ドイツから出土したオーパーツ「ネブラ・ディスク」の製法が判明? 最新の研究結果をチェック
ネブラ・ディスクは、考古学的発見の中でもひときわ謎めいたものだ。あまりの不思議さに、当時の技術・知的水準では製造困難な「オーパーツ」と見なされることすらある。だが今回、新たな研究の結果、その製法の一端が解明されたかもしれない。
「Heritage Daily」によると、ネブラ・ディスクは1999年、ドイツの盗掘者ヘンリー・ヴェストファールとマリオ・レンナーが金属探知機を用いて発見したという。中央ドイツのネブラ付近で見つかったもので、約3,600年前のものとされる。
ネブラ・ディスクという名前は出土地付近の村の名前から採られたもので、控えめに感じるかもしれないが、その実態は人類史の謎に迫る非常に重要な発見だ。
盗掘者のヴェストファールとレンナーはネブラ・ディスクを、他に発掘された剣や斧、鏨などと一緒に個人収集家に売却。この大発見を公的に調査する機会は永遠に失われたかと思われた。
だが、ドイツ警察の調査によりネブラ・ディスクは2022年に再発見され、ザクセン=アンハルト州のハレ先史博物館で展示されるようになった。以来、多くの考古学者らがネブラ・ディスクの謎に頭を悩ませている。
「Archeological News」によると、ネブラ・ディスクが興味深いのは、いまわれわれの知る形の宇宙が描かれた最古の例だからだという。ほかにも、鮮やかな色彩や材質も関心を引いてきた。
「金の象嵌で太陽や月、星といった天体を再現しており、このディスクは中央ヨーロッパの青銅器時代に栄えたウーニェチツェ文化と関連があると考えられている」と「Archeological News」は記している。
画像:Wiki Commons By Michael Deutsch, CC BY-SA 4.0
「Art News」も指摘するように、ネブラ・ディスクには太陽のほかに満月と三日月も描かれている。また、ディスク全体に星々も点在しており、その脇には湾曲した金が置かれている。この金は船あるいは鎌を表している可能性がある。
「Archeological News」はディスクについて、「直径約30cm、厚さ数mmという比較的小さなサイズではあるものの、天文学や冶金学への深い理解を感じさせる」と書いている。
ネブラ・ディスクが提示する大きな謎はふたつある。それは、当時ドイツのこの地域に住んでいた人々が宇宙について、そして合金術についてどれほどの知識を持っていたのか、というものだ。
ウーニェチツェ文化圏の人々がどれほど昔から天文学の知識を持っていたのか、という点については明らかにするのは難しいかもしれない。だが、ネブラ・ディスクがどのような製法で作られたのかという点については、それを解明したとする最近の研究が存在する。
その研究は『Scientific Reports』誌上で発表されたもので、論文の著者らはディスクを金属組織学的に分析、さらにいくつかの実験も加えた上で、ディスクの製造方法を再現してみせた。
その論文によると、ネブラ・ディスクの製作にあたっては、10回にわたる加熱サイクルを経る複雑な工程で炉が最大700℃という高温まで熱せられたとされている。「The Collector」が伝えている。
論文では、著名な銅細工師であるハーバート・バウアー氏の協力も得てその加熱工程を再現。55回にもわたる焼きなましの末に、ネブラ・ディスクのサイズを複製することができたという。「Art News」が報じている。
画像:State Museum of Prehistory, photo: J. Lipták, Munich
考古学者で論文の筆頭著者であるハラルド・メラー氏は、今回の研究結果はネブラ・ディスクの「類い希な性格」を明らかにしたと強調、「青銅器時代初期の金属加工技術がすでに高度に発展したものだった」ことも判明したと述べている。
画像:By Christian Reinboth, Own Work, Replica of the Nebra Sky Disk, CC BY-SA 4.0
メラー氏はさらにこう述べている:「ネブラ・ディスクがわれわれに教えてくれるのは、すでに研究し尽くしたと思えるものであっても、新たな技法が利用可能になった際には再検討してみることが大事だ、ということです」実際、メラー氏のこの主張は正しかった。ネブラ・ディスクを再検討したことで、青銅器時代についてのわれわれの認識は改められたのだから。
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