トランプ米大統領の就任演説:その危険なメッセージとは
1月20日(現地時間)、ドナルド・トランプ氏が米国の第47代大統領に就任した。首都ワシントンの連邦議会議事堂にあるキャピトル・ロタンダ(円形の大広間)で就任演説を行い、今後4年に向けたビジョンを明らかにした。
NBCニュースによれば、トランプ氏は列席者に感謝を述べた後、「米国の黄金時代が始まります。今日から私たちの国はふたたび繁栄に向かい、世界から尊敬を集めるでしょう」と演説を始めたという。
トランプ氏は続けて、自身が政権の座にある限り米国民はこれ以上搾取されることはないとし、「シンプルにいえば、米国を第一に考えるつもりです」と発言。だが、その真意はどこにあるのだろうか。
トランプ大統領は米国の主権や正義を取り戻すことを主張したほか、司法省および米政府による悪意に満ちた、暴力的かつ不当な武器化は終わりを告げるとした。
さらにトランプ大統領は、政府が直面する「信頼の危機」に立ち向かう覚悟を表明。米国が国内外における諸問題を解決できないのは、国の政治体制が腐敗しているからだと主張した。
「急進的かつ腐敗した支配層は長年にわたり、国民から力と富を搾取してきました。社会の支柱は折れ、すっかり崩壊しているように見えます」
「前政権は単純な国内危機さえも管理できず、国外では壊滅的な出来事に絶えずふりまわされています」
トランプ大統領は国境や移民の問題、そして公衆衛生問題を取り上げたほか選挙不正にも言及し、みずからの就任期間中にこうした問題を解決するとしている。
「今回の選挙戦で私が勝利したということは、こうしたひどい背信行為のすべてを覆し、国民の皆さんに信仰や富、民主主義、そして自由を取り戻すという使命を得たことにほかなりません」
「この瞬間を境に、米国の衰退は終わりを告げます。人々の自由とわが国の輝かしい運命はもはや否定されることはありません。ただちに米国政府の誠実さと競争力、そして忠誠心を取り戻します」
さらにトランプ氏は、250年にわたる米国史において自身はいかなる大統領よりも多くの試練を受けてきたが、それを通じて多くのことを学んだとし、合衆国を取り戻すための旅は容易なものではなかったと語った。
昨年7月にペンシルベニア州の選挙集会で銃撃されたことに触れ、「私たちの大義を止めようとする人々は、私から自由を奪おうとしています。実際、数か月前には命を奪われかけました」と続けた。
「ペンシルベニア州の緑野で、暗殺者の弾丸が私の耳を切り裂きました。しかしその時、生きのびたことには理由があると感じ、いまもその思いを強めています。私は米国をふたたび偉大な国にするため、神によって救われたのです」
続けてトランプ大統領は、国が直面する危機のひとつひとつに「威厳と権力そして強さ 」をもって対処し、迅速に行動することで国民にふたたび希望をもたらすとしたほか「アメリカ国民にとり、2025年1月20日は解放の日だ」と付け加えた。
トランプ大統領のこうしたメッセージは、同氏の支持者には好意的に受け止められたかもしれないが、今後の米国社会に関する危険な予兆とみることもできる。新大統領は米国政府に対して公然と疑問を投げかけたことで、国民を団結ではなく分裂に向かわせた可能性もあるのだ。
4年間の任期中にどんなことが起こるかまだわからないが、少なくともトランプ大統領は就任演説において、関税の引き上げや移民の強制送還を行うことを明言。さらに、パナマ運河を取り戻すほか、グリーン・ニューディール政策を終了し、米軍を再建すると約束した。