プーチン政権がNATOとの全面衝突を避ける理由とは:イギリス海軍大将が自説を述べる
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナへの全面侵攻に踏み切った時、多くの人が第三次世界大戦につながるのではないかという懸念を抱いた。だが、ここにはひとつ忘れてはならない要素がある。
イギリス海軍のアントニー・ラダキン大将の名前はそれほど有名ではないかもしれないが、イギリスの国防参謀総長も務めており実質的に英軍のトップと言っていい人物だ。
そのラダキン大将が2月、ロシアとNATO諸国が全面衝突する可能性についてメディアに語っている。その回答は多くの人から驚きをもって迎えられた。
『デイリー・メール』紙によると、ロンドンの王立国際問題研究所で開催されたあるイベントでラダキン大将は、西側諸国とロシアが近日中に戦争に入る可能性はかなり低く、長期的にみてもほとんどあり得ないレベルだと語ったという。
気になるのはその理由だ。ラダキン大将によると、それはプーチン大統領がNATO諸国との全面戦争を恐れているからだという。
英紙『The Standard』によると、ラダキン大将は聴衆にこう語ったという:「イギリスは安全です。なぜならNATOのメンバーだからです。NATOは世界最大・最強の軍事同盟であり、核戦力も保有しています」
同紙によると、ラダキン大将は聴衆に、ウクライナの戦場でのロシア軍は驚くほど脆弱で、経験も不足していることが明らかになったとも語ったという。
また、『ビジネスインサイダー』によるとラダキン大将はこうも語ったという:「ロシアがNATO諸国への攻撃や侵入を試みた場合、圧倒的な反撃が待っているというのが動かし得ない事実です」
アルジャジーラによると、2024年1月末時点でのロシア軍の兵士は130万人おり、軍全体では220万人に達するという。
一方、NATOには350万人の兵士がいるとされ、ポーランドやバルト海沿岸諸国にはすでに数千人が配備されている。
『ビジネスインサイダー』によると、ラダキン大将はこう語っているという:「プーチン大統領がNATOとの全面衝突を望まない最大の理由は、ロシアが負けるからです。それも一瞬で」
だが同時に、ラダキン大将は、それでもロシアはサイバー攻撃などの妨害工作を実施してくるだろうとも述べている。
ただ、ここでひとつ忘れてはいけないのは、ラダキン大将はウクライナ侵攻について過去にかなり突飛な予測をしており、結果として間違っていたことが判明しているという点だ。
英紙『フィナンシャル・タイムズ』は2023年7月、ラダキン大将の発言として、ロシアは戦力の半数を失っており、ウクライナの反転攻勢への批判は的外れだという見解を伝えている。
さらに、2022年6月にはロシアはすでに戦争に負けていると述べていたという。ドイツの国営メディア「DW」が報じている。
それでも、今回ばかりはラダキン大将の見解が当たっていることを祈ろう。そうでなかった場合のことは想像もしたくないのだから。