フィンランドのサンナ・マリン首相:若き女性政治家の素顔
サンナ・マリン首相率いる社会民主党は2023年のフィンランド議会選挙で第3党に後退。ミレニアル世代のリーダーとして脚光を浴びたマリン首相も次期首相が決まり次第、辞任することになる。
BBC放送によれば、三つ巴の選挙戦を制したのはペッテリ・オルポ党首率いる中道右派の国民連合党、得票率は20.8%だったという。続いて極右勢力のフィン人党が20.1%で第2党となった。
マリン首相最大の功績は、ウクライナ侵攻によって高まるロシアとの緊張関係を受け、フィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟を実現したことだろう。
マリン政権が誕生してまだ3年あまりしか経っていないが、ミレニアル世代の社会民主党党首が首相の座を手にするには険しい道のりを踏破しなくてはならなかった。
では、マリン首相は一体どのような人物で、なぜこれほど注目を浴びているのだろうか?
1985年にヘルシンキで誕生したサンナ・マリン首相。両親は彼女が幼い頃に父の飲酒癖が原因で離婚している。その後、母親と女性のパートナーに育てられたため、マリン首相は自身について「レインボーファミリー」出身だと述べている。
タンペレ大学で行政学を学んでいたときに、社会民主党青年部に参加。そこで青年部の第一副議長に就任することとなった。
画像:Sannamarin / Instagram
マリン首相の一家で高等教育を受けたのは彼女が初めてだった。在学中には勉学に励む傍ら、スーパーマーケットやパン屋でアルバイトをしていたという。
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しかし、ほどなく社会民主党内での地位を高めていったマリン首相。BBC放送によれば、2012年にはタンペレ市議会議員に選出され、他の議員と激しい議論を交わす様子がYouTubeで話題となったという。
そして29歳の若さでピルカンマー選挙区から議会選挙に出馬、当選を果たした。『ニューヨーク・タイムズ』紙は当時のマリン首相について「党内でも左派で、気候変動や社会福祉、平等を最優先課題としている」と評した。
ほどなく、マリン首相は社会民主党のアンティ・リンネ党首(当時)の目に留まるようになり、側近として取り立てられることとなった。
2019年6月にリンネ政権が誕生すると、マリン首相も運輸通信大臣として入閣。
しかし、社会民主党にとって、ままならない事態が発生。郵便ストライキへの対応を理由に中央党が連立政権から離脱したため、リンネ政権は発足から6ヵ月で崩壊してしまったのだ。
2019年12月3日、リンネ首相の後任としてわずか34歳のサンナ・マリン首相が選出され、世界最年少の首脳となった。
政界では年配の男性が主導権を握ることが多い中、若い女性を中心としたマリン政権はマスコミの注目を浴びることに。5党によるこの連立政権では、閣僚19人のうち12人が女性で、そのうち3人は首相よりも若かったのだ。
さらに、2020年にはBBC放送が選ぶ「100人の女性」に名を連ねたほか、『フォーブス』誌の「世界で最も影響力のある女性100人」でも85位にランクイン。また、2021年3月には活躍する女性の代表として『タイム』誌の表紙に登場している。
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公人としての責任やマスコミの注目はあるものの、充実した私生活を送っていたマリン首相。2020年8月には恋人のマルクス・ライッコネンと内輪だけの式を挙げ、娘を1人授かっている。しかし、報道各社は2人が2023年5月に離婚したことを伝えた。
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同じくミレニアル世代で中道左派ということで、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン元首相と比較されことも多い。
輝かしい活躍を見せるマリン首相だが、あらゆる点で賞賛されてきたというわけではない。
たとえば、2020年10月にフィンランド誌『Trendi』の表紙に登場した際には、ブレザーの下に何も着けていなかったことが議論の的に。『イブニング・スタンダード』紙によれば、野党勢力から「悪趣味」「品位がない」といった批判を浴びることになったのだ。
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また、2021年12月には、閣僚の1人が新型コロナウイルス検査で陽性を示したにもかかわらずナイトクラブに出かけ、反発を受けることとなった。
マリン首相はこれに対し、翌朝まで閣僚の新型コロナウイルス感染を知らせる文書に気づかなかったと釈明している。
さらに、2022年8月にも自宅でパーティーをしている動画がマスコミに流出、再び逆風に晒されることに。
BBC放送によれば、マリン首相は公務と私生活を混同しないでほしいと国民に呼びかけたとのこと。
また、薬物乱用疑惑を晴らすために検査を受け、8月19日の記者会見で結果を公表している。
仮にカナダのジャスティン・トルドー首相やフランスのエマニュエル・マクロン大統領といった男性の政治家に同じ様な事実が発覚してもスキャンダルにはならなかったのではないか、と指摘するコメンテーターもいる。
首相としては退陣を迫られたマリン首相だが、若き政治家としてまだまだ活躍の場は残されている。今後の活躍に注目だ。