ロシア軍からの脱走を希望する兵士が急増:一体なにが起こっているのか?

さまざまな問題に直面するプーチン政権
ロシア兵の脱走が急増
脱走の支援を求める連絡が急増
「Idite Lesom」とは?
一体なぜ、いま逃亡を図るのか?
ロシア軍による攻勢を強化
消え去った希望
「軍人はローテーションが存在しないことを認識しています」
2万人近いロシア兵が脱走
アメリカ陸軍中将のコメント
ロシア兵の脱走を支援
法律改正で脱走が困難に
パスポートの引き渡しを拒否しても……
地元住民の裏切り
捕縛されてしまうと……
2,000件あまりの刑事訴訟
禁固13年
それでも続くロシア兵の脱走
さまざまな問題に直面するプーチン政権

プーチン政権がウクライナ侵攻を開始してから2年3か月が過ぎ、ロシアはさまざまな問題に直面している。

ロシア兵の脱走が急増

とりわけ深刻なのは、ロシア軍で脱走兵の数が増え続けていることだ。

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脱走の支援を求める連絡が急増

『モスクワ・タイムズ』紙は昨年12月5日、脱走兵によるロシア軍の戦力低下について記事を掲載。それによると、脱走兵の手引きを行っている「Idite Lesom」グループでは、逃亡の支援を求めるロシア兵からの連絡が急増しているという。

「Idite Lesom」とは?

ジョージアに本拠を置く「Idite Lesom」は、所属部隊からの逃亡を希望するロシア兵を支援するプロジェクトだ。伝えられるところによると、この活動を頼って脱走を図るロシア兵の数は89%も増加したという。

 

 

一体なぜ、いま逃亡を図るのか?

2023年6月から8月にかけて「Idite Lesom」にもたらされたロシア軍関係者からの脱走支援要請は305件に留まっていた。ところが、9月から11月にかけての期間では577件に急増。一体なぜ、いま逃亡を図るロシア兵が増えているのだろうか?

ロシア軍による攻勢を強化

理由の1つとして考えられるのは、ロシア軍がアウディイウカをはじめとする地域で昨年10月に開始した攻勢の強化だ。以来、ロシア軍は自軍の損害を度外視した作戦を続け、死傷者数を増やし続けている。けれども、2022年9月に動員されたロシア兵たちにとって、このようなやり方はすでに限界だった可能性がある。

 

消え去った希望

人権団体「Grazhdanin. Armiya. Pravo(市民・軍隊・権利)」を率いるセルゲイ・クリヴェンコ氏は『モスクワ・タイムズ』紙に対し、「動員が始まってからすでに1年が経過しました。以前なら一定期間、従軍すれば帰還できると考える人もいたかもしれませんが、今やそんな幻想は消え去ってしまいました」と説明。

「軍人はローテーションが存在しないことを認識しています」

クリヴェンコ氏いわく:「兵士たちはもはやローテーションが機能していないことに気づいています…… たとえ重傷を負っても、入院後には前線に送り返されてしまうのです」

 

2万人近いロシア兵が脱走

しかし、ロシア軍における脱走兵は目新しい問題ではない。それどころか、アメリカ陸軍特殊作戦司令部の報告によれば、すでに1万7,000人のロシア兵が所属部隊から逃亡したというから衝撃的だ。

 

アメリカ陸軍中将のコメント

ニュースサイト「ビジネスインサイダー」によれば、米陸軍のジョナサン・ブラガ中将は10月に行われた米陸軍協会年次総会の場で「ロシア兵に脱走を呼び掛けることは、戦術的にも戦略的にも大きな役割を果たしてきました」と説明したという。

写真:Wiki Commons By U.S. Army

ロシア兵の脱走を支援

ブラガ中将いわく:「我々はウクライナで現地のパートナーを支援してきました。ロシア兵1万7,000の脱走をサポートしましたが、それだけの命が戦場で失われるのを防いだということです」これは同時に、ロシア軍の戦力を削いだということでもある。

 

法律改正で脱走が困難に

とはいえ、脱走は簡単なことではない。『ウクラインスカ・プラウダ』紙の報道によれば、ロシア当局は7月に法律を改正。これによって、当局は徴兵された国民のパスポートを取り上げることができるようになったのだ。

パスポートの引き渡しを拒否しても……

また、パスポートの引き渡しを拒否した場合、パスポートそのものが失効するようになっており、合法的にロシアを出国することができなくなるのだ。しかし、戦線離脱を望むロシア兵を待ち受ける困難はこれだけではない。

 

 

地元住民の裏切り

ある脱走兵は『モスクワ・タイムズ』紙に対し、「前方には地雷原、背後には憲兵が待ち受けています。地元住民に紛れて身を隠そうとする者もいましたが、たいてい、一緒にお酒を酌み交わした地元住民の手で憲兵に突き出されるのがオチなのです」と語っている。

 

 

捕縛されてしまうと……

前出のセルゲイ・クリヴェンコ氏も『モスクワ・タイムズ』紙に対し、戦線離脱を図る兵士は捕縛される可能性が高く、リスクを冒す者は多くないと説明。また、脱走を試みて捕まった場合、厳しい処罰が科されることになっており、刑事裁判にかけられるケースもあるという。

 

 

2,000件あまりの刑事訴訟

ロシアの独立系メディア「メドゥーザ」は昨年7月、脱走兵に対する刑事訴訟は2023年上半期だけで2,076件にも上ったと報道。一部の被告には禁固10年以上の判決が下されているようだ。

禁固13年

例えば、『モスクワ・タイムズ』紙が取り上げたマキシム・コチェトコフのケースでは2023年7月に起訴、9月には早くも有罪判決が下されたが、その内容は警備の厳しい刑務所での禁固13年というものだった。

写真:Wiki Commons By Avtoloer - Own work, CC BY-SA 4.0

それでも続くロシア兵の脱走

しかし、ロシア当局による厳罰をもってしても、戦場からの逃亡を図るロシア兵の試みを完全に阻止することはできていない。国際的な支援団体やウクライナ、その同盟国などがロシア兵の脱走をサポートし、彼らの命を救うケースも少なくないのだ。

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