スーダン内乱:二人の将軍による権力闘争

数千人の避難民
数百人が死亡、数千人が負傷
スーダン国軍とRSFの対立
2021年のクーデター
RSFリーダー
味方からライバルへ
支配権をめぐる争い
権力闘争の舞台に
ジャンジャウィードの指導者
デモ隊の虐殺に関与?
ブルハーン将軍も……
アフリカ屈指のクーデター大国
民政移管は道半ば
両者とも手を引くつもりはなさそう?
RSF:充実した装備
ロシアの傭兵集団「ワグネル」が支援
スーダン情勢に関する国連会議
バイデン米大統領の声明
資源に対する国際的な関心
紛争拡大のおそれ
地域一帯が不安定化するおそれ
数千人の避難民

スーダンでは国軍と準軍事組織が衝突、数百人が死亡し数千人が避難する事態となっている。これについて国連は、地域不安定化につながる可能性があると懸念を示した。

数百人が死亡、数千人が負傷

世界保健機関(WHO)によれば、すでに軍事衝突による死者は少なくとも459人、負傷者は4,000人あまりに達した模様。また、CNN放送は首都ハルツームでも一部地域で戦闘が行われていると報じている。

 

スーダン国軍とRSFの対立
2023年4月中旬に勃発したこの軍事衝突は、スーダンの正規軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の対立に端を発するものだ。
2021年のクーデター

スーダンでは、長年にわたって独裁的な統治を行ってきたオマル・アル=バシール元大統領が2019年に失脚。しかし、2021年には再びクーデターが発生し、軍部が政権を奪取、クーデターを指揮したアブドゥルファッターハ・アブドッラフマーン・ブルハーン将軍が実質的な首長となっていた。

RSFリーダー
一方、 RSFを率いるのは、それまで国軍と協力し軍部の権力維持を図っていたモハメド・ハムダン・ダガロ将軍(写真)
味方からライバルへ

両者はつい最近まで同盟関係にあったが、民政移管の一環としてRSFを国軍に統合する交渉の過程で対立するに至ったという。

支配権をめぐる争い
情報筋がCNN放送に語ったところによれば、両将軍ともに新たな体制のもとで相手の指揮下に入ることを望まなかったことから、「支配権をめぐる生存競争」につながってしまったようだ。
権力闘争の舞台に
また、アナリストたちもこの紛争がダガロ将軍とブルハーン将軍(写真)の間の権力闘争であるという見方で概ね一致している。
ジャンジャウィードの指導者

ダガロ将軍は2000年代初めにRSF内で主導権を握ったとされる。当時、同将軍はダルフール紛争で人権侵害を繰り返していた民兵組織「ジャンジャウィード」の指導者だった。

デモ隊の虐殺に関与?
さらに、同将軍は2019年に発生したデモ参加者120人の虐殺など、民主派に対する暴力的な弾圧を指揮したとして非難を浴びている。
ブルハーン将軍も……

一方のブルハーン将軍もまた、軍部のトップとして実質的にスーダンを支配しており、民主化運動の弾圧に関わったとして人権団体から批判されている。

アフリカ屈指のクーデター大国
しかし、アフリカ諸国の中でも最多のクーデターを経験してきたスーダンにとって、このような暴力的な政変はお馴染みの出来事に過ぎない。1956年に英国から独立して以来、1958年、1969年、1985年、1989年、2019年、2021年にクーデターが発生しているのだ。
民政移管は道半ば

スーダンでは暫定政府を牛耳る軍部が民政移管を拒んでおり、専門家たちによればこの傾向がすぐに変わる兆しはないという。

両者とも手を引くつもりはなさそう?
歴史学者のクリストファー・タウンゼル教授はウェブサイト「The Conversation」に対し、2人の有力者はどちらも自由に動かせる軍隊を持っており、権力を巡る争いから手を引くつもりはないようだ」とコメント。
RSF:充実した装備

公式・非公式の統計によれば、スーダンの正規軍はおよそ21~22万人の兵力を擁するとされている。一方、RSFの兵力はおよそ7万人ほどであると見積もられているが、訓練や装備はより充実しているという。

 

ロシアの傭兵集団「ワグネル」が支援
さらに、スーダン当局および地元の外交筋がCNNに語ったところによれば、ロシアの傭兵集団「ワグネル」はRSFにミサイルを供与することで、紛争への関与を行っているとされる。
スーダン情勢に関する国連会議

各国がスーダン情勢に懸念を表明する中、国連安全保障理事会は5月8日にこの問題に関する初会合を開いた。

バイデン米大統領の声明

ジョー・バイデン米大統領は「スーダンでは暴力の応酬によって、無辜の市民たちがすでに数百人も犠牲になっている。これは人の道に背くものであり、終結させなくてはならない」と発言。

 

資源に対する国際的な関心
しかし、国際社会の関心は市民の安全だけではない。金鉱山があることで知られるスーダンは資源が豊富であるばかりか、地政学的にも重要な場所に位置しているのだ。
紛争拡大のおそれ
スーダンでは2011年に南スーダンが独立。以来、民族紛争が相次ぐなど予断を許さない状況が続いている。そのため、スーダンにおける今回の紛争が、さらに飛び火することを懸念する専門家も少なくない。
地域一帯が不安定化するおそれ

前出のタウンゼル教授はウェブサイト「The Conversation」上で、「この紛争を取り巻く利害関係は、長い目で見るとブルハーン将軍やダガロ将軍、あるいはスーダンを超えて拡大してしまう可能性がある。つまり、地域一帯の安定までもが脅かされてしまうかもしれないのだ」と解説している。

 

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