グアンタナモ湾収容キャンプ:悪名高いテロ容疑者収容所の20年

9・11後の世界
対テロ戦争
キューバにある米軍基地
アメリカによるキューバの保護国化を定めたプラット条項
留まる米海軍
法律上のグレーゾーン
テロとの戦い
リスクが高い場合のみ
現代の「グラグ(旧ソ連の強制収容所)」
収容者数780人
捕虜
ジュネーブ条約違反
ジョージ・W・ブッシュ
大統領執務室からの証言
「彼らの大多数は米兵の姿を見たことすらなかった」
国連、赤十字、アムネスティ・インターナショナル
変化の訪れ?
以前とあまり変わらない?
忘れ去られたグアンタナモ
バイデン大統領の公約
9・11後の世界

キューバ南東部に位置するグアンタナモ米軍基地は、2001年9月11日に起こったアメリカ同時多発テロ事件以降に米国がとった極端な行為の一例だ。人権侵害を行っているとして幾度となく告発されたこの施設の存在は、対テロ戦争がまだ終わっていないことを思い出させてくれるだろう。

対テロ戦争

2001年9月11日、世界は一変した。平和を謳歌していた90年代が終わりを告げ、対テロ戦争という新たな時代が幕を開けたのだ。

キューバにある米軍基地

対テロ戦争の汚点の一つがキューバの米海軍基地にあるグアンタナモ湾収容キャンプだ。

アメリカによるキューバの保護国化を定めたプラット条項

グアンタナモ米軍基地は1903年に開設されたが、これは米西戦争後のプラット条項に基づき、キューバから撤退する交換条件として、米国がキューバに突き付けた要求である。

 

留まる米海軍

プラット条項はフランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領によって1934年に廃止された。ところが、米海軍は依然としてグアンタナモ湾に留まっており、キューバ政府はたびたび抗議を行っている。

法律上のグレーゾーン

公式にはキューバ領であるにもかかわらず米国が支配しているグアンタナモ湾は法律上のグレーゾーンになっており、これに目をつけた当時のドナルド・ラムズフェルド国防長官が収容キャンプを設立した。そこで何が行われていようと、米国法の適用外だと言い逃れできるというわけだ。

 

テロとの戦い

ナショナル・パブリック・ラジオが伝えたところによると、ラムズフェルド国防長官は記者会見で「テロリストによる攻撃を未然に防ぐ必要がある限り、施設は引き続き必要である」と述べたという。

リスクが高い場合のみ

国防長官いわく、この施設に収容され、尋問や戦争犯罪による起訴が行われるのは非常にリスクの高いケースのみだという。

現代の「グラグ(旧ソ連の強制収容所)」

アムネスティ・インターナショナルはグアンタナモ湾収容キャンプを「現代のグラグ」と呼んでいる。というのも、この収容キャンプでは米国憲法の定める人権が保障されず、収容者の拘禁や拷問が行われているためだ。

収容者数780人

『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、2002年以降にグアンタナモ湾収容キャンプに送られた収容者数は少なくとも780人に上るという。 また、2022年1月現在の収容者は39人、うち10人は戦争犯罪で裁判を待っており、すでに有罪判決を受けた収容者も2人いる。

捕虜

さらに、戦時国際法に基づいて拘留されている収容者も27人いる。彼らは捕虜となった敵軍の戦闘員であり、起訴されているわけではない。

ジュネーブ条約違反

『ニュー・リパブリック』誌が2014年の記事で指摘したのは、グアンタナモ湾収容キャンプは、処罰が伴わない限り敵の戦闘員を戦場で拘束してもよいというジュネーブ条約を拡大解釈しているということだ。

ジョージ・W・ブッシュ

この収容キャンプは、対テロ戦争を口実に当時のジョージ・W・ブッシュ大統領が推進した極端な政策の象徴として記憶されることになった。

大統領執務室からの証言

コリン・パウエル元国務長官(写真)の補佐官だったローレンス・ウィルカーソン大佐が2010年に暴露したところによると、ブッシュ元大統領とラムズフェルド元国務長官はグアンタナモ湾収容キャンプに送られた収容者の大部分が無実だということを知っていたという。

「彼らの大多数は米兵の姿を見たことすらなかった」

『アトランティック』誌によれば、ウィルカーソンは「グアンタナモに送られた最初の742人の収容者の大部分は、身柄を拘束され捕虜になるまで米兵の姿を見たことすらなかった」と述べた。

 

国連、赤十字、アムネスティ・インターナショナル

グアンタナモ湾収容キャンプで拷問が行われているという報告は何年も前から行われており、国連や赤十字、アムネスティ・インターナショナルといった国際機関が施設での虐待行為を非難している。

変化の訪れ?

続いて大統領の座に就いたバラク・オバマ元大統領は、グアンタナモ湾収容キャンプの閉鎖と収容者の解放(あるいは移送)を約束したが、これは失敗に終わった。議会の支持を得られず、法案をほとんど通すことができなかったのだ。オバマ大統領が任期を終えても、まだ41人の収容者が残ることとなった。

以前とあまり変わらない?

オバマ政権下でグアンタナモ湾収容キャンプには軍法会議が導入され、そこで行われる裁判の様子は動画に記録され、わずか40秒遅れでストリーミングされることとなった。これによって透明性は高まったものの、オバマ大統領は公約を果たせなかったと感じる人も多かった。

忘れ去られたグアンタナモ

オバマ大統領時代にグアンタナモ湾収容キャンプへの関心は徐々に薄れ、続くトランプ政権下では施設の実情に変化はほとんどなかった。どうやら、世界は対テロ戦争を忘れてしまったようだ。

バイデン大統領の公約

ジョー・バイデン大統領の公約の一つは、彼が政権にあるうちにグアンタナモ湾収容キャンプを閉鎖することだった。ところが、『ニューヨーク・タイムズ』紙が2021年12月に報じたところによると、施設内には新たに軍法会議室が設けられ、その内部については非公開になっているという。

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