フロリダ州を通過したハリケーン 「ミルトン 」の爪痕
10月5日にメキシコ湾で発生した熱帯低気圧はたちまちのうちに強度を増して大型ハリケーン「ミルトン」となり、勢力を維持したまま東に向かってフロリダ半島に上陸した。
写真はフロリダ州東海岸のサラソタ湾近くの歩道に乗り上げたヨット。
画像:Abaca Press / Kyodo News Images
写真は大型ハリケーン 「ミルトン 」が通過した米フロリダ州南部オスプレイの様子。専門家はこのハリケーンについて「前代未聞」としたと、CNNが伝えた。
フロリダ州のロン・デサンティス知事は米CNBCに対し、「ミルトン」による州内の死者数は少なくとも15人にのぼり、今後も死傷者数が増える可能性があると語った。
「ミルトン」の接近に伴い豪雨に襲われたフロリダ州西海岸セントピーターズバーグでは、降雨量が1時間420ミリ以上に達した。これは「1000年に一度」の降雨量だという。
フロリダ州東海岸で最も被害の大きかった地域のひとつ、州南部セントルーシー郡では「ミルトン」上陸前の約1時間半のうちにいくつもの竜巻が発生し、911番への救援要請は約900件にのぼったという。同郡行政官ジョージ・ランドリーの言葉としてCNNが伝えた。
この時の竜巻で時速160キロを超える暴風がセントルーシー郡を襲い、高齢者用居住区を中心に市内で約125棟の建物が倒壊したとAP通信が伝えた。
フロリダ州西海岸セントピーターズバーグでは、MLBタンパベイ・レイズのホームスタジアム「トロピカーナ・フィールド」の屋根が吹き飛ばされてしまった。
全米の停電状況を追跡するプログラム「Poweroutage.us」によれば、フロリダ州全域の260万世帯以上で停電が起こった。最も被害が大きかった地域は、州内の主要都市圏であるタンパベイエリアだとCNNが報じた。
フロリダ州知事ロン・デサンティスの発表によれば、「ミルトン」が上陸してからフロリダ州防衛隊と都市搜索救助隊 (US&R隊)により救助された市民の数は999人にのぼるほか、105匹の動物も保護されたという。
各地で数多くの家屋が倒壊し、建物内に閉じ込められてしまった人がいるほか、多くの人々が自宅から避難を余儀なくされた。また、米赤十字が行方不明者の捜索にあたっているとCNNが報じた。
当局によれば、「ミルトン」はメキシコ湾で「カテゴリー5」まで急速に発展した。その後「カテゴリー3」の強さでフロリダ州西海岸に上陸、やがて「カテゴリー1」へと勢力を弱めたという。
『ガーディアン』紙によれば、「ミルトン」はフロリダ州西海岸に近づくにつれて多少勢力を落としたものの米国史上最強のハリケーンの一つに数えられ、バイデン大統領は「世紀の暴風雨だ」と警告したという。
画像:Milton by NASA
フロリダ州では15の郡、総人口約720万人に対して避難命令が出された。タンパ市のジェーン・キャスター市長は、「避難命令の出された地区に留まれば命を落とす可能性がある 」と警告した。
ハリケーンが接近する中、米国災害救済基金に割り当てられた予算が不法移民のために使われているという偽情報が出回った。バイデン大統領はこれを否定するとともに、中小企業向けの緊急資金について「できる限り迅速に対応」するよう議会に要請したと、CBSが伝えている。
そしてバイデン大統領は国民に対し「過去に発生したハリケーンから、暴風雨の上陸期間よりもその後の数日間に多数の人命が失われることが多いとされる」と語り、ハリケーンへの警戒を続けるとともに地元当局の指示に従うよう促した。