プーチン大統領の隠し財産とは:豪邸、ヘリポート、ヨットハーバー......
ウクライナへの侵攻を続けるロシアに対し、西側諸国は制裁措置を実施している。しかし、ロシア産資源の価格が上昇していることからロシアのオリガルヒたちはますます資産を増やしているという。
『フォーブス』誌の推計によれば、ロシアのビリオネアたちが保有する資産総額は2022年から2023年にかけての1年間で1,520億ドルも増加し、5,000億ドルを突破したという。しかも、この傾向は今後も続く見込みだ。
また、ロシア人ビリオネアの数は2022年の段階で110人に達したものと見られている。ウクライナ侵攻のあおりを受けて一時は富を減らしたものの、その後、一気に回復したのだ。
『フォーブス』誌いわく、ロシアでもっとも裕福な人物は2022年時点で、アンドレイ・メリニチェンコだ。メリニチェンコは肥料の生産事業で、250億ドルを超える富を築き上げたとされている。
メリニチェンコに続く第2位の富豪は金属業界の重鎮、ウラジーミル・ポターニンだ。ポターニンはプーチン大統領に近しく、欧州メガバンク「ソシエテ・ジェネラル」のロシア支部を格安で買収したことでも知られる。
一方、プーチン大統領自身はというと、事あるごとにつつましい生活を送っていることをアピールしてきた。しかし、複数の調査によって、「つつましい生活」とはかけ離れた実態が暴露されつつあるようだ。
2024年の大統領選前に公表されたプーチン大統領の納税申告書によれば、同氏が過去6年間に得た収入は78万ドル未満だとされている。この中には給与や年金、預金利息に加え、不動産の売却による収入も含まれることになっている。『Ouest-France』誌が報じた。
また、プーチン大統領にはロシア国内に10の口座があり、合計で5,450万ルーブリ(およそ58万5,000ドル)を保有するほか、ズベルバンク株を230株保有しているということになっている。
さらに、プーチン大統領が所有する不動産および動産として公表されているものに、サンクトペテルブルクにある77平方メートルの邸宅と18平方メートルのガレージ、1987年製のキャンピングカーをはじめとする自動車4台がある。
ところが、複数の調査によって、プーチン大統領はつつましい生活を装っているだけで、実は莫大な財産を隠し持っているらしいことが判明している。
まず、反プーチン派の急先鋒で今年2月に他界したアレクセイ・ナワリヌイ氏が制作したドキュメンタリーによれば、プーチン大統領は黒海沿岸におよそ70平方キロメートルもの広大な土地を所有しており、そこには豪華な別荘があるとされる。
78平方キロメートルというのはモナコ公国の40倍近い広さであり、豪邸の資産価値もおよそ10億ドルと見積もられている。公表されているプーチン大統領の収入だけで、このような宮殿を建設することはできないはずなのだが……
一方、ロシアの独立系メディア『モスクワ・タイムズ』紙は2024年に、プーチン大統領がフィンランドとの国境付近にも別の豪邸を所有していることを報じた。
仏紙『Ouest-France』紙いわく、この不動産は「1平方キロメートルの敷地に豪邸と2つのヘリポート、マスの養殖場、複数のヨットハーバー、牛肉農場、プライベートな滝を備えている」らしい。
また、2015年に暗殺された野党指導者のボリス・ネムツォフ氏が2012年にまとめた報告書では、プーチン大統領の資産として「豪邸や宮殿20軒、ヘリコプター15機、プライベートジェット43機、多数のヨット、腕時計のコレクション」が列挙されていた。
投資ファンド「Hermitage Capital Management」の共同創設者、ビル・ブラウダー氏いわく、プーチン大統領はおよそ2,000億ドルに上る莫大な資産を保有しており、実は世界有数の大富豪なのだそうだ。
また、コミック『プーチンの財産(原題:La fortune de Poutine )』の作者、イヴォンニック・ドノエル氏とジルダ・ジャバ氏は「プーチン大統領の資産をすべて把握するのは非常に難しい。なぜなら、その資産はダミー会社や不動産、他人の口座などにカモフラージュされ、複雑に隠されているためだ」とコメントしている。『Jeune Afrique』誌が伝えた。
さらに、『フィガロ』紙はプーチン大統領の資産について、「表向きの資産所有者や無記名株、オフショア企業に塗り固められた巨大な構造物」だと形容している。
前出のビル・ブラウダー氏は2021年に『JDD』紙上で、「プーチン大統領は自分の名義では何も所有していないことになっている。要するに、表向きの名義人(多くの場合、親交のあるオリガルヒ)を通じて、間接的に資産を保有しているわけだ。名義人は資産の50%をプーチン大統領に支払うことになっている」とコメント。
2022年にジャーナリストたちが合同で行った漏洩文書の調査によれば、プーチン大統領はさまざまな業界における86の企業や財団とつながっており、その総資産はおよそ50億ドルに上ると見られるとのこと。
前出のブラウダー氏は『Ouest-France』紙に対して、「こういった資産はロシア国内に留まらず、スイスやヨーロッパ、米国に置かれている」と説明。
オリガルヒとはソ連崩壊後に行われた国営企業の私有化政策を利用して私財を肥やした人々のことだが、プーチン大統領はこういった勢力を徐々に手なずけていったとされる。
『Jeune Afrique』誌の分析によれば、「クレムリンの主(プーチン大統領のこと)は2000年に大統領に就任して以来、取り巻きを保護する引き換えに、毎年みかじめ料を支払わせたり、資産の一部を差し出させたりしている」ということになる。
このような状況の中、2003年には石油会社ユコスの元社長で、当時ロシア一の大富豪だったミハイル・ホドルコフスキー氏が逮捕される事件が発生。
『Capital』誌いわく、プーチン大統領はこの事件の後、「その他のオリガルヒに対して、(ホドルコフスキー氏と)同様の運命をたどりたくないのであれば、主要企業の株を自分によこすよう、脅しをかけた」と見られているそうだ。
前出のドノエル氏およびジャヴァ氏はプーチン大統領について、「史上最大の経済的強盗という称号に実にふさわしい」とコメント。プーチン大統領があちこちに隠し持っている莫大な資産は、相当いかがわしい方法で築き上げられたものだったようだ。
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