太陽系で3番目に大きい天王星:ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えためくるめく画像
2021年に宇宙へと打ち上げられらた最新望遠鏡、「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡を用いて、太陽系の惑星の中で3番目の大きさを誇る巨大氷惑星(アイスジャイアント)、天王星の撮影が行われた。天王星に関する知見は今まさに覆されつつあるのだ。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が打ち上げられたのは2021年。稼働開始からそれほど時間が経っていないが、すでに天文学の進展に大きく貢献している。なかでも、天王星に関する新発見は特筆に値するだろう。
天王星は太陽系の第7惑星だ。宇宙探査機ボイジャー2号による撮影が行われて以来、くすんだ水色をした惑星だと考えられてきた。しかし、2024年1月にジェイムズ・ウェッブ望遠鏡から送られてきた画像によって、そのような常識は覆されることとなる。
とはいえ、ボイジャー2号も当時としては重要な発見を成し遂げている。『スミソニアン』誌いわく、ボイジャー2号は天王星とその衛星について、興味深い知見をもたらしたのだ。たとえば、28個ある衛星のうち、少なくとも5つには海が隠されていると予測することができたのは同機のおかげだ。
画像:NASA/JPL-Caltech
さらに、ボイジャー2号は天王星に接近して史上初となる撮影を行った。
NASAによれば、ボイジャー2号は天王星から8万1,600キロメートルの地点まで接近し、それまで知られていなかった衛星を10個、リング2本を発見したほか、強力な磁場があることを突き止めたという。
さらに、天王星の自転周期が17時間14分であることを突き止めたのもボイジャー2号だ。また、この惑星では赤道付近と南北極の気温があまり変わらないという、奇妙な現象も判明した。
画像:Wiki Commons By NASA
しかし、ボイジャー2号がもたらした画像では、海王星のほうが天王星よりもはるかに鮮やかな青色を呈しており、研究者たちは戸惑ったという。
画像:NASA/JPL
『スミソニアン』誌いわく、天王星と海王星は多くの点でそっくりだ。どちらもガスと氷でできており、半径や質量も近いのだ。
また、天王星と海王星はどちらも青い色をしているが、海王星の方が色鮮やかに見えるのは、メタンの濃度の違いによるものだと考えられている。
2022年に発表された研究成果によれば、天王星では大気中のメタンがもやを形成し、色調をくすませてしまうのだという。実際、ボイジャー2号が捉えた画像はそのような色合いだったため、人類は天王星について、海王星と比べると見劣りがするという印象を抱き続けてきたのだ。
画像:Wiki Commons ESA/Hubble & NASA、L. Lam、CC BY 4.0
しかし、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が新たに捉えた天王星の姿は以前の画像に比べてはるかに色鮮やかだったため、人々の注目を集めることとなった。
画像:NASA、ESA、CSA、STScI
ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡は2023年3月に天王星を撮影。翌月にはNASAがプレスリリースを発表し、美しいリングと大気が輝く天王星の画像を公開した。
画像:NASA、ESA、CSA、STScI
さらに、2023年12月には同年9月に撮影された別の画像が公表された。こちらは長時間露光と短時間露光を組み合わせた画像であり、多数のリングと衛星に囲まれている様子がはっきりと見て取れる。
画像:NASA、ESA、CSA、STScI
ノッティンガム大学で天文学の教鞭を執るマイケル・メリフィールド教授は『ニュー・サイエンティスト』誌に対し、「従来は天王星に接近したボイジャー2号によってしか観測できなかった詳細を、このように見ることができるのは素晴らしい成果です」とコメント。
画像:NASA、ESA、CSA、STScI
同教授はさらに、「彼方へ飛び去ってしまったボイジャー2号のときとは異なり、(ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡を利用すれば)天王星を長期的に観測し、奇妙なほど傾いた自転軸が気象パターンに及ぼす影響を解明することもできるでしょう」とした。実際、天王星に関するデータ収集は現在も続けらている。
しかし、最新の撮影技術をもってしても捉えることができなかったものがある。天王星のもっとも外側にある2本のリングだ。『スミソニアン』誌によれば、研究者らはこれらのリングを画像に収められるのではないかと期待していたそうだ。とはいえ、衛星についてはその大部分がしっかりと写っている。
画像:NASA、ESA、CSA、STScI