ロシアが70年前の旧式戦車を前線に投入か

ロシアが旧式戦車を投入か
戦車兵にとっては悪いニュース
ウクライナの前線に投入か
紛争情報チームが発見
移送される車両が撮影される
はっきりとした証拠が
撮影地点はアルセーニエフ
主要な戦車修理施設が存在
ウクライナに供与される予定の戦車への対抗策か
旧式戦車の利用はすでに行われている
古くても戦車は戦車
ないよりはまし
旧式戦車の問題点
旧式戦車の投入はどれほど有効か
涙の谷の戦い
なぜ旧式戦車を使うのか
作戦能力が低下している
ウクライナの反攻に備える
旧式戦車の利用には代償も
ロシアが旧式戦車を投入か

ジョージアに本拠を置くOSINT(open-sourve intelligence:公開情報の分析に基づく情報活動)グループによると、最近ロシアでは長期間倉庫に入れられていた非常に古い戦車を移動させはじめているという。ジャーナリストの中には、やがてこれらの骨董品レベルの戦車がウクライナの戦場に駆り出されるだろうと予測するものもいる。

戦車兵にとっては悪いニュース

『フォーブス』誌のデビッド・アックスはこう語っている:「ロシア政府は最近、70年物の旧式戦車「T-54」や「T-55」を動かしはじめています。これはロシアの戦車兵にとっては非常に不吉な兆候といえるでしょう」

ウクライナの前線に投入か

アックスによると、それらの旧式戦車は40年以上前のソ連時代に退役しているが、それが保管倉庫から持ち出されている。その目的はおそらく「再整備してウクライナ侵攻に用いる」ことだとみられるという。

紛争情報チームが発見

T-54やT-55が倉庫から持ち出されていることを最初に指摘したのはジョージアの紛争情報チーム(Conflict Intelligence Team:CIT)の公開情報分析担当者たちだった。極東ロシアを走る貨車にそれらの戦車が積まれていることを示す画像や動画の証拠を発見したのだ。

移送される車両が撮影される

CITが3月21日にウェブサイトに掲載したレポートにはこう書いてあった:「CITチームが入手した画像から、極東ロシアを走る貨車がロシアの軍事車両を輸送していることがわかった」

写真:Twitter @GirkinGirkin

はっきりとした証拠が

CITはさらにこう続けていた:「我々の調査の結果、その車両はソ連時代の戦車、T-54/55であることがわかった。初期型のT-54のほか、後期型のT-54やT-55も確認された」

写真:Twitter @GirkinGirkin

撮影地点はアルセーニエフ

戦車を積んだ貨車が撮影されたのはウラジオストク北方の都市、アルセーニエフでだった。この事実は、ロシアがこの旧式戦車でなにをしようとしているのか考えるうえで大きな手掛かりとなり得る。

主要な戦車修理施設が存在

アルセーニエフにはロシアの第1295中央戦車修理保管基地がある。つまり、CTIが報告したT-54やT-55がそこで改修を受け、ウクライナの戦場に投入される可能性があるということだ。

ウクライナに供与される予定の戦車への対抗策か

『ワシントン・ポスト』紙のフランチェスカ・エーベルはこう書いている:「研究者たちは、この戦車が戦場への投入を目的として移送されている証拠を見つけることはできなかった。だが、ウクライナがレオパルドの供与を間近に控えていることを考えると、その問題に対処するためである可能性はある」

旧式戦車の利用はすでに行われている

エーベルによると、ロシア軍が旧式の戦車を使っている例はすでにウクライナで確認されているという:「昨年、ロシアの精鋭部隊がウクライナでT-62を使っていることがわかった。T-62はソ連時代の戦車で、採用は1961年だ」

古くても戦車は戦車

とはいえ、いくら古い戦車といっても危険性が劣るわけではない。T-54やT-55といえども、ウクライナで大きな効果を発揮することは可能だ。

ないよりはまし

CTIのレポートでもこう書かれている:「たとえ時代遅れの戦車でも、なにもないよりはよほど効果的だ」ただし、これらの旧式戦車がロシアの戦車兵に無視できない苦労を強いることになるだろう、とも指摘されている。

旧式戦車の問題点

旧式戦車の問題点は距離を測定するレンジファインダーや弾道計算用のコンピューターなど、火器管制システムを搭載していないことだ。CITのレポートによれば、とくにT-54は「能力の劣る砲安定装置」に悩まされているのだという。

旧式戦車の投入はどれほど有効か

デビッド・アックスはT-54もT-55もウクライナ軍には有効な兵器とならないだろう、と述べている。アックスが論拠とするのは1973年の第四次中東戦争で、そのときすでにそれらの戦車はイギリス製の戦車に苦戦していた。そしてウクライナがいま供与を受けようとしている戦車は当時のイギリス製戦車よりも何十年も進んだものだ。

涙の谷の戦い

アックスはこう書いている:「イスラエルとシリアの国境があったゴラン高原では苛烈な戦闘が行われたが、イスラエル側の機甲戦力は二個師団のわずか177輌のイギリス製センチュリオン戦車しかなかった。だが、イスラエルはその戦力で1400輌以上のT-54、T-55、そして新型のT-62を撃退したのだ」

なぜ旧式戦車を使うのか

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、ロシアが旧式戦車をウクライナで使おうとしているのは、単純に戦争を継続しロシアの戦略的目標を達成するのに必要な機甲戦力が足りていないからだと考えている。

作戦能力が低下している

戦争研究所のアナリストは3月22日にこう書いている:「ロシアの機甲戦力の損失は大きく、ロシア軍が機械化戦力を用いた作戦を実行する能力が大きく削がれている」

ウクライナの反攻に備える

現役時代に生産されたT-54/55の数は数万両に及び、それらの在庫を使えば春に予想されているウクライナの反攻に備えることができると考えられている。

旧式戦車の利用には代償も

旧式戦車を利用すればロシア軍が現在直面している問題に対処することはできるかもしれないが、当然完璧な対策というわけではない。戦争研究所のアナリストは、旧式戦車は現代的な対戦車兵器に破壊されやすいためいっそう損害が大きくなり、ウクライナにおけるロシア軍の兵力の劣化がさらに進むだろうと考えているようだ。

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