アフリカゾウが大量死した原因がついに判明:犯人はバクテリア(ジンバブエ・ボツワナ)

謎の大量死を遂げたゾウたち
最初の報告
6月までに350頭
ゾウの群れを壊滅させてしまう恐れ
人間に波及する可能性も
神経系へのダメージ
シアノバクテリアの神経毒が原因?
それでも尽きない謎
複数の仮説を検証
ジンバブエでもゾウが大量死
死因は敗血症
『ネイチャー』誌に発表された研究論文
困難を極めた特定作業
人間に被害が及ぶ可能性を警戒
フォギン博士のコメント
野外での慎重な作業
謎の大量死を遂げたゾウたち

2020年5月から6月にかけて、ボツワナにあるオカバンゴ・デルタで数百頭ものゾウが不可解な死を遂げた。自然保護区の担当者たちは当惑したが、その原因については最近まで謎のままとなっていた。

最初の報告

一部の報告によれば、ゾウの大量死は早ければ2020年3月に始まっていた可能性があるというが、はじめて死骸が発見されたのは5月になってからだった。CBS放送の報道では、上空を飛行中の航空機がゾウの死骸169体を発見したとされている。

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6月までに350頭

その後、2020年6月までに謎の死を遂げたゾウは350頭に達し、現地当局はこの現象が他の群れに波及することを懸念、原因究明を急いだ。アフリカで野生動物保護活動に携わるNGO「National Park Rescue」の保全ディレクター、ナイル・マッキャン博士も「これは大惨事です」とコメント。

写真:Twitter @NiallPMcCann

ゾウの群れを壊滅させてしまう恐れ

マッキャン博士いわく:「危難が去ったころには、ボツワナで暮らすゾウの群れ全体が壊滅してしまっている可能性すらあります」同NGOはさらに、この現象が人間に悪影響を及ぼす可能性についても警戒していた。

 

人間に波及する可能性も

同博士は当時、CBS放送のインタビューの中で「毒や病気が原因だとすれば、近隣の人々に影響が及ぶ可能性はかなり現実的です」とコメント。研究者たちの努力にもかかわらず完全な解明には至っていないが、その糸口はつかめているようだ。

写真:オカバンゴ・デルタ(Facebook @elephantswithoutborders)

神経系へのダメージ

原因が何であれ、ゾウの神経系がダメージを受けていることだけは確かだと判明したのだ。ボツワナ政府によれば、未知のシアノバクテリアが生成する毒素がゾウたちを死に至らしめた可能性があるという。

写真:Unsplash / David Clode

シアノバクテリアの神経毒が原因?

ボツワナの野生動物・国立公園局で獣医長を務めるムマディ・ルーベン氏は記者会見の中で、「私たちが行った最新の検査によって、シアノバクテリアの神経毒が原因だと判明しました」と説明したとのこと。BBC放送が伝える。

写真:LinkedIn @mmadi-reuben

それでも尽きない謎

ルーベン氏によれば、シアノバクテリアは水中に存在する細菌だというが、なぜゾウだけが被害を受けているのか、どうして特定の地域でのみ大量死が発生しているのかについては未解明だという。

写真:Unsplash / Felix M. Dorn

複数の仮説を検証

ルーベン氏は「なぜゾウだけなのか、どうしてその地域だけなのかといった、未解明の謎がいくつも残されています。そこで、私たちは多くの仮説を立て、検証作業を行っています」としたが、決定的な原因究明には至らなかった。

写真:Facebook @elephantswithoutborders

ジンバブエでもゾウが大量死

ボツワナでゾウの死骸が発見されてから2ヵ月後、ジンバブエでもゾウ35頭が謎の死を遂げる。ただし、こちらのケースでは死亡したゾウの検査結果から原因の特定に至ることとなった。

死因は敗血症

『ガーディアン』紙によれば、ジンバブエにおけるゾウの死因は敗血症。これはパスツレラ属の細菌で未分類の種「Bisgaard taxon 45」によって引き起こされたものだという。

写真:Wiki Commons by Centers for Disease Control and Prevention

『ネイチャー』誌に発表された研究論文

ジンバブエのゾウ大量死に関する研究結果は、202310月になってようやく『ネイチャー』誌上で発表された。それによれば、ジンバブエでゾウを死に至らしめた細菌が、ボツワナをはじめとする近隣諸国でも猛威を振るっていたと見られるとのこと。

写真:Facebook @elephantswithoutborders

困難を極めた特定作業

研究チームを率いてゾウ大量死の謎を解き明かしたのは、自然保護NPOVictoria Falls Wildlife Trust」で野生動物の治療に当たる獣医師のクリス・フォギン博士だった。同博士によれば、原因究明の作業は困難を極めたという。

写真:LinkedIn @chris-foggin

人間に被害が及ぶ可能性を警戒

というのも、サンプルを入手するにはまずゾウの死骸を見つけて回収しなくてはならないが、これが容易ではないのだ。フォギン博士いわく、ジンバブエのケースでは人間に被害が及ぶ可能性が懸念されていたこともあり、大きな課題となったようだ。

 

フォギン博士のコメント

プレスリリースの中でフォギン博士は「どのような病気が相手かわからなかったのです。当初はこの地域で頻発する炭疽菌の関与が疑われたほか、人間に健康被害を与えうる別の病気だという可能性もありました」とコメント。

 

野外での慎重な作業

同博士はさらに、「そのため、ゾウの死骸を検査する際には細心の注意が必要です。しかし、このような大型の動物に対して野外で慎重な作業を行うのは非常に大変でした」と付け加えた。

 

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