兵士不足に憂うロシア:傷病兵まで前線に駆り出す過酷な実態
ロシアからの新情報によると、重傷を負ったロシア兵たちが主治医の許可なくウクライナの前線に送り返されているという。
ロシアの独立系メディア「プロエクト」は「ロシア兵士の母の会」事務局長ヴァレンティーナ・メルニコヴァの発言を引用し、命に関わる重傷を負った兵士たちが、その負傷にもかかわらず戦地に送り返されていると報じた。
たとえば、プロエクトによると、砲弾の破片がまだ体に埋まったままで戦地に送り返された例や、肺に銃弾を受けた兵士たちが、再びウクライナ前線に駆り出された例があったという。
「肺に重傷を負い2ヶ月間の治療を受けていた2人の軍人がいた。『ロシア兵士の母の会』によると、司令官は彼らを後方の医療施設ではなく、交戦区域に移送すると告げた」
「爆弾の破片で四肢を負傷した軍人たちも、同様の扱いを受けた。体にめり込んだ破片は取り除かれなかった」
「潰瘍患者や、戦争を目の当たりにして心臓発作や卒中に襲われた人々は、治療を受けるとウクライナに送り返された」とプロエクトのジャーナリストは続けている。
ロシア軍の傷病兵の扱いについて警鐘を鳴らすのはヴァレンティーナ・メルニコヴァだけではない。
ロシア連邦大統領付属「市民社会と人権の発展」委員会のオルガ・デミチュヴァ(Olga Demicheva)もその一人だ。彼女はプロエクトの報告に先立ち、モスクワとドネツィクの医師の不満の声をロシアのメディアに語っていた。患者たちが適切な治療を受けられないまま戦地に送り返されることに、医師たちは腹を据えかねているという。
デミチュヴァ委員はロシア通信社「ノーボスチ」に語る:「先端医療を通じリハビリや継続的な治療が推奨された場合でも、兵士たちはリハビリに進むことなく、すぐさま前線に送り込まれているのが現状だとわかりました」
デミチュヴァ委員は続ける:「結果として、彼らが受ける治療はまったくの無駄というわけです。これでは健康な人ではなく、傷痍軍人が増えるだけです」
「リハビリに向かうべき患者が適切な治療を受けられないまま部隊に再配属されている、その状況をなんとかしてほしいと医師たちは私に訴えています。実際、あってはならないことです」:オルガ・デミチュヴァはそう付け加えた。
負傷兵に適切な治療を施そうとしないロシア当局の対応は、ウクライナ攻撃に携わる人員が次第に不足しつつあることの一つの表れかもしれない。
ウクライナ軍は、公式ツイッターの1月17日の投稿で、戦争開始から11万6,950人のロシア兵が戦死したと発表した。
ウクライナ側の出した数字はそれ自体で根拠のあるものではない。だが、複数の西側情報筋も、ロシア軍が少なくとも10万人の戦死者を出しているとみなす点で一致している。
たとえばアメリカ合衆国のマーク・ミリー陸軍大将は、2022年11月、ニューヨーク経済クラブのイベントに集まった聴衆に向けて、「10万人をゆうに超える数のロシア兵が死傷している」と語りかけている。
1月17日、プーチン大統領は、ロシア軍を150万人規模に増強するよう指示を出した。この動きは泥沼と化したウクライナ戦況を受けてのものであり、戦争の長期化に対しクレムリンがさらに多くの兵力を必要としていることは明らかだといえるだろう。