海水温上昇で甚大な被害を受ける世界最大のサンゴ礁、グレートバリアリーフ
かねて議論されているように、地球は気候変動の危機にさらされている。すぐにでも対策に乗り出さなければ手遅れになってしまうさまざまな問題について指摘が行われている。
まさに今この時にも、地球の贈り物というべき素晴らしい宝が消え去りつつある。その宝とは、グレートバリアリーフだ。
オーストラリア大陸北東岸に広がる世界最大のサンゴ礁地帯、グレートバリアリーフは、ユネスコの世界自然遺産に1981年に登録されている。しかし、アメリカ国立科学財団によると、現在その地帯の気温が過去400年間で最も高くなっており、サンゴ礁が死滅の危機に瀕しているという。
「このままいけば、この地球における自然の神秘(すなわちグレートバリアリーフ)の生態学的機能と特筆すべき普遍的価値が脅かされる」と、アメリカ国立科学財団の研究者たちは『ネイチャー』誌掲載の論文のなかで主張している。
サンゴは海水温の上昇などによって共生する藻類を失ったあとも(サンゴの白化と呼ばれる現象)、しばらく生き延びることができ、海水温が下がったところで藻類との共生を再開して白化から回復することができる。しかし、気候変動による海水温の上昇はその回復を許さないほどになっており、専門家のなかでも悲観的な人々はグレートバリアリーフに危機が迫っていると論じている。
ラジオ・ニュージーランド(ニュージーランドの国営ラジオ)の報道によると、オーストラリアを代表する気候変動科学者がある会議で、グレートバリアリーフが「致命的な一撃」をくらってしまったと告げたという。
その科学者とは、メルボルン大学のジョエル・ゲルギスである。彼はニュージーランドのオークランドで開催された「気候変動とビジネスの会議」で、グレートバリアリーフが現在置かれている危機的な状況について講演した。
ジョエル・ゲルギスによると、2024年4月、グレートバリアリーフの80パーセントが白化していたという。サンゴの被害がこれほどひどく、かつ広範囲に及ぶというのはこれまでなかったことだ。
「科学者たちの考えるところでは、今年発生した広範囲におよぶサンゴ礁の白化は、地球最大の“生きた”構造物にとって致命的な一撃である可能性が高い」と、ジョエル・ゲルギスはオークランドの会議で述べた。
NASAによると、世界のサンゴ礁は、現在知られている海洋生物の4分の1以上の生命を支えているという。また、嵐のときには海岸線を守る役目を果たし、漁業や観光を通じて地域経済に大きな恩恵をもたらしている。
ただ、NASAが指摘するところでは、一部のサンゴは高い海水温にも適応できることがわかっており、まだ希望は残っているという。しかし、気候変動によりサンゴ礁が急激に減少していることに変わりはなく、海水温の上昇に歯止めをかけることはやはり重要だ。
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