ロシア財務相、エネルギー収入の低下に基づく財政問題を指摘

問題を認めるロシア財務相
「収入減少」をプーチン大統領に指摘
非エネルギー収入は上昇
わずか4か月で年間赤字想定額を超過
財務省による初期評価
収入が激減したロシア政府
石油・ガス価格の下落
大幅な財政赤字
増加を続ける支出
今年後半は危機的状況に?
年間総定額を超えた財政赤字
膨れ上がる予算
政府の努力もむなしく
「公共支出の急激な増加」
ロシア経済を支えるエネルギー収入
「ロシア産原油輸出価格の上限設定」
ロシア経済の成長を抑制
ロシア財務相の発言を否定するアナリストたち
懸念される今後の行方
問題を認めるロシア財務相

ロシアのアントン・シルアノフ財務相はロシアが財政問題に直面していることを認め、政府支出が過去最高を記録する一方で石油・ガス収入が減少していることを明らかにした。

「収入減少」をプーチン大統領に指摘

シルアノフ財務相はプーチン大統領との公開ビデオ会議の中で、ロシアの石油・ガス収入が半減したことによる「収入減少」について指摘を行ったと、『フィナンシャル・タイムズ』紙が伝えている。

非エネルギー収入は上昇

「ロシアの非エネルギー収入は計画どおり上昇を記録、年末にはわずかながらも黒字になる可能性があります。しかしエネルギー収入には問題が生じています」とシルアノフ財務相は語った。これはEUや米国による「ロシア産原油輸出価格に対する上限設定」によるものと考えられる。

わずか4か月で年間赤字想定額を超過

シルアノフ財務相の指摘は今年5月初旬にロシア財務省が発表した報告書の内容に基づくものだ。それによれば、ロシアの財政赤字は2023年4月末の時点で年間総定額を上回ったという。

財務省による初期評価

5月10日、ロシア財務省は今年1月から4月にかけての連邦予算の使途に関する初期評価を発表。それにより、ウラジーミル・プーチン政権が重大な問題に直面している可能性があることが明らかになった。

収入が激減したロシア政府

1月初旬から4月末までのロシア政府の収入は2022年の同時期に比べて22%減少と大きく下落、総額は7兆8,000億ルーブルにとどまった。『モスクワ・タイムズ』はこの額はおよそ450億ドル(約6兆3,800億円)にあたる。

石油・ガス価格の下落

ロシア政府の収入が減少した主な理由のひとつは石油・ガス収入の低下である。歳入の柱となっているエネルギー収入は前年比で52%減少し、この部門の収入額は2兆3,000億ルーブル、つまり300億ドルに過ぎなかった。

大幅な財政赤字

一方、非エネルギー収入は5%増加して5兆5,000億ルーブル(720億米ドル)を記録。しかしこうした収益増加も、ロシアが直面する近年最大の財政赤字を補填できるわけではない。

増加を続ける支出

さらに、ロシア財務省は報告書を通じ、今年1月から4月までの歳出は11兆2,000億ルーブルという驚異的な額に達したことを発表。つまり、ロシア政府は2023年最初の4か月でおよそ1,450億ドル(約20億5千万円)を使い果たしたことになる。

今年後半は危機的状況に?

ロイター通信は5月11日付の記事を通じ「軍事生産の増大と巨額の国家支出によって、ロシア産業界は活気に満ちている」としたものの、財政支出は大幅に拡大しており、今年後半のロシア経済は危機的状況におかれる可能性がある。

年間総定額を超えた財政赤字

『モスクワ・タイムズ』紙によれば、ロシア政府の歳出増加および歳入減少により、1月から4月にかけての連邦財政収支は3兆4,200億ルーブル(450億ドル)の赤字となった。これは2023年の赤字想定額2兆9,000億ルーブルをわずか4か月間で上回ったことを意味する。

膨れ上がる予算

増大する財政赤字がロシアにもたらす影響はまだ明らかにされていないが、一部のエコノミストは同国のインフレがさらに加速する恐れがあるとしている。

政府の努力もむなしく

情報サービス大手「ブルームバーグ」のロシア担当エコノミストであるアレクサンダー・イサコフは、「2023年4月中もロシアの財政収支は悪化を続けました。政府が支出を抑える努力をしているにも関わらず、最新データにはこうした努力の成果が示されてはいません」としている。

「公共支出の急激な増加」

アレクサンダー・イサコフは続けて、「公共支出の急激な増加により今後数ヶ月でインフレ率が上昇し、ロシア中央銀行は昨年実施した政策金利引下げを部分的に撤回する必要に迫られる可能性があるでしょう」とコメント。

ロシア経済を支えるエネルギー収入

『ニューズウィーク』紙によれば、ウクライナ侵攻後、欧米各国が実施した制裁を受けてロシアは経済崩壊に陥るという見方が一般的であったが、国内支出と石油・ガス収入に支えられて何とか持ちこたえているという。

「ロシア産原油輸出価格の上限設定」

2022年12月、主要7か国と欧州連合はロシアの戦争資金調達能力を抑制すべく、ロシア産原油の上限価格を1バレル60ドルに設定した。4月に米ニュースサイト「アクシオス」と対談を行ったエコノミストによれば、この戦略はおおむね功を奏したという。

ロシア経済の成長を抑制

「アクシオス」によれば、米コンサルティング会社ラピダン・エネルギー・グループ代表でジョージ・W・ブッシュ大統領のエネルギー顧問を務めたロバート・マクナリー氏は、「多くの人が、(欧米が課した経済制裁は)おそらくロシア政府の収入減少につながったと考えるだろう」とコメント。

ロシア財務相の発言を否定するアナリストたち

ロシアのアントン・シルアノフ財務相は、同国の財政赤字がロシアの国内総生産の2%を超えることはないとしばしば発言しているが、多くのアナリストがこうした見方を否定していると、ロイター通信が伝えている。

懸念される今後の行方

「ブルームバーグ」によれば、ルネッサンス・キャピタルのエコノミスト、ソフィア・ドネツ氏は「まだ答えの出ていない大きな問題は、今年12月までの支出の行方です。エネルギー収入と非エネルギー収入については予想範囲内といえます」としている。

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