ゼレンスキー大統領の人事刷新:ユーリ・ソドル統合軍司令官を更迭
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は6月24日、今年2月にザルジニー前総司令官が更迭されて以来、もっとも大きな人事刷新が行われた。同国の統合軍司令官だったユーリ・ソドル中将を解任したのだ。
『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、ソドル中将が統合軍司令官に就任したのは今年2月。ザルジニー前総司令官に代わって新総司令官となったオレクサンドル・シルスキー大将によって、このポストに任命されていた。
しかし、ゼレンスキー大統領は今回、ソドル中将に代えてアンドリー・フナトフ准将(写真)を新統合司令官に任命したと発表。解任劇の理由は公になっていないが、ソドル中将の指揮能力には、かねてより批判が集まっていたと報道されている。
画像:Wiki Commons By Mil.gov.ua、CC BY 4.0
ソドル前統合軍司令官が解任される数時間前には、アゾフ連隊のトップがウクライナ軍のある将軍について、敵よりも味方に大きな被害をもたらしているとウクライナ国家捜査局に訴えていた。
『ウクライナ・プラウダ』紙によれば、アゾフ連隊のボフダン・クロテヴィチ少佐(写真)はテレグラム投稿の中で、「ロシア軍の将軍よりウクライナ兵をたくさん死なせたと見られるある将軍」に対する調査を求めたことを明かしたという。
クロテヴィチ少佐はさらに、「私は(この訴えの結果、逆に)自分が捜査されたり投獄されることになっても、一向にかまわない」と述べ、訴えに至った覚悟のほどをうかがわせていた。
クロテヴィチ少佐いわく:「大隊や旅団の指揮官は陣地を1ヵ所失っただけで責任を問われるのに、数十の都市や州、数千人の兵を失った将軍が追及されないのはいただけない」
クロテヴィチ少佐はウクライナ兵たちの英雄的な行動に言及する一方で、「この世では往々にして、われわれを団結させるためにクズが送り込まれてくる。ウクライナ軍に所属する者なら、私が誰のことを言っているのかわかるはずだ」と述べ、件の将軍を厳しく批判。
クロテヴィチ少佐によれば、「ウクライナ軍の99%はこの将軍を嫌っている」という。同少佐はまた、この人物が自分以外のあらゆる人々を捜査対象にして責任転嫁していると述べ、「もう、うんざりだ。賽は投げられた」と怒りをあらわにした。
クロテヴィチ少佐の訴えを受け、シルスキー総司令官(写真)はすぐさま声明を発表して反応。ウクライナ兵の安全が最優先事項だと強調した。
『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、シルスキー総司令官は声明の中で、「わが軍は質の高い訓練、効果的な医療、技術的優位性といった普遍的なシステムを各部隊に構築し、兵士の命を守ることを最優先事項としています」と述べたようだ。
しかし、人々の関心が、クロテヴィチ少佐によってやり玉に挙げられた人物は誰なのかということに集まったのは言うまでもない。そして、その答えはどうやら、すぐに明かされたようだ。
『ニューヨーク・タイムズ』紙は、ウクライナ議会の防衛委員会メンバーでもあるマリアナ・ベズフラ議員が自身のSNSアカウントを通じ、クロテヴィチ少佐の言う「ある将軍」とはソドル中将のことだと述べたと報道。
ベズフラ議員はテレグラム投稿の中で、「この状況は今後も続くのでしょうか? ウクライナ軍は指導者への憎悪に基づいて団結しなければならないのでしょうか? わが国はこのような形で国民と領土を失わなければいけないのでしょうか?」と嘆いている。
一方、BBC放送によれば、クロテヴィチ少佐は新たに統合軍司令官となったフナトフ准将について「非常に優秀」だとコメントしており、自身の批判がソドル中将に対するものだったことを暗に認めたのではないかとのこと。
しかし、ベズフラ議員はゼレンスキー大統領による統合軍司令官の更迭にことよせて声明を発表。ウクライナ軍が直面する問題を解決するには、さらなる取り組みが必要だと訴えた:「システム全体の枠組みを変えずに、人事を入れ替えただけでは何も生まれません」
ここ数ヵ月、ロシア軍は戦場での圧力を強めており、今年2月に激戦地アウディイウカを占領した後も、じりじりと進軍を続けている。