過去2年間の収入を明らかにしたゼレンスキー大統領:ウクライナ政界の透明化をはかりEU加盟を目指す
NBC放送によれば、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は1月28日、将来的なEU加盟を視野に入れた会談に先立ち、自身の収入2年分を公表。ウクライナ政界の透明性を高める姿勢をアピールした。
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ゼレンスキー大統領は国内の公務員全員に収入を公表するよう呼び掛けており、自ら模範を示した形だ。大統領が明かしたのは2021年、2022年の会計年度における自身および家族の資産と負債で、その内訳は次のようになっている。
ロシアによるウクライナ侵攻が勃発する以前、2021年度にゼレンスキー大統領とオレナ・ゼレンスカ夫人が手にした収入は合計1080万フリヴニャ。ロイター通信によれば、これは28万6,168ドルに相当し、2020年度の収入より減少していたという。
ゼレンスキー大統領が公表した一家の収入は2021年度の段階で、前年よりもおよそ1,200万フリヴニャ(46万5,000ドル)少なかったのだ。この傾向はウクライナ侵攻がはじまった2022年度も続くこととなる。
また、一家の収入は開戦後、戦争の直接的な影響と不動産の家賃収入が失われたことを受け、370万フリヴニャ減少。
大統領の声明によれば「大統領一家の収入が2022年度に減少したのは、ロシアが我が国に対する本格的な侵攻を開始したことを受け、ウクライナ領における賃貸契約が一時的に解消されたためである」とのこと。
ゼレンスキー夫妻が2021年度に得た収入の大部分は給与や利息、不動産の家賃収入によるものであり、その総額はおよそ540万フリヴニャ(19万1,764ドル)と発表されている。
一方、2022年度にゼレンスキー家が稼ぎ上げた収入はおよそ360万フリヴニャ(およそ12万7,000ドル)。ただし、ゼレンスキー大統領はこれ以外にも資産を所有していたことが明らかにされている。
声明によれば、「ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は複数の商標権を保有している。2021年には22の商標登録が完了したが、これらは大統領に選出される遥か以前に申請されていたものである」という。
ゼレンスキー家の現金残高は2022年度末の段階で180万フリヴニャ(6万3,921ドル)減少したものの、その他の資産や不動産、自動車といった面では2021年度、2022年度を通して変化がない。
NBC放送によれば、ウクライナ当局は将来的な欧州連合(EU)への加盟交渉を見据え、正式な審査プロセスをすでにスタートさせている。そこで重要となるのが、政府の透明性向上と汚職の根絶だ。
ゼレンスキー大統領が2年分の世帯収入を自発的に明かしたのは、EU加盟に際して求められる透明性の確保が背景にあると見る向きもある。実際、ロイター通信によれば、同大統領が自身の収入を公表したのは、今回がはじめてだという。
いずれにせよ、この動きは汚職を懸念する西側諸国や国際通貨基金(IMF)からウクライナが軍事・経済援助を引き出す上でも役立つことは間違いない。
ゼレンスキー大統領が自らの収入を公表する一方で、ウクライナでは国防省の高官5人が砲弾購入費を横領した疑いで起訴されるという事件が発生。
BBC放送によると、事件のあらましは次のようなものだ:2022年8月、容疑者5人は迫撃砲弾10万発を購入する契約に署名。ところが、代金が前払いされたにもかかわらず、砲弾が届くことはなかったのだ。
ウクライナ保安庁は「捜査によれば、国防省の元高官や現職の高官、関連企業のトップらが横領に関与した」と発表。
ウクライナ保安庁いわく、国防省高官および兵器製造会社「リヴィウ・アーセナル」の経営者らは15億フリヴニャ(およそ4,000万ドル)近い資金を横領したが、これらはすでに押収され、国防予算として国庫に返還されたとのこと。