サッカースタジアム暴動で犠牲者125名:インドネシア
インドネシアで32人の子供を含む125人が死亡、300人以上が負傷するという前例のない悲劇が発生。原因はジャワ島カンジュルハン・スタジアムで行われていた、アレマFC対ペルセバヤ・スラバヤのサッカーの試合だ。
アレマFCが2-3で試合に敗れると、激昂した3,000人あまりのサポーターがフィールドに突入。敗北の責任を問うため、選手に襲い掛かったのだ。
SNSで拡散した動画には、襲い掛かるサポーターから逃げるため慌ててピッチを後にする選手と審判の姿が捉えられている。
地元メディア「Suryamalang」によれば、フィールドに侵入した多数のサポーターが暴徒化したため警察が介入して催涙ガスを発射したところ、群衆雪崩が発生。多数の死傷者につながることとなってしまった。
同メディアの報道によれば、東ジャワ州警察のニコ・アフィンタ総監はスタジアムで警察がとった措置について「群衆の注意を逸らし、混乱を避けるための予防的なものだった」と述べているという。
ところが、催涙ガスの発射によって群衆雪崩が引き起こされ、被害が拡大するという本末転倒な結果になってしまった。
また、ニコ・アフィンタ総監は、犠牲者のほとんどは逃げ惑う数千人の人波にもまれたことが原因で死亡したと発表。中にはその場で窒息死してしまったケースもあるという。
インドネシアのモハンマド・マフフード・マフモディン安全保障担当大臣もInstagram上で、犠牲者の死因は「押されて圧迫されたり、踏みつけられたり、あるいは窒息してしまったこと」が大半を占め、暴動そのものによるものではないと述べている。
死亡者数および負傷者数は、東ジャワ州のエミール・ダルダク副知事が地元放送局Kompas TVを通じて公式発表したものだ。
一方、インドネシアサッカー協会(PSSI)は「サポーターの行動」に遺憾の意を表明。真相を明らかにするため、スタジアムのあるマラン市に調査チームを派遣したという。また、PSSIは「インドネシアのサッカー界を貶めた」のはサポーターの方だとして、警察の対応を擁護している。
PSSIは、インドネシアのプロリーグ「リーガ1」について1週間の活動停止処分、アレマFCについては今シーズンの残り試合への出場禁止処分を下したという声明を発表。
また、モハンマド・マフフード・マフモディン安全保障担当大臣によれば、捜査の過程で、収容人数3万8,000人のスタジアムに4万2,000人以上のサポーターが詰めかけていた可能性が浮上しているという。
さらに、警察の対応や避難ガイドラインの不備が、救急医療チームの活動を妨げたのではないか、という議論もなされている。
また、国際サッカー連盟(FIFA)のセキュリティ規定によれば「群衆をコントロールするためにガスを用いる」のは禁止されており、アムネスティ・インターナショナルをはじめとする国際団体から非難の声が挙がっている。
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、記者会見の中で哀悼の意を表すとともに、「サッカーの試合の開催に関する安全対策を徹底的に見直す」と述べた。
今回のケースは、最近50年間で発生したサッカー関連の死亡事件として最悪のものとなってしまった。犠牲者数で今回の事件を上回るのは、1964年にリマで開催されたペルー代表対アルゼンチン代表の試合のみで、このときの死亡者数は384人に上っている。