ダライ・ラマが公の場で少年に「舌を吸って」発言
チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世がは、インドで行われた公式行事で少年に不適切とみられる行動をとる様子が動画で拡散。ダライ・ラマは批判に対し謝罪を行った。
多くの人々と同じく、この公式行事でもある少年が指導者からの抱擁を求めた。するとダライ・ラマは少年を壇上に招き、「最初にここ」といって頬を示したのだ。
ビデオからの静止画: VOA チベット語
ダライ・ラマの頬にキスをして抱擁を交わした少年は、微笑みを浮かべていた。その後、ダライ・ラマは「ここにも」と言い、唇を指差して口をすぼめた。
少年はダライ・ラマに近づいたものの、年老いた指導者の唇にキスすることにためらった。するとダライ・ラマは笑いながら少年のあごを引き寄せ、口づけをしたのだ。
さらに少年の目を見つめた後、チベット仏教の最高位にあるダライ・ラマ14世は少年に「私の舌を吸いなさい」といって、舌を突き出した。まわりにいた人々はこれを見て笑い声をあげた。
少年は頭をダライ・ラマに近づけておでことおでこを合わせ、指導者とキスする代わりに自分の舌を少し突き出した後にひっこめた。ダライ・ラマも笑いながら、自分の舌をひっこめた。
その後、ダライ・ラマは「人類はみな兄弟姉妹である」と語り、おわると少年にふたたび長い抱擁をした。途中で少年は身を離そうとしたが、ダライ・ラマに抱きしめられてしまった。
その後ダライ・ラマは少年に向かって、「平和と幸福を創造する人々」に目を向け、「ほかの人を殺す人間」に従うべきではないと語りかけた。
この事件が起きたのは今年2月28日、インドのダラムサラにあるダライ・ラマの寺院でのことだった。英紙『ガーディアン』によればダライ・ラマは、インドの不動産会社M3Mグループの技能訓練プログラムを修了した100人余りの学生との交流イベントに参加していた。
3月に交流イベントの動画がSNSに投稿されると多くのネットユーザーが反応。ダライ・ラマに対し「病気」だとか「堕落している」といったコメントが集まり、なかにはこれを「児童虐待」として非難する声もあった。
画像: Dr. Shola Mos-Shogbamimu / Twitter
ネット上に広がった非難の声に対し、ダライ・ラマ法王庁はツイッターで公式声明を発表した。
法王庁はツイッターへの投稿で、「少年がダライ・ラマ14世に抱擁をしていいか尋ねたときの様子を示す動画が拡散しています。ダライ・ラマは少年と彼の家族、そして世界中の彼の多くの友人に対し、自身の言葉が引き起こしたかもしれない傷について謝罪したいと願っています」とした。
「ダライ・ラマ法王は公の場やカメラの前でも、出会った人々を無邪気で遊び心のある方法でからかうことがよくあります。法王は今回の件について後悔しています」
チベットでは「悪魔の舌は黒い」とされていたことから、人々には舌を出して自分が悪魔ではないことを示す習慣があり、やがてそれが挨拶として定着した。上の写真のように、舌を長く出すほど相手に深い敬意を示すとされている。ただし、「舌を吸う」というあいさつの伝統はない。
ダライ・ラマはチベット仏教の精神的指導者であり、チベット仏教の教義において人々を導くためにこの世に姿を現した化身ラマとされている。現在のダライ・ラマは第14代目で、15歳のときに即位。1989年、非暴力によるチベット解放闘争やチベット文化遺産の保存への貢献が評価されてノーベル平和賞を受賞した。
ただし、ダライ・ラマは2019年にも自身の発言について謝罪を行っている。このときは英BBCのインタビューのなかで、「女性のダライ・ラマが現れるとしたらもっと魅力的であるべきだ」とし、魅力的ではないとしたら「人々は顔を見たくないだろう」と発言、オンライン上で批判の声が上がっていた。法王庁はこのときも、「ダライ・ラマには人々の気持ちを害するつもりはなかった」としている。