ロシア海軍が黒海南部で奇妙な動き:ウクライナによるドローン攻撃を警戒か
ウクライナの反転攻勢は陸上では大きな成果につながらなかったが、黒海ではロシア相手に効果的な反撃が続いている。そのせいか、最近では3月はじめにある奇妙な出来事が海上で発生し、専門家も戸惑う事態となった。
ウクライナ海軍のドミトロ・プレテンチュク広報官によると、トルコのボスポラス海峡付近でロシア海軍の艦隊が奇妙な動きをしているのが見つかったという。ウクライナ側もその動きの原因をはっきりとは理解できなかったようだ。
広報官はこう語った:「最近ロシア軍が、ボスポラス海峡から自軍の艦船を護衛するために2隻の艦船を派遣しました。これは頻繁に発生している事態ではなく、月に一度ほどの頻度です」
画像:X @YorukIsik
広報官はさらにこう続けた:「ですが、ある時、その艦隊が方向転換して後戻りしました」『ニューズウィーク』誌がウクライナメディア「ユニアン」をもとに伝えている。ロシアの艦隊が後戻りした理由は定かではないが、いくつかの仮説は存在する。
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広報官が提示した仮説は、当該艦船の指揮官が自分たちが攻撃される恐れがあると知らされたというものだ。というのも、ロシアの船舶は通常トルコの領海内で取るルートとは違う海域を進んでいたからだという。
広報官は「当該艦船はトルコ国境に沿って移動することを余儀なくされていた」と語っている。さらに、その船は目的地への最短ルートを取ることはなく、トルコ領海から出られなかったとも指摘している。
プレテンチュク広報官は「その船はふだんなら活用していた最短ルートを取らず、身を隠していました」と語り、現在黒海を支配しているウクライナ側の無人ドローンを警戒していた可能性を示唆した。
「ビジネスインサイダー」のレベッカ・ロマン記者は、黒海におけるウクライナ側の成果を「全面侵攻開始以来の2年間でももっとも傑出した成果」だと述べ、その多くは新型の海上ドローンを活用したことによると指摘している。
全面侵攻開始直後の時期にはロシアが黒海全体を自由に航行できたが、ウクライナ側がドローンを積極的に活用する非対称戦術を採り始めてからは事情が変わったとされている。イギリス国防省が2月25日に指摘している。
その結果、ロシアは黒海での作戦立案におけるリスク評価を見直すことになり、活動領域を黒海東部へと後退させた。ロシア海軍への攻撃が続いたことでロシアは防衛的になり、より慎重な運用を余儀なくされたのだ。
イギリス国防省は次のように指摘している:「ウクライナによる斬新な海上戦に対応するためにロシアは防衛的な姿勢を取ったが、それが効果的に機能していないことが日毎に明らかになっている」
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同じレポートではこうも述べられている:「戦略的視点から見ると、ウクライナが採った戦略はロシアが海上交易ルートに介入することを妨げている。機動的な戦法を採ったことで、ウクライナは黒海西部を支配できている」
3月初頭のトルコ領内におけるロシア艦船の不可思議な動きも、ウクライナが黒海西部を支配しているという現状から理解できるかもしれない。ドローンによる攻撃を警戒していたと考えることも可能なのだ。
最近では、3月5日にロシアの哨戒艇「セルゲイ・コトフ」がウクライナの海上ドローンによって撃沈されている。ウクライナによる発表では、この攻撃でロシア側の海兵7人が死亡し、「セルゲイ・コトフ」は沈没したという。
プレテンチュク広報官がこの戦果を発表、「哨戒艇は一瞬で沈没しました」と述べたという。BBCが伝えている。さらに、ドローン攻撃が行われた際、哨戒艇にはヘリコプターも駐機していたとされている。
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ゼレンスキー大統領は3月5日、こうコメントしている:「ロシアのテロリストには黒海上で安穏とできる場所はないし、これからも存在しない」また、ウクライナ情報庁によると、「セルゲイ・コトフ」を沈めたのは5機の海上ドローン「Magura V5」だという。
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