イタリア・ナポリ近郊の巨大火山「フレグレイ平野」に噴火の兆しが

ナポリ近郊で地震を観測
過去40年間でもっとも激しい活動
火山に囲まれたナポリ
フレグレイ平野とヴェスヴィオ山の違い
カルデラとは何か?
「ブラディサイズム」
多数の噴火口
レッドゾーンで暮らす50万人の住民
46世帯が避難
本当に噴火するのか?
「現時点では決定的な兆候なし」
1980年代に発生した土地の隆起
マグマか地熱流体か?
地下5,000メートルにあるマグマ
火山帯に暮らす多数の住民
巨大火山の上にある街
「人が住むべき場所ではない」
イタリア国立地球物理学火山学研究所の見解
ナポリ近郊で地震を観測

5月20日から21日にかけて、ナポリ近郊にあるフレグレイ平野では150度におよぶ地震が記録されたほか、5月29日早朝にもマグニチュード3.6の地震が発生。ナポリ市内や近隣の市町村でも揺れが感じられたという。ここは地域一帯がカルデラをなす巨大火山だが、最近、この場所で何が起こっているのだろうか。

 

 

過去40年間でもっとも激しい活動

一連の地震は、フレグレイ平野で記録されたものとしては過去40年間でもっとも激しい活動であり、地元当局は警戒を強めている。

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火山に囲まれたナポリ

ナポリ市周辺にはフレグレイ平野のほか、ヴェスヴィオ山やイスキア島など、火山が複数集まっている。

フレグレイ平野とヴェスヴィオ山の違い

ヴェスヴィオ山は単独の成層火山だが、フルグレイ平野はそうではない。十数キロメート四方におよぶカルデラの内外には複数の噴火口が横たわっているのだ。

カルデラとは何か?

カンパニア州のウェブサイトによれば、カルデラとは「火山活動によって生じる広大な円形の窪地のことで、一般的に直径は1キロメートル以上におよぶ。マグマだまりの上部が大規模な噴火によって陥没することで生じた切り立った崖が特徴」とのこと。

 

 

「ブラディサイズム」

また、フレグレイ平野の火山活動を特徴づけているのは「ブラディサイズム(緩慢地動)」と呼ばれる現象だ。これはマグマの動きに伴って、地面がゆっくりと隆起したり沈降したりを繰り返すというものだ。

 

多数の噴火口

しかし、専門家や市民がもっとも懸念しているのは、一帯に位置する多数の噴火口が一斉に活動を再開する可能性だ。

 

レッドゾーンで暮らす50万人の住民

カンパニア州いわく、レッドゾーン(特別警戒区域)内で暮らす住民はおよそ50万人、イエローゾーン(警戒区域)内では84万人に上るため、噴火に備えた対策を講じる必要があるとのこと。

46世帯が避難

最近観測された「ブラディサイズム」はここ数年でもっとも激しく、市民の間には不安が広がっている。ナポリ近郊のポッツオーリでは、すでに46世帯が仮設住宅に避難したという。

本当に噴火するのか?

活発化する地震を前に地元当局も警戒を強めているが、専門家たちはナポリ周辺で大規模な噴火が発生する可能性についてどのように考えているのだろうか?

 

 

「現時点では決定的な兆候なし」

ヴェスヴィオ火山観測所のマウロ・デ・ヴィート所長いわく、「(一連の地震は)我々が注意深く監視している現象の1つです。しかし、現時点では噴火の決定的な兆候は検出されていません」とのこと。

1980年代に発生した土地の隆起

実は、ナポリ周辺では1982年から1984年にかけても今回と似たような現象が観測されたことがある。イタリアのオンライン紙『Open』が報じたところによれば、当時は地盤がひと月のうちに9センチメートル、合計で1.80メートルも隆起したという。しかし、その後この活動は鎮静化し、噴火には至らなかった。したがって、今回も同じようなケースかもしれないのだ。

 

 

マグマか地熱流体か?

しかし、『Open』紙によれば、地質学者のマリオ・トッツィ氏は「地震は地殻の応力や、地殻を下から押し上げている物体によるものです。その物体というのがマグマ柱の端にある地熱流体(高温の地下水で液体または気体)なのか、それともマグマそのものが上昇しているのか、現時点ではわかりません。しかし、両者の違いは重要です」と説明。

 

 

地下5,000メートルにあるマグマ

同氏によれば、もし地殻を押し上げている物体がマグマならば、噴火の危険性もあるという。ただし、今のところマグマは地下5,000メートルの場所に留まっていると見られており、ひとまず「安心できる」とのこと。

火山帯に暮らす多数の住民

同氏はさらに、今回のブラディサイズムも1980年代に起きた現象と同じようなものだろうと述べた。ただし、このような火山帯に多数の住民が暮らしている現状については警鐘を鳴らしている。

 

巨大火山の上にある街

トッツィ氏いわく:「数万人もの人々が巨大火山の上に座っているようなものですが、当局はこれを監視したりコントロールしたりするどころか、病院や競馬場、軍の基地、つまりは人口8万人の都市を建設してしまったのです。何かあれば大問題です」

「人が住むべき場所ではない」

同氏はさらに、地元当局が危険を承知しながら、住宅建設を許可し続けていることを批判、「実際のところ、人々はこんな場所に住み着くべきではなかったし、いつまでも留まっていてはいけないのです」とコメントした。

 

 

 

イタリア国立地球物理学火山学研究所の見解

一方、伊紙『Il Sole 24 Ore』はイタリア国立地球物理学火山学研究所の見解として、マグニチュード5未満の小規模な地震が生じる可能性はあるものの、ブラディサイズム現象は鎮静化しつつあり、徐々に通常の状態に戻るだろうという見通しを伝えている。

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