トランプ元大統領、演説中に現職大統領の名前に加えて妻の名前も間違える
トランプ元大統領が選挙キャンペーンでの演説中にまたしても大きなカン違いをしでかし、熱心な支持者さえ当惑する事態になっている。いったいどのような間違いを口にしたのだろうか。
舞台となったのはヴァージニア州での選挙イベントだった。観衆はトランプ元大統領のあらゆる言葉を聞き逃すまいと熱心に耳を傾けており、ウクライナでの戦争に決着をつけると述べた時は大きな拍手が巻き起こった。
トランプ元大統領はこう語っていた:「大統領選に勝ったらすぐに、ロシアとウクライナが行っている恐ろしい戦争を終わらせる。私は両国のことをよく知っているし、力があれば再び平和を樹立することができる。あの戦争を終わらせよう」
こういった勇ましい言葉を受けて聴衆は盛大な拍手を送った。だが、次にトランプ元大統領が言ったことその熱狂を冷ましてしまった:「これは悪い戦争だ。プーチン大統領はオバマ大統領のことは非常に軽んじており、核の使用をちらつかせてすらいる」
この発言から察するに、どうやらトランプ元大統領はいまだにバラク・オバマ元大統領がアメリカの大統領だと考えていたようだ。当然今の大統領はジョー・バイデン氏であり、この発言の直後観衆は当惑して静まってしまった。
『インディペンデント』紙や『ビジネスインサイダー』などのメディアがこの発言と聴衆の反応を伝えている。だが、重要なのは聴衆がどう反応したかではなく、トランプ元大統領がオバマ元大統領とバイデン大統領を間違えたという事実の方だ。
バイデン大統領が高齢であることは大統領選において重要なファクターとみなされており、認知能力が執務可能なレベルかどうかということがしばしば議論されている。だが、トランプ元大統領もその点でいえば同様の問題を抱えており、今回の発言は元大統領の認知能力に一定の疑義を挟ませるものだ。
『フォーブス』誌も指摘するように、トランプ元大統領はここ数か月の間に同様の言い間違いを7回も行っている。同誌はさらに、重大な人名の取り違えは他にもあったと指摘している。
トランプ元大統領の言い間違いのなかでも特に無視できないもののひとつが、2月末の保守政治活動協議会での演説中に起きたものだ。そこで元大統領は自身の妻であるメラニア氏の名前を元スタッフのメルセデスと言い間違えてしまった。
トランプ元大統領は協議会でこう語っていた:「それにほら、私の妻、偉大なファーストレディ、彼女は素晴らしかった……誰もが彼女を愛していた。すごいじゃないか。メルセデス、君は最高だ!」この言い間違いもまた、トランプ元大統領の認知能力に関する議論を呼ぶことになった。
オバマ元大統領とバイデン大統領を言い間違えた件について、トランプ元大統領は説明を試みている。1月、元大統領はSNS「Truth Socail」上で、オバマ氏が現在も大統領であるかのような言い方をしたのは、同氏が現在も政権に対して影響力を行使していることを示すためだった、と述べている。
トランプ元大統領は「Truth Socail」での投稿でこう語っているという:「私がバイデン大統領ではなくオバマ氏の名前を出すのは常に皮肉であり、わが国の運営において非常に重大な干渉が存在することを示すためだ」政治ニュースサイト『The Hill』が伝えている。
だが11月に大統領選挙が迫る中、ヴァージニア州でのトランプ元大統領の言い間違いやバイデン大統領の勘違いは、多くの有権者にどちらの候補の方がアメリカの大統領という職務にふさわしいかと考えさせることになっている。
トランプ元大統領は現在77歳、バイデン大統領は81歳で、『ビジネスインサイダー』によるとアメリカ大統領選挙に出馬する候補としてはどちらも過去最高齢だという。さらに、最近行われた世論調査によると、アメリカの有権者はふたりが高齢で老いも見え始めているということをかなり意識しているようだ。
たとえば、『ニューヨーク・タイムズ』紙がシエナ大学と共同で行った世論調査(3月3日発表)では、調査を受けた人の42%がトランプ氏は大統領となるには「高齢すぎる」と考えていたという。バイデン大統領については、その数字は61%となっていた。
両候補の年齢や認知能力に不安を抱いている有権者の割合は無視できないものだ。この数字は結局のところ、トランプ元大統領もバイデン大統領も有権者からの信頼を勝ち取れていないということの現れなのかもしれない。