スロバキア首相が銃撃され、一命を取り留める
中欧スロバキアのロベルト・フィツォ首相(59)が同国中部の町ハンドロバで銃撃を受けた。至近距離から数発の銃弾を受けて重傷を負ったものの、生命の危険は脱したとされている。
BBCによれば、スロヴァキアの環境大臣兼副首相のトマス・タラバ氏は取材に対し、フィツォ首相の手術は「順調」に行われ、「最終的には一命を取り留めることができるだろう」と語った。
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欧州各国を始め世界に衝撃を与えたこの事件は、首都ブラチスラバから約200キロ離れたハンドロバ市で起きた。同市では閣僚会議が開催され、終了後にフィツォ首相が市民にあいさつをしていたのだ。
現地紙『デンニクN』によれば、フィツォ首相に会おうと集まっていた市民の一人に「ロボ(首相の愛称)、もっと近くに来てください」と声をかけられた首相がそちらに歩み寄ったところ、銃弾5発を浴びせられたという。
BBCが伝えたタラバ副首相の言葉によれば、首相に向けて放たれた銃撃のうち1発は腹部を貫通し、2発目が関節を直撃したという。首相は瀕死に近い状態で病院に緊急搬送され、数時間にわたる手術を受けた。
事件後、スロバキア政府は首相が「命にかかわる状態」にあり、その後24時間から48時間で容体がはっきりするだろうと声明を発表。
ロベルト・カリナク国防相は事件を受けて会見を行い、フィツォ首相は「きわめて深刻」な容態にあり、数時間にわたる手術を受け「命がけで闘っている」と語った。
一方、地元メディアの報道によれば銃撃を行った人物はその場で取り押さえられたという。捕まったのはユライ・チントゥラという71歳の男性で、過去に警備員として働き武器所持免許をもっていたという。
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スロバキア首相の暗殺未遂事件については国内外から大きな反応が起こっている。とりわけ非難の声を挙げているのは6月に大統領就任予定のペーター・ペレグリーニ氏だ。同氏は「政治における憎悪は恐るべき結果をもたらしかねない」としている。
スロバキア政府は今年、公共放送局RTVSの廃止を提案、今月15日にはその法案が議会に通される予定だったとBBCが伝えている。
公共放送に対する政府からの介入に対しては国民から不満の声が挙がり、ここ数週間、何千人もの人々が抗議デモを行っていた。野党主導とされるこうした活動は、首相銃撃事件の報を受けていったん中止された。
タラバ副首相はBBCのインタビューを通じ、銃撃事件の原因はスロバキアの野党による「でっちあげ」にあると述べた。
また、タラバ副首相はBBCの『ワールド・トゥナイト』のインタビューに対し、「首相は過去にも複数回にわたり、こうした事態に対する懸念を表明していた」と述べた。さらに「『でっちあげ』を元に政府が責められれば市民から過剰反応が起こり、今回のような事件につながることがある」とした。
ロベルト・フィツォ氏は2023年9月の選挙勝利を受けて3度目の首相登板を果たし、所属する与党「スメル」、中道左派の「声」、右派「国民党」の3党連立政権を樹立。
就任後、フィツォ首相はウクライナへの軍事支援停止を決定したほか、今年4月には公共放送RTVSの廃止計画の成立を強行したことから国民の間で批判の声があがっていた。BBCが伝えている。
現地メディアによればフィツォ首相は生命の危機は脱したという。一方、事件の背景はいまだ不明だが、スロバキア内相は政治的動機に基づく犯行の可能性もあるとした。
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