ゼレンスキー大統領、ロシアによる暗殺計画について語る
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領を対象にした暗殺計画を何度も実行に移しているのだという。ゼレンスキー大統領本人が英タブロイド紙『ザ・サン』のジェローム・スターキー記者によるインタビューで語っている。
ゼレンスキー大統領によると、暗殺計画が実行に移された正確な回数は不明だが、侵攻開始以来少なくとも5、6回は確認できているという。
自らに対する暗殺計画について語る間もゼレンスキー大統領は動じる様子がなく、暗殺計画も新型コロナウィルスのようなもので、その脅威もだんだん薄れてきたと冗談混じりに語る一幕すらあった。
ゼレンスキー大統領はこう語っている:「最初の試みはなかなか興味深いものでした。それ以降はまあ、新型コロナウィルスと同じですね」NBCニュースが伝えている。
ゼレンスキー大統領は今回の戦争に否応なく巻き込まれてしまった立場だが、暗殺の危険についてこう語っている:「最初はどう対処すればいいかわからず、恐ろしく思えます。ですが、そのうちにただの諜報ルーチンに過ぎなくなります。暗殺部隊がまたウクライナに侵入したようだ、という情報に過ぎません」
ゼレンスキー大統領は暗殺計画についてそれ以上の詳細は明かさなかった。だが、『ザ・サン』紙によると、侵攻初日にはロシアの特殊部隊がウクライナの首都キーウに空挺降下してゼレンスキー大統領の暗殺を試みたのだという。
ゼレンスキー大統領の護衛は大統領の執務室を封鎖。そして大混乱の中、ゼレンスキー大統領を首都外に脱出させようとしたらしい。ゼレンスキー大統領の有名な言葉、「車はいらない、弾をよこせ」が飛び出たのもこの時だった。
ロシアによる暗殺計画の詳細な回数は証拠も乏しく不明だが、ゼレンスキー大統領は昨年3月時点ですでに10回の暗殺未遂をくぐりぬけているという話もある。2022年3月9日に大統領補佐官のミハイロ・ポドリャークが『ウクライナ・プラウダ』紙に語っている。
侵攻開始から2年が経とうとしているが、ゼレンスキー大統領の考えではプーチン大統領はいまだに暗殺を諦めていないのだという。『ザ・サン』紙のインタビューにおいて、ゼレンスキー大統領はロシアによる最新の工作活動「マイダン3」について語っている。
ゼレンスキー大統領はこう語っている:「作戦の名前はマイダン3です。目的はウクライナの大統領をすげ替えることで、私の暗殺は必ずしも主眼ではありませんが、目的のためには手段を選ばないでしょう」ただし、ゼレンスキー大統領は、ロシアはゼレンスキー大統領の暗殺を諦めて失脚へと目標を変更した可能性もあると示唆している。
ロシアの「マイダン3」作戦についてゼレンスキー大統領が語るのはこれが最初ではない。11月16日に行われた「ブルームバーグ」によるインタビューの際にも、ゼレンスキー大統領は同作戦の存在やその内容について語っている。
ゼレンスキー大統領によると、ロシアはウクライナ社会に分断と混乱をもたらし内乱を惹起することで、ゼレンスキー大統領の失脚を目論んでいるのだという。これはウクライナの「パートナー」からもたらされた情報に基づくとのことだ。
だが、暗殺や不和の醸成という点にかけてはウクライナの方が数枚上手のようだ。『ザ・サン』紙のインタビューではこの点についても質問されている。
ロシア国内で起きている、政府に近しい人物の暗殺にウクライナが関与しているのかと聞かれたゼレンスキー大統領はコメントを控えるとし、次のように述べた:「ウクライナの諜報機関やシークレットサービスなどが実行している特別作戦についてはここで話すことはできません」
ゼレンスキー大統領はこう続けている:「ここで話すことができない出来事はいくつかあります。それはロシア国内だけでなく、一時的に占領されている領土で起きた出来事も含まれます」これは最近相次いだ暗殺への関与の示唆ともとれる発言だ。
また、スターキー記者からもしその機会があればプーチン大統領の暗殺も実行するのかと尋ねられたゼレンスキー大統領はこう答えた:「これは戦争です。ウクライナには自衛する正当な権利があります」
このインタビューが公表されると、ロシア政府もすぐに反応を示した。ロシア大統領府報道官のドミトリー・ペスコフは「ウクライナからは何度もプーチン大統領の生命に関する脅しを受け取っている」と述べたという。『ニューズウィーク』誌が報じている。
ペスコフ報道官はこう続けた:「我々はこういった動きは察知しており、敵の作戦が成功する見込みはまったくない。今回の特別軍事作戦の目標は必ずやすべて達成されるであろう」
『ザ・サン』紙のインタビューでゼレンスキー大統領は幅広い問題について話している。アメリカからの支援が議会で止まっていることや、中東での紛争、ウクライナからさらわれた子供たちについてなどだ。
2023年7月、ゼレンスキー大統領はCNNのエリン・バーネット記者と話し、自らを対象とする暗殺計画が存在するが特に気にすることはないと語っている:「正直に言いましょう。もし暗殺のことばかり考えていたら、いまプーチン大統領がやっているように、隠れ家から一歩も出られなくなるでしょう」
「殺されることばかり考えていたら、自分を動物のように檻の中に閉じ込めてそこに繋ぎ止めることになるでしょう。もちろん、ボディガードの人たちにはどうやって私を守るか考えてもらっています。それが仕事ですから。私はそういったことに頭を悩ませません」