ルーマニアで中世の写本を発見:ヨーロッパ史を塗り替える快挙?
2022年9月、ルーマニアの研究チームが同国中部の都市メディアシュの古い教会で、すっかり忘れ去られていた中世の写本を多数発見。東欧における中世から近世にかけての歴史を塗り替える可能性があるという。
写真:Facebook @Batthineum
ルーマニア中部の小さな街、メディアシュにある聖マルガレタ教会の塔で発見されたのは、9世紀に制作されたと見られる印刷物の断片を含む200冊以上の古書や写本などだ。
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写本を発見したチームの主任研究員、バベシュ・ボーヤイ大学のアディネル・ディンカ博士は大学のFacebookアカウントを通じて発見を公表。その詳細についても明かした。
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1470年から1600年にかけて書かれたと見られる古書139冊が良好な状態で発見されたほか、ページの間には写本の断片が多数挟まっていたという。写本の中には、制作時期がカロリング朝時代にあたる9世紀にさかのぼるものが含まれている可能性もあるという。
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ディンカ博士はウェブサイト「Medievalist.net」宛てのメールの中で、「これらの古書を初めて目にしたときに、聖書や教父学、神学といった歴史的な分類によって巻が整理されていることに気づきました」とコメント。
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同博士はまた、「一見してランダムな配列ではないため、蔵書の制作が始まった初期段階から計画的に配置されていったことが示唆されています。さらに、古い書架記号も(一部の例外を除いて)明確な規則に従って振られています」と述べている。
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そして、「これらの古書は教会の財産の一部であり、それ自体貴重なので(ある時点から)しまい込まれるようになってしまったのでしょう」と結論。
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この蔵書は、聖マルガレタ教会がかつて保有していたさらに大規模な文庫の一部である可能性もあるという。
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ディンカ博士は教会の記録に基づいて、1864年には聖マルガレタ教会に7700冊あまりの蔵書があったはずだと指摘。
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その文庫には数十あまりの初期印刷物が含まれており、なかにはマルティン・ルターやジャン・カルヴァンといった宗教改革指導者たちの著作が含まれていたとされ、研究チームは今回発見された写本の中に含まれている可能性に期待をかけている。
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チームは今後、発見された古書と1864年の蔵書目録を照合する作業に取り組むことになっている。
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ディンカ博士いわく:「今回発見された歴史的蔵書の特徴の1つは、16世紀に制作された原本の装丁が多数残されていることで、その大部分に日付まで記載されています」
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同博士はまた、「また、一連の教区の台帳からは、中世に書かれたと見られる写本の断片もいくつか発見されています」と述べている。
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発見された写本には、14世紀から15世紀にかけて記述されたと見られるカロリング小文字体や典礼資料の断片が含まれており、ディンカ博士の研究チームにとって興味深い研究対象となっている。
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ディンカ博士によれば、「羊皮紙が閉ざされた環境のなかで繰り返し利用されていたことを考慮すると、このような断片は宗教改革以前の写本が地元で再利用された結果である可能性が非常に高いでしょう」とのこと。
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メディアシュの聖マルガレタ教会(ドイツ語名マルガレーテン教会)はトランシルヴァニア・ザクセン人の共同体によって15世紀に建設されたものであり、オスマン帝国の襲撃から一帯を守る「要塞教会」として機能していた。
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