供与から間もないF-16戦闘機が墜落:ウクライナ軍総司令官、調査結果公開を約束
2024年8月、ウクライナに供与された戦闘機F-16が墜落した。この件についてウクライナ政府は多くを明らかにしていないが、最近になって徐々に事情がわかりつつある。
9月5日、ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官はCNNのインタビューでこの件について問われ、いくつか詳細を語っている。
CNNのアマンプール記者はこう質問した:「ウクライナ側は戦闘機、特にF-16を以前からずっと要求していました。それは攻撃能力の確保だけでなく、巡航ミサイルなどを迎撃するためでもあるということでした。ところで、先日起きたF-16の墜落ですが、その原因について教えていただけますか?」
シルスキー総司令官はまず、ウクライナのF-16パイロットは同盟国による十分な訓練を受けていたことを指摘。さらに、その訓練の対象には空軍の中でも指折りのパイロットを選んだことも述べている。そのうえで、墜落の原因については現在調査中であるとした。
シルスキー総司令官による指摘は興味深いものだ。というのも、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の9月5日の報道によると、今回の墜落事故を受けて、米高官の間で「パイロットの訓練が足りておらず、F-16を供与からたった数週間で実戦に投入したのは拙速だったのではないかという疑いを呼んでいる」とされていたからだ。
シルスキー総司令官の指摘は訓練不足が原因ではないかという憶測に釘を刺すものだ。とはいえ、墜落の原因がパイロットによる人為的ミスかどうかは調査が終わってみないとなんとも言えない。
シルスキー総司令官はさらにこうも述べている:「国防省が編成した特別委員会が、墜落事故のすべてを明らかにすべく調査を行っています」また、事故当時、該当機体はロシアの巡航ミサイルを迎撃する任務に就いていたということも明かされた。
シルスキー総司令官によると、墜落したF-16のパイロット(死亡)は2発の巡航ミサイルの迎撃に成功し、墜落直前は3発目の迎撃中だったという。また、調査によって墜落時の状況が明らかになれば、ウクライナ政府はそれを公開する予定であるとも述べられた。
シルスキー総司令官はこう語っている:「調査の結果はすぐにすべての人に向けて公開されるでしょう。決して調査結果を隠すようなことはありません。それに、F-16の有効性はすでに結果として出ています」
アマンプール記者はF-16が友軍からの誤射で墜落した可能性について尋ねたが、シルスキー総司令官は「調査結果が出ていない以上、なにも答えられない」とした。F-16の墜落事故は供与からわずか数週間後の出来事だった。
この墜落事故はウクライナ側による誤射が原因だとする見解も広まっている。『ニューズウィーク』誌によるとこの主張の大元はウクライナのマリアンナ・ベツフラ議員で、同議員はF-16が地対空ミサイル「パトリオット」によって撃墜されたと述べているという。なお、この主張の裏付けはいまも取れていない。
8月29日、ウクライナ政府はF-16が墜落しパイロットが死亡したと発表した。今回が初の機体喪失となった。CBSニュースによると、墜落が報じられた当初はロシアによる対空攻撃で撃墜された可能性も示唆されていたという。
ウクライナ軍による当初の発表では、F-16はロシアによるミサイル攻撃を迎撃中に通信を断ったとされていた。声明では「後に、機体は墜落しパイロットは死亡したことが判明した」と述べられていた。
亡くなったパイロットの詳細について当初は伏せられていたが、後にウクライナ空軍所属のオレクシー・メシ中佐だったと明かされた。
ウクライナ西部航空管区は次のように発表している:「8月26日、ロシアによる大規模複合ミサイル攻撃および空爆の迎撃中に、オレクシー・メシ中佐は3発の巡航ミサイルと1機の攻撃ドローンを破壊した」CBSニュースが伝えている。
声明はこう続いている:「オレクシー・メシ中佐は多くのウクライナ国民をロシアのミサイルから守ったが、残念ながらその命を犠牲にしてしまった」また、『ニューズウィーク』誌によると、メシ中佐はコールサインの「ムーンフェイス」という呼び名でも知られており、F-16を操縦する訓練を受けた最初のウクライナ軍パイロットのひとりだった。