ロシアの新型大陸間弾道ミサイル「RS-28 サルマート」の脅威とは
ロシアは2022年4月、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「RS-28サルマート」の飛行試験に成功、世界中を射程に収めたことを証明して見せた。
試験の成功を受けてプーチン大統領は「ロシア軍の兵器システムの信頼性を高める重要な出来事だ」とコメントした。
プーチン大統領はまた次のようにも述べた:「この兵器は他に類を見ないものであり、わが軍の戦闘能力を高め、外敵に対するロシアの安全保障を強固なものとするだろう。狂熱状態のまま攻撃的なレトリックを駆使して我が国を脅かそうとするものたちはその考えを改めざるを得ないであろう」
『ビジネス・インサイダー』によると、NATOではRS-28にサタン2というコードネームを使用。大量破壊に特化した恐ろしい兵器だとされている。
『ビジネス・インサイダー』のソフィー・アンケルは『ヴァイス』から情報を引用しながら次のように語った:「全長約35メートル、弾頭と合わせた重量は210トン強、推進ロケットは液体燃料式。10を超える数の核弾頭を搭載可能で、この大陸間弾道ミサイルは複数の都市をまるまる破壊することができる」
写真:Twitter @DrPippaM
「弾頭は複数個別誘導再突入体(MIRVマーヴ)と呼ばれる方式で、一発で複数の対象を攻撃することができる」とアンケルは語っている。
理論的には、RS-28一発で複数の目標を攻撃することができることになる。『ミリタリー・トゥデイ』がサルマートの攻撃方法を詳細に解説している。
写真:Twitter @M3t4_tr0n
『ミリタリー・トゥデイ』のウェブページには次のように書いてある:「RS-28には10発の0.75メガトン級再突入体を搭載可能だ」
『ミリタリー・トゥデイ』はこうも続けている:「また、より小規模な再突入体なら16発、アバンガルド極超音速滑空体なら24発まで搭載可能となっている。ロシアのミサイルとしては、こういった高度に制御可能な弾頭を搭載できるのは初めてのものとなる」
写真:Twitter @strategiecs
また、同じウェブサイトではRS-28は迎撃を妨害する能力も向上していると指摘している。
アメリカのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の分類ではRS-28サルマートは固定サイロ発射型のICBMで、その飛距離は10,000~18,000kmとされる。
CSISの分析ではRS-28は老朽化したR-36の代替として開発したとされる。R-36はソ連時代、1960年代に設計された固定サイロ発射型のICBMだ。
写真:Twitter @DnKornev
他の長距離ミサイルとRS-28との大きな違いは、その破壊力にある。複数の弾頭を搭載することも可能だが、単体で10トンの弾頭を載せることも可能なのだ。
写真:Twitter @DnKornev
弾頭重量10トンというのはどれほどの規模なのだろうか。第二次世界大戦の際に広島に投下された原子爆弾は重量4トンでその威力はおよそ15キロトンだったと言われている。RS-28の前身、R-36は約8トンの弾頭を搭載可能で、威力は20メガトンにも達するとされていた。メガトンとはキロトンの1000倍であり、20メガトンは広島型原爆の1300倍超の威力ということになる。
ロシア国家院議員のアレクセイ・ジュラフリョフは、RS-28数発でアメリカを壊滅させることができると述べている。
写真:Andrew Butko, https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Alexey_Zhuravlev_in_Donetsk.jpg, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons
『ニューヨーク・ポスト』紙が翻訳して伝えているところによると、ジュラフリョフは2022年5月にロシアのテレビに出演、次のように述べた:「はっきり言っておきますが、アメリカの東海岸全体を壊滅させるにはサルマートが二発あれば十分なのです」
「西海岸も同様です。4発撃てば、後には何も残りません」とジュラフリョフは続けた。『ミリタリー・トゥデイ』の見積もるRS-28の破壊力を見るかぎり、この主張もあながち嘘とも言えないようだ。
『ミリタリー・トゥデイ』は次のように書いている:「MIRVを搭載したRS-28一発でアメリカの州を3つ破壊することができます。たとえばメリーアイランド、ヴァーモント、ロードアイランドのような」この武器の標的となっている人々からすると恐ろしい話だ。