ベラルーシ併合を視野に入れるプーチン政権:リーク文書で明らかにされたロシアの狙い
プーチン大統領の側近が記したとされる文書が2023年2月に流出した。それにより、ロシアには2030年までに隣国ベラルーシを同国に統合する計画があるらしいことが判明した。
ニュースサイト「Yahoo News」のMichael Weiss記者とHolger Roonemaa記者が入手したこの内部文書には、プーチン政権によるベラルーシ吸収のプロセスが詳細に述べられていた。
両記者によれば、「この文書には、欧州の非自由主義国家として独立を保っているベラルーシを、ロシアが近いうちに政治・経済・軍事的な手段で併合する計画の全容が詳述されている」という。
2021年に作成されたこの内部文書によって、プーチン政権は最終的な目標として2030年までにロシアとベラルーシの政治的な統合を推し進めることを掲げているらしいと判明。
前出のMichael Weiss記者とHolger Roonemaa記者は、両国の統合に関してどのようにベラルーシの法体系をロシアの法体系に適合させるかといった課題について多くの議論が交わされていることがわかる、と指摘した。
また両記者によれば、ベラルーシとロシアは新たな同盟関係を通じて国防や外交政策といった面で連携を図るほか、貿易や経済政策における協力を通じてロシアの権益を確保し、一帯におけるロシアの覇権を広げることを目指しているとされる。
しかし、同記事によれば「これは実際には、ベラルーシにわずかばかり残された主権を取り上げるということであり、930万人の人口を抱えカンザス州ほどの広さを持つこの国をロシアの衛星国の地位に落とすことに他ならない」という。
同記事はまた、「農業や産業、スパイ活動、戦争といった政策について、ベラルーシはロシアの意向に振り回されることになるだろう」と付け加えている。
ベラルーシとロシアの新たな同盟関係は、両国と国境を接するNATO諸国、つまりラトビア、リトアニア、ポーランドにとって大きな脅威となりうる。
ただし、同記事によれば、「今回明らかになったプーチン政権の国家戦略について、一部の専門家たちはロシアとベラルーシが以前から公言してきた内容を再確認したに過ぎないと見ている」とのこと。
政治アナリストたちは以前から、ロシアが政治的・文化的影響力を利用して最終的にベラルーシを吸収するのではないかと懸念していたが、それが近いうちに現実のものとなるとは誰も予想していなかった。
一方、エストニア対外情報局のRainer Saks元局長はYahoo Newsに対し、「全体としては、ロシアの対ベラルーシ政策として誰もが予想していたものと変わりません」とコメント。
写真:LinkedIn @rainer-saks
Saks元局長いわく:「もちろん、ロシアはベラルーシを支配するでしょう。しかし、そのためにベラルーシの独立まで奪う必要があるかというのは疑問です。私としては、2030年という遅すぎる期日は驚きです。ロシアがそんなに待たなくてはならない理由はないのですから」
ベラルーシの反体制派指導者で亡命中のスヴャトラーナ・ツィハノウスカヤは、今回の内部文書リークで明らかになった国家統合計画について、ベラルーシと同国市民に対する脅威だとして反対の立場を表明した。
ツィハノウスカヤいわく:「これは対等な国家統合ではありません。ロシアがベラルーシを吸収するという筋書きなのですから」
ツィハノウスカヤはさらに、「私たちの目標はベラルーシに民主主義を取り戻すことです。しかし、ロシアとの国家統合では達成することができません」と付け加えた。
ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領はリークされたロシアの内部情報についてコメントを避けている。しかし、2025年の大統領選に出馬を宣言するとともに独立国家としての存続に言及、ロシアへの編入に反対する姿勢を明らかにした。
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