ロシアのショイグ国防相の後任、元第1副首相ベロウソフ氏とはどんな人物?
5月12日、ロシアのプーチン大統領は2012年から国防相を務めていたセルゲイ・ショイグ氏を退任させた。
5月12日、ロシアのプーチン大統領は国防相を務めていたセルゲイ・ショイグ氏を安全保障会議の書記に任命、後任にアンドレイ・ベロウソフ氏を充てた。
現在65歳のベロウソフ氏はこれまで第1副首相の地位にあった人物で、プーチン大統領を経済面からサポートしてきていた。だが、そのベロウソフ氏を防衛相に任命するという人事はどういう狙いなのだろうか。
ロイター通信によると、ベロウソフ氏はモスクワ大学経済学部を卒業、1981年には学位論文を発表した経済学の専門家だという。
『フィナンシャル・タイムズ』紙は同氏のことを「ソヴィエト時代の著名な経済学者の息子であり、1999年に政府の職に就くまでは大学で研究職にあった」と説明している。以後、同氏は政府の要職を歴任したということだ。
ベロウソフ氏は2000年にはロシア首相に外部顧問として迎えられて経済開発貿易省への関与を開始、6年後には同省次官となった。同氏はこのようにしてロシア経済をコントロールしてきたとロイター通信は伝えている。
『フィナンシャル・タイムズ』紙の取材に応えたあるロシア政府元高官は同氏のことをこう語っている:「ベロウソフ氏は頭の良い人物です。数学的素養もあります。ですが、考え方がとてもソ連的です。かなり奇妙な公正性のあり方を信じていて、誰かが大もうけしたらそのお金を取り上げる必要があると思っているのです」
同氏はさらに、2008年から2012年にかけてロシア連邦首相府財政経済部長も務め、2013年からは経済政策担当の大統領補佐官となった。
プーチン大統領の大統領補佐官となる以前、メドヴェージェフ政権時代にはエリヴィラ・ナビウリナ氏の後任として経済開発大臣に任命されてもいる。
前述のように、ベロウソフ氏は2013年から2020年まで経済政策担当補佐官としてプーチン大統領をサポートしていた。どうやらこの時期にプーチン大統領の信頼を得たということのようだ。
2020年にはベロウソフ氏は第1副首相へと昇進し、同時にロシア国営の鉄道グループの役員にも選出されたという。『キーウ・ポスト』紙が報じている。
国際的非政府組織「国際危機グループ」のアナリスト、オレグ・イグナトフ氏はベロウソフ国防相についてこう語っている:「ベロウソフ氏はプロフェッショナルな技術官僚です。非常に直截的で大胆な人物です」『ニューズウィーク』誌が伝えた。
イグナトフ氏はさらにこう続けている:「ベロウソフ氏は真実を包み隠さず明らかにすることを好みます。問題は解決できる人物ですから。プーチン大統領の立場から考えれば、非常に優れた人事と言えるでしょう」また、イグナトフ氏はさらに、ベロウソフ氏は国防相という立場から軍の腐敗問題に取り組むことになるかもしれないともほのめかした。
実際、ベロウソフ氏は軍の腐敗問題という観点から見ても最適な人物かもしれない。なぜなら、同氏はロシアにはびこる諸々の派閥とは無関係だからだ。「ベロウソフ氏は孤立していて、派閥からは独立しており、ただプーチン大統領にのみ従っています」
多くのメディアが指摘しているように、防衛相にベロウソフ氏を任命したことは、ロシアのウクライナ侵攻において経済が果たす役割が大きく変わったということを示しているのかもしれない。確かにベロウソフ氏は、巨大な戦争機械と化したロシアを管理するのに最適な人物だろう。
『フィナンシャル・タイムズ』紙によると、ロシアの軍事リポーター、ユーリ・コテノクは自身のテレグラムチャンネルでこう述べていたという:「ベロウソフ氏は今後、防衛省の財政部門の総点検を行うだろう。同氏はまさにそういった仕事に最適な人物だ。トップレベルの経済学者でありながら、国家主義者でもある」
ベロウソフ氏がロシア経済やウクライナ侵攻をどのようにコントロールしていくつもりなのかはいまだ不明だが、このような人物が防衛相に任命することで、ロシアが今後の侵攻を有利に運ぼうとしているのは確かだ。