黒海におけるプレゼンスを失うロシア艦隊:成果を上げつつあるウクライナ軍の戦略

黒海でプレゼンスを失うロシア艦隊
ロシア海軍がウクライナのドローンを警戒?
謎めいた出来事が起きていた
ロシア海軍の奇妙な動き
護衛船が滅多にない動きを見せる
途中で後戻り
攻撃の恐れを察知?
トルコ領内から出られない
最短ルートをとらず
黒海での戦果は大きい
ウクライナによる非対称戦術が功を奏する
リスク評価の見直しへ
ウクライナによる斬新な海上戦
ウクライナが黒海西部を支配
ロシア艦船の不可解な動きもそれが原因か
昨年3月にも哨戒艇を撃沈
「哨戒艇は一瞬で沈没」
黒海に逃げ場はない
黒海を掌握するウクライナ
クリミアから最後の哨戒艇が撤退
これまでのロシア海軍の被害は
黒海でプレゼンスを失うロシア艦隊

最近の軍事侵攻において、ロシア海軍は黒海で大きな損害を被ったとみられる。2024年3月には黒海のロシア艦船が奇妙な動きを見せて多くの専門家が頭を悩ませたが、それ以降、ロシアの艦隊は黒海から姿を消したままだ。

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ロシア海軍がウクライナのドローンを警戒?

2023年夏にウクライナが行った反転攻勢は陸上では大きな成果につながらなかったが、黒海ではロシア相手に戦果を挙げた。そして、その傾向は2024年になっても続いた。

謎めいた出来事が起きていた

しかも2024年3月に、ウクライナの戦果が当時報告されていた以上のものである可能性を示唆する、謎めいた出来事が起きていた。

ロシア海軍の奇妙な動き

ウクライナ海軍のドミトロ・プレテンチュク広報官によると、当時、トルコのボスポラス海峡付近でロシア海軍の艦隊が奇妙な動きをしているのが見つかったという。ウクライナ側もその動きの原因をはっきりとは理解できなかったようだ。

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護衛船が滅多にない動きを見せる

広報官はこう語った:「最近ロシア軍が、ボスポラス海峡から自軍の艦船を護衛するために2隻の艦船を派遣しました。これは頻繁に発生している事態ではなく、月に一度ほどの頻度です」

画像:X @YorukIsik

途中で後戻り

広報官はさらにこう続けた:「ですが、ある時、その艦隊が方向転換して後戻りしました」『ニューズウィーク』誌がウクライナメディア「ユニアン」をもとに伝えている。ロシアの艦隊が後戻りした理由は定かではないが、いくつかの仮説が存在した。

画像:X @YorukIsik

攻撃の恐れを察知?

広報官が提示した仮説は、当該艦船の指揮官が自分たちが攻撃される恐れがあると知らされたというものだった。というのも、ロシアの船舶は通常トルコの領海内で取るルートとは違う海域を進んでいたからだという。

トルコ領内から出られない

広報官は「当該艦船はトルコ国境に沿って移動することを余儀なくされていた」と語っている。さらに、その船は目的地への最短ルートを取ることはなく、トルコ領海から出られなかったとも指摘している。

最短ルートをとらず

プレテンチュク広報官は「その船はふだんなら活用していた最短ルートを取らず、身を隠していました」と語り、現在黒海を支配しているウクライナ側の無人ドローンを警戒していた可能性を示唆した。

黒海での戦果は大きい

「ビジネスインサイダー」のレベッカ・ロマン記者は、黒海におけるウクライナ側の成果を「全面侵攻開始以来の2年間でももっとも傑出した成果」だと述べ、その多くは新型の海上ドローンを活用したことによると指摘している。

ウクライナによる非対称戦術が功を奏する

全面侵攻開始直後の時期にはロシアが黒海全体を自由に航行できたが、ウクライナ側がドローンを積極的に活用する非対称戦術を採り始めてからは事情が変わったとされている。イギリス国防省が2024年2月25日に指摘している。

リスク評価の見直しへ

その結果、ロシアは黒海での作戦立案におけるリスク評価を見直すことになり、活動領域を黒海東部へと後退させた。ロシア海軍への攻撃が続いたことでロシアは防衛的になり、より慎重な運用を余儀なくされたのだ。

ウクライナによる斬新な海上戦

イギリス国防省は次のように指摘している:「ウクライナによる斬新な海上戦に対応するためにロシアは防衛的な姿勢を取ったが、それが効果的に機能していないことが日毎に明らかになっている」

画像:Wiki Commons / Автор: Ssu.gov.ua, CC BY 4.0

ウクライナが黒海西部を支配

同じレポートではこうも述べられている:「戦略的視点から見ると、ウクライナが採った戦略はロシアが海上交易ルートに介入することを妨げている。機動的な戦法を採ったことで、ウクライナは黒海西部を支配できている」

ロシア艦船の不可解な動きもそれが原因か

3月初頭のトルコ領内におけるロシア艦船の不可思議な動きも、ウクライナが黒海西部を支配しているという現状から理解できるかもしれない。ドローンによる攻撃を警戒していたと考えることも可能なのだ。

昨年3月にも哨戒艇を撃沈

実際、2024年3月5日にはロシアの哨戒艇「セルゲイ・コトフ」がウクライナの海上ドローンによって撃沈されている。ウクライナによる発表では、この攻撃でロシア側の海兵7人が死亡し、「セルゲイ・コトフ」は沈没したという。

画像:X @ZelenskyyUa
「哨戒艇は一瞬で沈没」

プレテンチュク広報官がこの戦果を発表、「哨戒艇は一瞬で沈没しました」と述べたという。BBCが伝えている。さらに、ドローン攻撃が行われた際、哨戒艇にはヘリコプターも駐機していたとされている。

画像:Wiki Commons / Main Directorate of Intelligence, CC BY 4.0

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黒海に逃げ場はない

ゼレンスキー大統領は3月5日、こうコメントしている:「ロシアのテロリストには黒海上で安穏とできる場所はないし、これからも存在しない」また、ウクライナ情報庁によると、「セルゲイ・コトフ」を沈めたのは5機の海上ドローン「Magura V5」だという。

画像:Wiki Commons / СпецТехноЕкспорт

黒海を掌握するウクライナ

そこからさらに時間が経った現在、ウクライナは黒海をさらにしっかりと確保しつつある。昨年7月にはロシアの艦船が黒海のクリミア拠点から撤退しつつあることが報じられた。

クリミアから最後の哨戒艇が撤退

ウクライナ海軍のディミトロ・プレテンチュク広報官は当時、フェイスブックに「たった今、ロシア連邦黒海艦隊の最後の哨戒艇がクリミアから撤退した。この日を忘れない」と投稿した。だが、当時はロシア側のこの動きが永続的なものかはわかっていなかった。

これまでのロシア海軍の被害は

2025年1月現在、ロシアは累計28隻の水上艦および潜水艦を失った。オランダに拠点をおくOSINT組織「Oryx」によると21隻が撃沈され、7隻が損傷したという。

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