プーチン大統領の次の標的はどの国?
ロシアのプーチン大統領が次に攻撃対象とするのはどの国だろう?ウクライナ侵攻に端を発した戦争は長期化しいまだ終わりが見えていないが、国際メディアはこうした疑問を呈している。
ロシアがウクライナ戦争に勝利した場合に次に狙う可能性のある国は数多い。その中でも明らかに危険に晒されているのがウクライナに接した小国、モルドバだ。ウクライナ侵攻の開始以来、ロシアによる同国への干渉はこれまでにないレベルに高まっている。
モルドバは旧ソビエト連邦を構成する15の共和国のひとつモルダヴィア共和国を前身とし、ウクライナと同じく国内に親露派支配地域を抱えている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』によれば、この地域は未承認国家「トランスニストリア」あるいは「沿ドニエストル共和国」と呼ばれている。
今年2月、『ウォール・ストリート・ジャーナル』は論説を通じて「プーチン大統領は旧ソビエト諸国のすべてを標的としている」とし、もしもロシアがウクライナを制圧した場合は次にモルドバが狙われる理由を解説した。
モルドバでは2020年11月に元経済学者で新欧米派のマイア・サンドゥ(写真)が新たに大統領に就任。選挙戦でみずからが掲げた公約に従い、西側への歩み寄りとEU加盟を目指している。
翌年7月には前倒し議会選挙が行われ、サンドゥ大統の支持基盤である「行動と連帯」党が議会選挙で過半数を獲得。ロシア寄りだった前政権の勢力を駆逐して欧州との統合路線を加速させている。
昨年2月、欧州連合会議に出席したサンドゥ大統領は、ロシアがモルドバ政府転覆のクーデターを企てているとして非難の声を上げた。この情報はウクライナが入手し、モルドバにもたらしたものだという。
サンドゥ大統領は記者会見を行い、「ロシアによるモルドバ政権の転覆計画には、軍事訓練を積んだ工作員が民間人のふりをして暴力や破壊行為を行い、人質を取ることが含まれていました」としたと米ニュースメディア「ポリティコ」が伝えている。
昨年10月、サンドゥ大統領は『フィナンシャル・タイムズ』紙に対し、ロシアによる政権転覆計画はエフゲニー・プリゴジンが創立したワグネル・グループが指揮していたものの、未遂に終わったことを認めた。
「我々が入手した情報によれば、転覆計画はワグネル・グループが準備したものであり、目的は反政府デモで暴力活動を拡大することでした。きわめて深刻な事態であり、自己防衛に努める必要があります」とした。
一方、元ロシア軍司令官で国会議員のアンドレイ・グルリョフによれば、ロシアが次に侵略をすすめるのはフィンランドとなる可能性が高いという。ロシア国営テレビで発言している。
写真:Wiki Commons by Андрей Кречетов
グルリョフ議員の27秒におよぶ動画を投稿したのはBBCモニタリングの上席ジャーナリスト、フランシス・カーだ。この中でグルリョフ議員は、ペトロザヴォーツクの領有権を主張するフィンランドは第二のウクライナになる可能性があるとしている。
かつてロシア軍司令官を務めたグルリョフ議員は、「フィンランドを第二のウクライナにしようとしていることは明らか、その動きが目に入らないはずがない」とした。
「現在フィンランドでは領有権を主張する動きが高まっています。側近を通じてフィンランドの論調を調べたところ、『ペトロザヴォーツクはフィンランドのものだ』と盛り上がっていました。まったくひどいものです」とした。
『ニューズウィーク』誌が伝えるロシアの独立系調査報道機関「Agentstvo」の報によれば、ロシアではフィンランドおよびバルト三国(ラトビア、リトアニア、エストニア)との戦いに備えつつあることを示す新たな大統領令が出されたという。
バルト三国もモルドバと同じく旧ソビエト連邦の構成国であり、プーチン政権は、フィンランドとバルト三国に接するロシア4地域を西部軍管区(元レニングラード軍管区)の下に置くことを決めたのだ。
「各軍管区は特定エリアで戦争を遂行することを目的としており、旧レニングラード軍管区はバルト三国とフィンランドという二つの戦域を管轄としている」というロシア軍事アナリスト、ユーリ・フェドロフの言葉を『ニューズウィーク』が伝えている。
とはいえ、プーチン大統領がフィンランドやバルト三国への攻撃を命令する可能性は低いといえる。いずれもNATO加盟国であり、一つの加盟国への攻撃に対しても全加盟国で防衛するというNATOの集団防衛規定によって守られているのだ。