ケニアで相次ぐ大規模な水害:原因はエルニーニョ現象?
およそ6週間にわたって降り続く長雨により、ケニア各地では甚大な被害が相次いでいる。
CBS放送によれば、ケニアでは相次ぐ洪水により、すでに累計169人が命を落としたという。なかでも、首都ナイロビから60キロメートル離れたマイ・マヒウ町で4月29日に発生した洪水では、一度に多数の犠牲者が出た模様だ。
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CNN放送によれば、マイ・マヒウ町があるナクル州のスーザン・キヒカ知事はこの洪水で71人の死亡が確認されたほか、110人が入院中だと発表。
キヒカ知事がCNN放送に語ったところによれば、救助隊は生存者の救出と犠牲者の遺体発見を急ぐため、一日中、泥や瓦礫を取り除く作業に当たったとのこと。
ケニアは現在、雨季を迎えており、雨が降ること自体は不思議ではない。しかし、今年の降水量は例年を遥かに上回るものとなっており、これについて専門家はエルニーニョ現象が原因ではないかとしている。
国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)のジャガン・チャパガイン事務局長はX投稿の中で、「ケニアは2024年3月から5月にかけて続く長雨にエルニーニョ現象が重なり、深刻な洪水の危機に晒されています」と発表。
チャパガイン事務局長はさらに、「2023年11月以来、エルニーニョ現象によって河川の氾濫や大規模な洪水が相次いでおり、犠牲者数が100人を突破するなど、被害が広がりを見せています」とした。
また、ケニアを含む東アフリカ沿岸部では、エルニーニョ現象のインド洋版ともいえる「正のインド洋ダイポール現象」が発生しており、今回の長雨の一因となっている。
CNN放送によれば、「正のインド洋ダイポール現象」をケニアにおける水害の一因として挙げたのは、インペリアル・カレッジ・ロンドンのグランサム研究所で研究員を務めるジョイス・キムタイ氏だという。
キムタイ氏はさらに、気候変動が長雨に関与している可能性について「非常に高い」としている。
ケニア政府のアイザック・マイグア・ムワウラ報道官はメディアに対し、3月に大雨が始まって以来、数千人のケニア国民が避難を余儀なくされていると発言。
また、首都ナイロビでも深刻な洪水が発生しており、ある専門家は不適切な都市開発が水害の一因だと指摘している。
都市計画・環境学を専門とするアルフレッド・オメニャ教授はBBC放送に対し、「自然を封じ込めることはできません。それではうまく行かないのです」と解説。
オメニャ教授いわく、ナイロビの大部分は街を横切るナイロビ川の氾濫原の上に建設されており、市内には複数の小川が流れているそうだ。
また、同教授によれば、ナイロビ市には雨水を適切に排水するシステムが欠けているという。
しかも、市内の家庭のうち下水管が通っているのは50%に過ぎず、貧しい地域では側溝のような下水道が利用されているため、大雨が降ると汚水がそのまま街中にあふれ出してしまうという問題もある。
ケニアはここ数年、厳しい干ばつに見舞われており、土壌がカチカチに乾燥していた。専門家らはこれによって大雨が地面に吸収されず、大規模な洪水につながってしまったのではないかと見ている。
前出のキムタイ氏いわく:「ある異常気象がもたらした被害から立ち直れずにいると、次に起こる異常気象に対して脆弱になってしまいます」実際、数年前は水不足に悩まされていたケニアだが、今では水害に打ちのめされてしまっているのだ。
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