ネタニヤフ首相の主導する司法改革にイスラエルで反発が高まる
イスラエルでベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる政府が司法改革を断行、それに反対するゼネストが決行されるなど混乱が深まっている。
AP通信によると、首相が主導する司法改革に反対したヨアヴ・ガラント国防相が解任されたことがきっかけとなり、数千人のイスラエル国民が路上で反対運動を行っているという。
APによると、ガラント国防相はネタニヤフ首相と同じ政党「リクード」に所属しているが、同党の政治家として今回の改革に対する反対を表明した最初の人物だという。
前国防相はネタニヤフ首相の改革案はイスラエルの軍隊内に深い断絶を生むことになると発言、解任につながった。
だが、この解任劇以前から、軍隊や労働組合、大学など各界からの反対の声はここ数週間のあいだ高まり続けていた。
ガラント前国防相の解任後最初の月曜日、イスラエルでは多くの機関が停止。国内の多くの大学が授業を取りやめるなどした。
同時に、イスラエル最大の港、ハイファ港の労働者もストライキに参加。CNNはこの決定を「歴史的」なものだと報じた。
イスラエルの首都テルアビブにある国際空港も数時間離陸をやめるなどした。
その日は国内のマクドナルドまで閉鎖される事態に。
イスラエルの立法府であるクネセトの前には数千人が集まり抗議した。
抗議者の中にはイスラエルの野党、イェシュ・アティッドの党首ヤイル・ラピドが群衆に語りかける姿も。
イスラエルの新聞『ハアレツ』によると、ラピドは今の政府は「キリスト教的で、ナショナリストで、民主主義に反するグループ」に牛耳られており反対運動を継続する必要があると呼びかけたという。
ネタニヤフ首相の主導する司法改革のいったいなにがそれほど問題なのだろうか。
ロイター通信によると、ネタニヤフ首相率いる連立政権は現在の同国の最高裁判所が左傾的で、政府の他の部門にも口を出してくるのが問題だと考えているという。
今回の司法改革には最高裁判所判事の任命方法の変更も盛り込まれ、変更後は任命権をほぼ政府に集約する形となる。そしてその政府を現在率いているのがネタニヤフ首相というわけだ。
それだけではなく、連立政権側はさらに最高裁判所が違憲と判断した法律を撤回させる権限も弱めようとしている。
『ニューヨーク・タイムズ』紙も強調する通り、ネタニヤフ首相を批判する人々は今回の改革を実行するとイスラエル政府に対する健全な監査システムが損なわれると考えている。
それだけではなく、この改革はネタニヤフ首相の個人的な利益にもなり得る。ネタニヤフ首相はいままさに汚職で裁判中なのだ。
改革の強い支持者でもあるイスラエルのヤリフ・レヴィン司法相は、今回の抗議活動を受けて改革の延期をほのめかした。
レヴィン司法相によると、抗議が長引くと連立政権が崩れ、ネタニヤフ首相の所属する党も分裂する事態になりかねないという。
結局ネタニヤフ首相は改革の延期を表明したが、改革を徹底しない場合辞任するという右派の閣僚も出てきており、一度動き始めた改革を完全に止めるのは困難かもしれない。