するFPVドローンが敵の地対空ミサイルシステム「トール」を攻撃する様子が映っていた。

画像:Telegram @ssternenko

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詳細は不明

ただし、この映像は不鮮明であり、ロシア軍の地対空ミサイル(SAM)が本当に破壊されたのかどうかは不明だ。また、標的となったSAMの型番について、ステルネンコ氏は詳細を伝えていない。

 

続々と撃破されるSAM

ウクライナの軍事情報サイト「Militarnyi」いわく:「ロシア軍が前線付近で積極的にSAM『トール』を運用する一方で、ウクライナ軍のFPVドローンは敵陣後方へますます深く侵入することができるようになっており、ロシア軍はSAMを相次いで失っている」

 

ドローンオペレーターにとっては格好の標的

同サイトによれば、「ウクライナ軍のドローンオペレーターや砲兵にとって、(ロシア軍の)SAM『トール』は格好の標的となっており、すでに65基あまりが撃破されている」とのこと。

画像:Telegram @ssternenko

ウクライナ軍によるSAM撃破の例

ウクライナ軍の第14無人航空機連隊は10月14日にも動画を投稿。ウクライナ保安庁と連携してロシア軍のSAMを攻撃する様子を公開した。

 

 

興味深い映像

同連隊が公開した映像は様々な点で興味深いものだった。というのも、米AeroVironment社製のドローン「スイッチブレード 600」を用いてロシア軍の高価なSAMに攻撃を加える、という作戦の一部始終が動画に収められていたからだ。

画像:Telegram @army_14reg

ウクライナ軍が運用する「スイッチブレード 600」

『Popular Mechanics』誌によれば、AeroVironment社製の徘徊型ドローン「スイッチブレード 600」は2022年11~12月ごろウクライナに供与され、ただちに使用が始まったとされている。

画像:Youtube @AeroVironmentInc

最初に供与されたのは「スイッチブレード 300」

米国のバイデン政権は、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発すると、ただちにウクライナに「スイッチブレード 300」を供与すると発表。このモデルはAeroVironment社製の小型対人ドローンだが、それでもかなり強力な兵器だ。

画像:Wiki Commons By U.S. Marine Corps/Lance Cpl. Tyler Forti, Public Domain

ウクライナ向けドローンを発注

2022年春、バイデン政権はより大型の「スイッチブレード 600」を供与するため、同型機を220万ドル分発注した。しかし、AeroVironment社の量産体制が整っていなかったため、実現には数ヵ月を要することとなった。

 

戦車や装甲車も破壊可能

米国がこのドローンをウクライナに供与したのにはわけがある。「スイッチブレード 600」は対戦車ミサイル「ジャベリン」と基本的に同じ弾頭を搭載しており、重装甲車両や戦車も破壊できるのだ。

威力を発揮する「スイッチブレード 600」

その威力のほどは、ウクライナ軍第14無人航空機連隊がウクライナ保安庁と連携して行ったSAM「トール」破壊作戦からも見てとれる。

画像:Telegram @army_14reg

NATO側の呼称は「SA-15 ガンレット」

同連隊はまず、高性能偵察ドローンを用いて敵のSAM「トール」を識別。この兵器をNATO側は「SA-15 ガントレット」という名称で呼んでいる。

ドローンによる作戦の経緯

同連隊はSAM「トール」が平地で稼働しているのを発見すると、「スイッチブレード 600」を運用するウクライナ保安庁のオペレーターたちにターゲットの座標を通達し、攻撃を要請した。『キーウ・ポスト』紙が伝えている。

画像:Telegram @army_14reg

なんとか間に合った座標のやり取り

このとき、ロシア軍のSAM「トール」は移動を始めていたが、座標のやり取りは何とか間に合ったようだ。そして、ウクライナ保安庁の「スイッチブレード 600」が攻撃を始める。

画像:Telegram @army_14reg

2台の「スイッチブレード」が攻撃

『キーウ・ポスト』紙によれば、ロシア軍のSAM「トール」が移動を始めた直後に、「1発目の精密誘導自爆兵器が(「トール」の)後部に命中した」という。これによって、「トール」は身動きが取れなくなり、2発目の「スイッチブレード」が突入するための隙が生まれた。

画像:Telegram @army_14reg

炎上するSAM「トール」

2発目の攻撃を受け、SAM「トール」を運用していたロシア兵たちは逃げ出し、機体が炎上するのを見守るしかなかった。ただし、およそ40秒間にわたるこの動画のみから、「トール」が撃破されたかどうか確かめるのは難しいだろう。

画像:Telegram @army_14reg

標的は撃破されたのか?

実際にこの装備が撃破あるいは修理不能な損傷を受けていれば、ロシア軍にとって大きな損害となる。『キーウ・ポスト』紙いわく、この地対空ミサイルシステムのコストは1基あたりおよそ2,500万ドルと見積もられるそうだ。

画像:Telegram @army_14reg

1980年代に開発された兵器

軍事情報サイト「Missile Threat 」によれば、ロシア軍のSAM「トール」は敵の航空機やヘリコプター、精密誘導兵器からの防空を目的として1980年代に開発されたものだという。そして、ソ連崩壊後も開発が続けられ、派生型が発表されたのは2007年のことだ。

画像:Telegram @army_14reg

「トール」シリーズの性能

同組織によれば、「『トール-M2』シリーズに装填することができるミサイルは9M331なら最大8発、9M338シリーズなら最大16発である。マッハ3.7以下の標的に対する射程距離16キロメートル」だが、アップグレードを施せば、射程距離は32キロメートルまで延長可能だとのこと。

 

 

 

ウクライナのドローンへの脅威

一方、「Militarnyi」によれば、 SAM「トール」は対ドローン機能を備えており、「ウクライナのドローンを脅威にさらす」可能性があるとのこと。また、今回の動画については、ドネツク州で行われた作戦だったとしている。

画像:Wiki Commons By Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0

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