バフムート奪取にこだわるロシア軍:2週間で戦死者6,000人
ウクライナ軍による痛烈な反撃を受け、市民やインフラをターゲットにするほかなくなったロシア軍は、その脆弱さを露呈しつつある。しかし、このような状況の中でもウクライナ東部の街バフムートでは、ロシア軍が自軍に甚大な被害を出しながら猛攻を続けている。
ウクライナ各地の戦場の中でもとりわけ激しい戦闘が行われているバフムート。ロシア軍は2週間で6,000人以上という途方もない被害を出しているが、これまで、このような規模の消耗戦は現代の戦場においてありえないと考えられていた。
ウクライナ軍の参謀本部は11月30日の発表で、2月24日の開戦以来ロシア軍はおよそ8万8,800人余りの戦死者を出しているとした。
バフムート周辺でロシア軍は兵士を何千人も失ったばかりか、相当数の突撃戦車や砲台も喪失したと見られている。
ウクライナ軍の参謀本部はロシア軍の損失について、戦車43台、装甲車75台、その他の軍用車両69台という見積もりを発表。
10ヵ月に及ぶ激戦によってウクライナにとってもロシアにとっても象徴的な場所となったバフムート。冬の訪れでこの街を巡る戦闘が鎮静化する兆しはない。
ロシアの指導部にしてみれば、バフムートはドネツク州全域の占領を目指す上で大きな障害となっているのだ。
一方、ウクライナ軍にとってバフムートは東部戦線に物資を輸送する一大拠点となっているほか、ウクライナ中部への侵攻を阻止する防波堤の役割も果たしている。
ウクライナ侵攻以前のバフムートには7万人の市民が暮らしていたほか、ウクライナ各地を結ぶ主要幹線道路が集まる交通ハブとしても知られていた。
AP通信のインナ・ヴァレニツィヤ記者とサム・メドニック記者は、「バフムートが陥落すればウクライナの補給線が断ち切られ、ロシア軍はドネツク州の重要拠点クラマトルシクおよびスロヴャンシクに進軍できるようになるだろう」と書いている。
さらに同記事によれば「親露派勢力は2014年以来、ドネツク州およびルハーンシク州の一部を支配」しており、これらの地域全体の支配権を確立することがロシア軍の重要な目標となっているようだ。
ロシア軍はバフムートを何としても攻略する構えだが、果たして成功するのだろうか?ウクライナ軍はロシア軍による度重なる攻撃を果敢に食い止めている上、ヘルソン奪還以降この地域にはウクライナ軍兵士たちが続々と送り込まれるようになっているのだ。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は最近行われた国民向け演説の中で、ウクライナ側の死傷者数の拡大に懸念を表明し、バフムートの戦況は厳しいと述べた。
ゼレンスキー大統領いわく:「最前線は厳しい状況です。侵略者たちは自軍に甚大な被害を出しているにもかかわらず、相変わらずドネツク州での進軍を試みているのです」
泥沼の激戦でバフムートの街は大きな被害を受けている。市内中心部および郊外ががれきの山と化したほか、第一次世界大戦を彷彿とさせる塹壕があちこちに掘られているのだ。
現在はキーウに拠点を置く軍事アナリストで元ウクライナ軍大佐のセルヒー・グラブスキいわく:「まるで第一次世界大戦のようだ」
バフムートの街を取り囲む畑や村落は砲撃による穴だらけで、両軍の兵士はあちこちで凍えている。
最近では、数十キロメートルに及ぶ塹壕が浸水し、対処に追われるウクライナ兵の映像も登場。
厳しい戦況の中、ウクライナ軍はバフムートでロシア軍の執拗な攻撃を退け続けており、開戦以来もっとも激しい戦闘が今も繰り広げられている。
ロシア軍はバフムート周辺で進軍し、周囲の地域を大部分占領している。しかし、ドネツク州のパブロ・キリレンコ知事はロシア軍はこれ以上前進できないだろうと述べている。
キリレンコ知事は記者会見で「状況は我々のコントロール下にある」とコメント。執拗な攻撃を続けるロシア軍側にさらなる死傷者が出ることが予想されている。