重病説が囁かれるチェチェン共和国のカディロフ首長、後継者は長男に?
プーチン政権の同盟者として、ロシア連邦を構成するチェチェン共和国で抑圧的な支配を続けてきたラムザン・カディロフ首長。ところが、久々に公の場に姿を現したこの男を巡って、ふたたび重病説がささやかれているようだ。
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ロシア独立系メディア『ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』が匿名の医療関係者の話として伝えたところによれば、カディロフ首長は重病に侵されており「回復の見込みはない」とされる。
また、『リベラシオン』紙によれば、ここ数ヵ月間のSNS投稿を見る限り、カディロフ首長は「むくんで息を切らしており、目も半分しか開かず、どうにか言葉を発している」ような有様だという。さらに、そのSNS投稿も以前より頻度が下がっており、なおさら憶測を招く事態となっている。
『ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』紙の報道をもとに『ヴァニティ・フェア』誌が伝えたところによると、カディロフ首長は「2019年以来、壊死性膵炎(膵臓が不可逆的に損傷してしまう病気で死亡率が高い)を患っており、少なくとも年に2回はモスクワの病院に運び込まれている」とのこと。
さらに、ここ数ヵ月は神経変性疾患にも悩まされていると言われているが、詳細は不明だ。
一方、ウクライナのメディア各社はカディロフ首長が「急性呼吸不全」で昏睡状態にあったと報道。『ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』紙もこの情報の裏付けが取れたとしている。
2月29日にプーチン大統領が国民向けの演説を行った際、その傍らにカディロフ首長の姿はなかった。カディロフ首長は以前ならば公務の場でプーチン大統領と同席し、存在感をアピールすることが多かったため、これは異例の欠席だった。
このような中、カディロフ首長は自身の健康不安説を払しょくするため、トレーニング中の動画を公開。ジャージを着てウェイトリフティングに励む様子を見せつけ、健康をアピールした。
現在、47歳のラムザン・カディロフ首長は2007年以来、チェチェン共和国トップの座にある。北コーカサス地方に位置するチェチェン共和国は、ロシア連邦領でありながら住民の大半はイスラム教徒という特殊性から、長年不安定な情勢が続いている。
カディロフ首長はプーチン政権の忠実な同盟者であり、私兵「カディロフツィ」を率いて独立派のチェチェン人や自身の権力を脅かす人物たちを徹底的に弾圧。
実際、カディロフ首長が関与したとされる暴力的な事件は少なくない。中でも、性的マイノリティに対する拷問や反カディロフ派の暗殺は悪名高い。
しかし、プーチン政権はウクライナ侵攻だけで手一杯であり、自国内に新たな火種を抱える余裕などないため、カディロフ首長の健康不安説がささやかれるようになると、後継者問題が公然と取り沙汰されるようになってしまった。
まず、『ヴァニティ・フェア』誌が後継者候補として名前を挙げたのが、ウクライナでチェチェン人部隊を指揮するアプティ・アラウディノフ(写真)だ。アラウディノフは最近、ロシア国防省内で重要なポストに就いたという。
また、「鎖につながれた狂犬」の異名をとる、チェチェン議会のマゴメド・ダウドフ議長(写真)に注目が集まったこともある。しかし、こういった後継者候補たちが実際に首長の座を継いだとしても、それは一時的なものに過ぎないだろう。
というのも、いずれはラムザン・カディロフ首長の長男、アフマド(18)が権力を握るものと見られているからだ。
『フィガロ』誌の報道によれば、チェチェン当局の要職はカディロフ首長の親族およそ50人によって独占されており、最近では16歳の息子アダム(写真手前)がロシア特殊部隊大学の理事に任命されたという。
重病説がささやかれるラムザン・カディロフ首長だが、これによってチェチェン共和国は新たな時代を迎えるのだろうか? それとも、カディロフ一族が権力移譲を成功させ、ロシア連邦内の地方王朝と化すのだろうか?
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